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「クレイズ、大丈夫か?」
「……うん。はやく行った方がいいもんね?」
「ああ。早い方がいいけれど……クレイズがつらいなら休んでも大丈夫だからな」
「……うん。でも僕頑張る」
馬車から降りた時、僕は少し疲れていたけれどはやくいかなきゃって思ってそう言った。
それにしても兄様は体力もあるなぁ……。でも疲れた様子を見せていないだけで本当はずっと疲れているのだろうか。何だか心配になる。兄様は僕たちに心配をかけないようにって無茶をしてしまいそうだから。
「ねぇ、兄様……兄様も無理しないでね。僕は兄様が倒れたりしたら絶対にやだから」
「ああ。当然だ。身体は資本だからな。俺は倒れないようにするよ」
「うん……そうして。兄様」
兄様と一緒に僕たちは街を歩く。『聖女』様の元へ向かうためには、無茶をしなければならない。
「兄様、この街、小さな子多いね」
「ああ。そうだな。落ち着いたらこういう同年代とも遊びたいよな。この街って果物が有名なんだよなぁ。果汁のジュースぐらいは飲むか?」
「うん」
兄様と一緒に果汁ジュースを飲む。
冷たくておいしい。こういう果実って、僕はあんまり気にもせず今まで食べてたけど、農家さんが一生懸命作っているんだっていうのがこの街で分かった。だって街の傍に沢山の農地があって、そこで汗水を流しているのが見えたから。
「おいしいね」
「ああ。美味しいな」
「兄様、次はどういくの?」
「あっちだな。上手くいけば二日後にはつくはずだ!」
兄様と並んでジュースを飲んだ。
ジュースを飲んだ後、兄様とタレスとミズと一緒につぎの馬車に乗った。その乗り合い馬車には、他に乗っている人がいなかった。知らない人がいないことに僕はほっとしながら、兄様にもたれかかって眠った。タレスとミズも疲れたみたいで寝てた。
起きた時には、小さな村についた。
小さい村は、よそから来た人には冷たいものらしく、僕らのことも冷たい目で見られた。僕らは周りから見てみれば不思議な集団に見えるらしい。そもそも父親に追われているというのを考えると厄介ごとを抱えていると言えるのだ。
だから僕らは周りと深く付き合いをせずに即急に『聖女』様の元へ向かった方がいいって兄様は言っていた。
僕たちに深くかかわったからって誰かが罰せられたりするかもしれないんだって。僕たちの父親って、怖い人なんだなって思った。
小さな村なので、建物も少なくて、宿もない。僕たちは乗り継ぎをして、次の街に向かった。
「クレイズ、次の街で宿をとろうな。ふかふかのベッドでゆっくり休んで疲れをとろう」
「うん」
兄様と一緒にたどり着いた街は大きな街だった。『聖女』様の元へ近づいているからか、『聖女』様の噂が聞こえてきた。
「異世界からやってきた『聖女』様はとてもやさしい方ですわ」
「この前、姿を見れたの。綺麗な黒髪だったわ」
『聖女』様が受け入れられ、好かれていることがその会話からも分かる。兄様は『聖女』様には会ったことがなくても、『聖女』様は優しいとそう知っていたのだろうか。
兄様たちと一緒に宿に入る。
宿は結構高級そうなところだった。兄様が奮発したみたい。いつか、こうして僕たちが抜け出す日を夢見て、兄様はこうして準備をしていたことがうかがえる。
兄様は疲れを出さないようにはしていたけれど、疲れていたみたい。
ベッドに横になる兄様。僕はそんな兄様の頭を撫でた。
「兄様、お疲れ様。ありがとう」
兄様が一生懸命考えて、僕たちの将来のことを考えて動いてくれている。だからこそ僕はこうして屋敷の外に出れた。
初めての屋敷の外で、兄様も疲れているだろう。僕も何だか目新しいものが沢山で、目移りばかりしてしまった。こんなに歩いたのも初めてで……なんというか、冒険をしている気分。
僕は兄様の隣に寝転がって、一緒に眠った。