仮面の騎士
初投稿です。ヤンデレものが趣味なので作品など教えて頂ける方がいましたら幸いです。
2021/04/11追記 大幅改稿しました。大筋では同じですが色々と違う点があります。
唐突だが自分語りをさせてほしい。
大学の友人と飲み会に言った俺は飲みすぎてしまい、足がおぼつかなくなってしまった。それでもなんとか家に戻り、そのままベッドに突っ伏してしまった。
そして、次に目が覚めたとき、辺り一面には草原が広がっていた。二日酔いで痛む頭で必死になって現状を把握しようとする。最後の記憶は家で寝たところまで。それからはずっと寝ていたはずだし、フラフラの状態でこんな場所まで来れるはずがない。
色々と考えた結果、俺は急性アルコール中毒か寝ゲロあたりで亡くなり死後の世界にきたか、あるいは最近よくある異世界転移というやつかもしれないとの結論に至った。
自分が死んだとは思いたくない俺は異世界転移であることを裏付けようと、テンプレ通り「ステータスオープン!」と叫んでみた。すると目の前に俺のステータス画面が表示された。自分が生きていた喜びと、本当に異世界転移が実在したのかという感動を覚えながら能力を確認した。
異世界の言語を解する力が備わっていたり、少しばかり騎士の才能がある程度だ。その後も隈なく確認していくと、一つ気になる項目を見つけた。そこには、「固有スキル【ニコポ】」と書かれていたんだ。
ニコポとは笑顔を見せることでそれを見た相手を魅了してしまうというスキルだ。相手に意中の人がいようと、俺のことが嫌いだろうとお構いなく惚れさせてしまう。
ーーこのスキルは危険過ぎるーーニコポの力を知った俺は恐怖した。相手がかわいそうだし、ちゃんと自分のことを知ったうえで好きになってもらいたい。だから俺は決意したんだ。「仮面をかぶり素顔を見せずに生きよう。そして俺を愛してくれる人が現れたとき、そのときに初めて仮面を取り笑顔を向けよう」と。
こうして俺は仮面の騎士として生きていくと誓ったんだ。
なのに、
「ほらリュート君お口開けて。あーん♡」
なのに、、
「リュート君のお世話はぜーんぶミィナがするからね。ご飯も、お風呂も、おトイレも、それから、、、夜のことも、、、。リュート君はここにいてくれるだけでいいの。それがミィナの一番の幸せだから」
なのに、、、
「どこ行くのリュート君。え?少しだけ外の空気を吸いたい?だめだよリュート君、外は危ないんだよ。リュート君はすっごくかっこいいから知らない女の子に攫われちゃうよ、。リュート君のお願いは出来る限り聞いてあげたいけど、、、。ごめんね、それだけは出来ないよ」
なのになんで、、、
「リュート君初めてお店にきたとき覚えてる?お金持たずに【黒騎士の仮面】下さいって言ってたよね。アルバイトでもなんでもするからぁ~って。勢いに負けて、いいですよ、て言ったら、すっごい笑顔でありがとうって言ってくれたよね。なんかね、その顔見たら気づいちゃったの。これって運命なんだって。リュート君を愛するために生まれてきたんだって思っちゃったの」
なんでこんなことに、、、、、、、、、
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あの日仮面の騎士として生きていくことを決意したものの、肝心の仮面がないことに気づき近くの街で探すことにした。そこでミィナが看板娘をしている防具店で仮面が売られているのを見つけた。仮面の相場なんて分からなかったが、ワゴンセールの形で売られているのを見て、これならいけるだろうと【黒騎士の仮面】を手に取る。そして俺はカウンターにいたミィナに、バイトするから譲ってほしい、と頼んだのだ。殿下の宝刀ジャパニーズ土下座を披露し、見事了承を得た。そして思わず笑顔を見せてしまったのである。
急に頬を赤く染め、情熱的な目を向けてくるミィナ。名前は?仕事がないの?家も?だったら住み込みで働く?そうしましょう、と勝手に住み込みで働くことが決まり、トイレ・浴室・キッチン完備の部屋を与えられた。仕事内容を尋ねると、今は研修中だから必要になったらその都度呼ぶと言われ、結局仕事を与えられたことはなかった。
ひと月たった今では当初の建前を忘れ、冒頭のようにミィナに養われている有様だ。このままではまずい。俺はヒモになるつもりはないのに。
ちなみに外に出ようと部屋の扉を開けると、なぜ気づくのか分からないがミィナがすっ飛んでくる。
「何か用事でもあるの?ミィナが済ませておくからリュート君は部屋にいてね」と言われ押し戻されてしまう。
ミィナが仕事中は部屋で一人になる。そうなるといやでも考え事をしてしまう。
故意ではないにしろ、ミィナを魅了してしまったのは事実。過剰ではあるが自分のために尽くしてくれるミィナに何かしてあげられないものかと悩んでいるが、なかなか実行に移せない。何かしようとすると先ほど言ったように部屋に押し戻されるし、直接聞いてみてもそばにいてくれるだけでいいとしか答えてくれない。
とはいえ一人ですることもなく、結局俺はベッドでゴロゴロしながらいつものようにぼぉっとしていた。
「そういえば、何にもなく、ただ毎日毎日のんびりするのって久しぶりだなぁ」
大学では研究三昧でろくに休んだ記憶がない。自分で結果を出して、仲間と議論し、遅くまで続くか、速く終われば帰りに飲み会。そんな日々だった。
「父さんと母さん元気かな」
もう会えないと思うと悲しくなった。小さい頃はよくマッサージしてあげたっけ。俺のマッサージは世界一だってよく言ってくれてたよなぁ。
、、、
マッサージ、、、。これだっっ!!!!
仕事をしつつ、日々献身的に世話をしてくれるミィナにマッサージをして疲れを取ってもらおう。そうと決まれば夜が待ち遠しい。久々にやることができて気分が高揚していた。
夜、そろそろ仕事を終えたミィナが部屋へやってくる時間だ。この家は一階部分が防具店、二階部分を住居として使用しているため、音がよく聞こえる。ほら、今日も店の戸締りをする音が届いてきた。それから階段を上る音がして、まっすぐに部屋の方へ向かい足音が扉の前でぴたりと止まる。
コンコンっと扉がノックされる。はーい、というと扉が開かれミィナが入ってくる。
「ただいまリュート君。今からご飯作るからね。その前にちょっとだけリュート成分を補給させて」
ミィナはベッドで寝転がる俺の元まで来ると、俺にまたがり胸元に顔を埋めて抱きついてくる。そのまま大きく息を吸い込み、悶絶する。仕事終わりはいつもこれだ。くぐもってあまり分からないが、「脳が溶けちゃう」とか「こんなのやめれないよぉ」などよくわからない言葉が聞こえてくることがある。時折ぴくぴくと痙攣することもある。無理やり引きはがそうとしても、テコでも動かない。身長140㎝くらいの華奢な体なのにどれほどの力があるのか。謎は深まるばかりだ。とにかくミィナが満足するまでじっとしているしかない。
10分くらいしてやっとミィナから解放される。
「はい、リュート君お疲れ様。今から晩御飯作ってくるね」といい真っ赤な顔をしながら妙につやつやしたミィナはキッチンへ向かう。少し補足しておくと、部屋を出ようとした時と同様に俺がキッチンに近づいてもミィナは飛んでくる。「何か食べたいものでもあるの?ミィナが作るからそこで待っててね」と、キッチンから遠ざけられる。
それからしばらく料理をするミィナの後姿を眺めながら待つ。相変わらずミィナは可愛い。派手さはないけど素朴な街のお嬢さんって感じがする。ぽぉーっとしていると、こちらが見ていることに気づいたミィナが腰をフリフリしたり、おしりを突き出したりしてくる。何をしているんだこの娘は、、、。手を切ったりしたら危ないからちゃんとしなさい。
さらに時間が経ち料理が完成する。せめて配膳だけでも手伝おうとするがそれも制止される。「ありがとリュート君、でも大丈夫だよ」といわれテーブルに座らせられる。いかんっ、この娘筋金入りのダメ男製造機だ。そして俺は筋金入りのダメ男だ、、、。あれ、目から汗が、、、。
なんとかせねばっ!
食後は絶対にマッサージしてやる。それもとびっきりのスペシャルコースをお見舞いしよう。
配膳が完了する。テーブルには二人分の食事、それからスプーンとフォークが一つずつ用意されている。そう、一つずつである。食事はミィナの手によって俺の口へ運ばれ、同じものを使ってミィナも食事をとる。
「おいしい?」
「うん、おいしいよ。いつもありがとう」
「ふふ、良かった。私もね、リュート君の使ったスプーンとかフォークとか、すっごくおいしい」
なんかちょっと違和感があるが、まぁいい。最初と比べると俺も随分と落ち着いたものだ。
ここに来た日にあーんされたときはとても驚いた。慌てて抗議すると、
「そっか、こんなのじゃ私の愛情は届かないよね。よしっ、じゃあ口移しにしよっか。膝の上座るよ。こうやって向かい合わせで座って、私の口の中で食べやすくしてから渡すね」
と言われたので再び抗議してもとに戻してもらった。しかしその時に、
「分かった、今は研修中だからそれでいいよ。でもそれが終わって夫正社員になったら口移しにしようね」と言われてしまった。正社員という言葉に不審な感じがしたが、しばらくはこれで安全だと判断し了承した。問題が起きればその都度言えばいい。
さて食事も済み、本日のメインテーマであるマッサージに移ろうと思う。多分普通に言うと、「リュート君を疲れさせるようなことはしたくない。むしろ私がマッサージしてあげる」と言われかねない。従ってここは漫画とかでたまに見たことのある「夜のお誘いと思いきやただのマッサージだった」作戦で行こう。
洗い物を終えてソファでくつろいでいるミィナの後ろに忍び寄り、首に手をまわす。
「ミィナ、今日もお疲れ様」
耳元で囁くとミィナはぷるっと震える。ミィナは耳が敏感みたいだ。
「鳥肌立っちゃってるね。かわいい」
そう言って、ミィナの耳や腕を触る。
ミィナが振り向き、顔を真っ赤にしながら何かを期待するような目を向けてくる。
「お風呂入ろっか。上がったらベッドにいこう」
お風呂を上がった後のことを待ちわびているのか、ミィナは普段と違い物凄い速さでせっせと体を洗う。あ、もちろんお風呂も俺が自分の身体を洗おうとすろと止められ、ミィナの手によってタオルを使わずに全身隈なく丁寧に磨きあげられる。ちなみにここではぁはぁと息の荒いミィナに襲われることが多い。今日は普段なんか比にならないくらい高ぶってらっしゃったが、なんとか抑えて入浴を済ませる。途中から我慢できずに、「まだ駄目?じらさないで」、「はやくして、お願いッ」などと目が完全にイって、よだれを垂らしながら催促されたが、「まだ我慢だよ。俺のミィナならできるよね?」と言い黙らせた。
「ミィナは先にベッドに行っておいで。俺は少し準備するから」
もはや思考力を失っているのか、言葉も出さずにコクコクとうなずくと一目散にベッドへ向かった。
あ、裸のままベット行っちゃったじゃん。しょうがないな、バスローブ持ってってやるか。普段とはえらい違いだな、俺が世話してるみたいだ。
さて、準備するか。といってもそんな大したことではない。オイルとタオル、オイルは最悪無くてもいいが。
探してみるもののやはりオイルはない。多分この世界では、そういった代物は王族とか貴族くらいしか持ってないのだろう。外出てないから知らないけど。
よし、行くか。
俺とミィナのバスローブを取り、自分の分は羽織る。それからタオルを持って仰向けに寝ているミィナのいるベッドへ向かう。
「ミィナ、バスローブ横置いとくよ」
「そ、そんなの後でいいから。はやくぅ♡」
ぐっ、そんなふやけた顔されるとこっちまでその気になっちまう。いや、ダメだ、今日は絶対マッサージだ。どうしてものときはその後すればいい。
ミィナが部屋に入ってきたときとは逆に今度は俺がミィナにそっと覆いかぶさる。
「今日は借りてきた猫みたいにおとなしいね。そんな可愛い猫ちゃんにいたずらしちゃおう。ちょっとうつ伏せになろっか」
マッサージするためにはうつ伏せになってもらわねば。猫ちゃんにいたずらしたいからうつ伏せになってなんて、めちゃくちゃな論理だけど今のミィナには勘づかれるまい。
「ね、猫?後ろからするの?それって本当に猫みたいじゃん、、、。で、でもいいよ。リュート君のしたいことして♡」
ミィナはうつ伏せになって、ちっちゃなおしりを少し突き出す。
「じゃあいくよ」
まずは足裏からいこう。ミィナの上から離れて足元へ移り、足裏に触れる。ミィナの足裏はなんだかプニプニしていた。日々仕事で動き回っているのにどうしてこんなに柔らかいんだ?
「お願いはやくきて♡もう我慢できな、、って足?あっ、あっ、ちょっとっ、こしょばいよぉ」
何も言わずに足裏をマッサージする。こそばゆいならもう少し力を入れてもよさそうだな。
「んっ、あっ、んん。こ、これはこ、れで気持ちい、いけど、おっ」
うんうん、気持ちよいのならこのまま続行だ。なんかちょっと楽しくなってきたし。
足裏からふくらはぎへと移る。揉みほぐしたり、タオルの上から掌の下のあたりでさすったりする。タオルがないと手に力を入れてさするときに摩擦で痛くなってしまう。
「んんんっ!ちょ、ちょっとまっ、だ焦らすのリュートく、んっ、?そろそ、ろっ、あっ、ほんっ、きでっ、おかしくっ、なっちゃう!」
次は太もも。う~んすべすべだ。今度膝枕してもらおう。
「太ももっ、さすさすしないでぇ。はぁ、あっ。もうっ、ダメだってっ!」
普段主導権は全部ミィナが持っているから、こんなミィナが見れるのは楽しい。、、、。ちょっといたずらしちゃおうかな。骨盤の下のあたり、仙骨(?)とかいう骨の側面辺りを人差し指で押すと体全体がビクンとなるんだ。高校生くらいのときに知って、よく友達なんかにやって怒られてたっけ。
俺は太ももから手を離し、人差し指だけを立てる。よしっ、準備万端だ。くらえっ、ミィナ!
「んああああああっっっ!!!!?????」
大きな叫び声を上げ全身が、びっっくぅぅっ、と大きく痙攣した後ミィナはぱたりと動かなくなってしまった。あれ?やりすぎちゃった?
「おーいミィナ、生きてるか~?」
あらら、返事がない。本当にやりすぎちゃったみたいだ。確かにさっきまでずっと焦らしてきたからなぁ。めちゃくちゃ高まって来てただろうし。
ひとまずミィナを仰向けにして呼吸を確認する。、、、オッケーだ。
「それにしてもすっごい状態だ、、、」
完璧なアへ顔をさらしている。まさか現実に存在するとは、、。体も時折ぴくぴくと痙攣しているし。とりあえずそっとしておこう。
、、、。
あれ?これって今外に出れるのでは?
それに気づいた瞬間、心臓がバクンバクン鳴り始める。もう一か月以上外に出せてもらえてない。少しくらい許してもらえるよな。
静かに、そして素早く洋服に着替え、ベッドのそばにある引き出しから【黒騎士の仮面】を取り出す。思えば初めて着けるんじゃないかこれ?よし、これで大丈夫なはずだ。
そぉっと部屋の扉を開け出ていく。閉めるときも慎重に。それから廊下を進み一階へ降りて、店の裏口まで移動する。
ごくりっ。久々過ぎて緊張する。裏口のドアノブに手をかけてひねる。ガチャ、と音が鳴り若干外の空気が入ってくる。後ろを振り向き誰もいないことを確認すると俺はそのまま外に出た。
「おお、久しぶりのシャバの空気はうまいぜ」
このままミィナに養われ続けるのはダメだし、何かできそうなバイト先でも探すか。外はかなり暗くなっているが、居酒屋らしき店はまだまだ明るく、中からはどんちゃん騒ぎする音が聞こえる。やっぱり居酒屋とかの飲食店かな。日本でもよくやってたし、この世界の情報とかを聞くのにもちょうどいいだろう。そうと決まればリサーチだ。できればむさいおっさんが少ないほうが嬉しいな。
道を進み店を物色していく。すると前方に煌びやかな装飾の施された高級レストラン然とした店を発見した。
「めちゃくちゃ敷居が高そうだが」
前まで来てみるととんでもない迫力だ。多分ここは貴族用のレストランなのだろう。中を覗いてみても誰もかれもが上等な衣服を着て、高そうなものを食べている。
ーーーここは俺のような庶民が気安く働ける場所ではないなーーー
ほかの店を回ろう、と思ったとき、店からきれいなドレスに身を包んだ美少女とそのお付きの人たちが出てきた。
「ここのお店はとてもおいしかったわね。また来たいわ」
「分かりましたお嬢様」
その美少女は身長が170㎝くらいのモデルのような体系をしていた。腰のあたりまで伸びた金髪はとても綺麗でさらさらと揺れている。
「うわすっげぇ綺麗じゃん」
あまりの美しさに呟いてしまう。すると突然メイドさんらしき女性がこちらを向いた。
「そこのあなた!何を見ているのですっ!怪しい仮面などつけて。しかも、お嬢様をじろじろと見るなんて不敬ですよっ!!ルーブル公爵のご令嬢アンネリーゼ様と知ってのことですかっ!!?」
「も、申し訳ございません!!どうかご容赦を!!」
実際のところはどうか分からないが、この世界の貴族がものすごく厳しかったら何をされるか分からない。あんまり出過ぎた真似をすると斬られるなんてこともあるかもしれない。だから俺は慌てて謝罪した。
「なりませんっ!ここであなたを許してしまえば他の平民もつけあがるでしょう」
「お願いします。どうかこの通り!!!」
俺は本場仕込みの土下座を披露する。
「シャル。そのあたりにしておきなさい。今日は気分が良いの。下らないことで嫌な気持ちになりたくないわ」
するとアンネリーゼが助けに入ってくれた。ちなみに俺はずっと土下座したままだ。
「で、ですがっ」
とシャルが食い下がる。
それからアンネリーゼが土下座したままの俺の方へ寄ってくる足音が聞こえた。こつこつとハイヒールを履いているのでよくわかる。
「顔を上げなさい。ああ、仮面も取って下さる?」
言われた通り仮面を取り顔を上げる。笑顔さえ見せなければ大丈夫だ。こんな状況で笑うやつがどこにいる。だが、本当に殺されそうになったら無理やりにでも笑顔を見せよう。それからダッシュで逃げる。
今後の計画を練っていると、俺の顔をみて何か考えていたアンネリーゼが口を開く。
「あなたの顔も凛々しくて素敵よ。ほら、これでおあいこ」
「先ほどのを聞かれてらっしゃったのですか?」
「ええ、もちろん」
ふふ、と微笑むアンネリーゼ。優しい人だ。多分これで今回のことはなかったことにしてくれるのだろう。
安堵感から思わず微笑み返してしまう。
、、、、、、、、、、、。
あれ、俺今笑っちゃった?いや、仮面付けてるから大丈夫だ。
、、、、、、、、、、、。
そういやさっき仮面外してたわ。
恐る恐るアンネリーゼの表情を伺う。そこには真っ赤になった顔と情欲に目が潤んだ恋する乙女の顔があった。
「凛々しいお方、お名前はなんとおっしゃいますか?」
アンネリーゼが鼻が触れ合うほど顔を近づけて尋ねてくる。
「アンネリーゼ様、顔が近すぎます。もう少し距離を」
「シャル、黙りなさい。私は今このお方と話しているの」
「しかし、「黙りなさい」、、、、はい、承知致しました」
この間ずっと俺の目を見たままである。シャルには目を向けようともしない。
「リュート、と申します。正確にはリュート・アララギが本名です」
「あら、名字がおありなのですね。もしやどこか異国の貴族様でしょうか?」
さらに顔を近づける。あ、鼻がくっついた。さすがにこの距離感はおかしくないですかね?
「いえ、異国の出身ですが生まれも育ちも平民でございます。故郷では貴賤に問わず名字が許されておりましたので」
「そうでしたか。平民でしたか。なるほど」
何かを考えこむ様子のアンネリーゼ。俺にとっては良からぬことを考えているんだろうなぁ。
「あ、あのっ。もうよろしいでしょうか?私も帰る家がございますので」
はやくこの場から逃げ出したい。
「あら、家が近くに?誰かと一緒に住まわれているのでしょうか?」
「ええ、一応住み込みで働かせて頂いている身でして。そこの方と一緒に生活させてもらっています」
働いているってのは建前だけど。今のところ実労働時間0時間だし。
「へぇ、住み込みで、、、。」
またもや何かを考えこむアンネリーゼ。
「でしたら、私の御屋敷で働きませんか?もちろん住み込みで。お給料の方も今の仕事先より多く出すことは保証いたします。リュートさんさえ良ければ今すぐにでも屋敷にお連れできますが」
「え、ええと大変うれしいお誘いなのですが。さすがに今の仕事先に何も言わずというのはちょっと、、、」
「その仕事先の方というのは平民なのですか?」
「ええ、おそらくそのように思います。本人に聞いたことはないですが」
さすがにミィナが貴族だったら、防具店の看板娘なんてやるわけがないし。
「そう、ではアンネリーゼとしてではなく貴族からとしてのお願いですわ。私のもとで働いていただけませんか」
「ちなみに拒否権は?」
「あることにはありますわ。この国では平民にもある程度の自由が保障されています。ですが、断ったあとに突如行方不明になったり、犯罪でつかまったりと良くないことがたびたび起こります」
それもう事実上の強制じゃんか。ミィナ、めちゃくちゃ怒るだろうな。というか、ミィナの状況を考えると後先考えずに俺を奪還しようとするかもしれない。そうなるとまずい、相手は公爵令嬢だし下手すれば処刑されてしまう。
「な、なるほど。ではその話お受けしたいと思います」
「まぁ嬉しい。私もリュートさんに手荒な真似はしたくなかったので」
「そのかわり一つお願いがございます」
「ええ、リュートさんが手に入るなら何でもしますわ」
何でも。相変わらず【ニコポ】で魅了されてしまうと愛が重い。くそぅ、こんなこと望んでなかったのに。
「たとえ何があっても、今の仕事先の、防具店のミィナという女性にだけは手を出さないとお約束下さい」
「その方がお好きなのですが?」
いえ、そういうわけでは、、、。と言おうとして自分を恥じた。あれほどまでにしてくれたミィナにあまりにも失礼だ。それにいつの間にかミィナのことを好きになっていたのも事実。正直に答えよう。こういうのはウソをついても後々ばれる。
「ええ、そうです。ミィナのことを愛しております」
言った瞬間、アンネリーゼの目がすっと冷たくなるのを感じた。
「ええ、分かりました。手は出しません。その代わり、リュートさんには、そのミィナさんという女性に一切合わせませんわ。それが条件です」
ごめんなミィナ。外に出た俺が間違いだった。許してくれ。
こうして俺はアンネリーゼ達に連れられ、屋敷に向かった。
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あれから数週間が過ぎた。俺はアンネリーゼの専属の世話係を本人から言いつけられた。仕事内容は、常にアンネリーゼの私室に待機し、帰ってきたアンネリーゼを癒すこと。これだけだ。アンネリーゼはどんな隙間時間さえも私室で過ごす。お気に入りは俺の膝の上に向かい合うように座って抱きしめあうこと。何も言わなければ時間無制限にやってくる。俺の胸に顔をうずめたり、首筋に吸い付いたり、キスを求めてくる。拒否すると「ミィナさんがどうなってもいいのかしら?」と脅してくる。これを言われると俺としてはどうしようもない。アンネリーゼならやりかねない。この令嬢は俺以外にはひどく冷酷なのだ。
食事も俺が来てからは私室で取るようになった。しかも必ず口移しを求めてくる。俺が噛んで、アンネリーゼの口へ移す。アンネリーゼの分の食事がなくなるまで永遠と繰り返される。
おっと、考え事をしていたらそろそろアンネリーゼがやってくる時間だ。
そう思った瞬間、部屋の扉が開かれる。アンネリーゼの部屋なのでノックなどはない。
「リュート、今戻ったわ。着替えるから服を」
アンネリーゼは俺のことをリュートと呼び捨てるようになった。俺は服を用意しアンネリーゼのそばへ行く。
「何立ってるの?早く着替えを手伝ってよ。ほら、はやく服を脱がせて?」
貴族なので身の回りのことは全て使用人が行う。着替え、食事、入浴など本当にすべてだ。ミィナのときとは完全に逆だな、なんて思いながらアンネリーゼの服を脱がせていく。下着だけになったところでアンネリーゼが言う。
「ふふ。こんな姿リュートだけにしか見せたことないわ。あ、メイドはノーカンよ。男性ではって意味ね」
「ええ、ありがとうございます」
「、、、前にも言ったわよ。二人きりのときは敬語をやめなさい。何度も愛し合った仲じゃない」
「はいはい、分かったよ。アン」
アンネリーゼをアンと呼ぶとものすごく喜ぶ。謝罪の意味も込めてそう呼ぶと、みるみる顔がふやけていく。
「りゅーとぉ、気が変わったわ。服脱いでベッドいきましょ」
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一方そのころ、ミィナは数週間前までリュートがいた部屋で呆然としていた。
「どこ、、、リュート君。どこ行っちゃったの?ミィナが悪いんだよね。自分が気持ちよくなりたいからって、リュート君をこき使って」
部屋には町中から集めたリュートの痕跡に関する資料、メモが散乱している。ミィナはあの晩、仮面をつけた男が貴族令嬢と道端で話し込んでいたという証言を得ていた。
「何とかリュート君を見つけ出して、、、。その後はとにかく謝ろう。リュート君をこき使ってごめんなさいって。それから、、リュート君がそばに居続けてくれるよう今まで以上にお世話して、頑張って、、、。うう、リュート君。必ず救い出してみせるからね」
ミィナの推論は、「リュートのかっこよさに惹かれた貴族令嬢がリュートを拉致した」である。それを裏付けるだけの証拠はないが、ミィナの直感がそうだと言っている。
近くに屋敷のある貴族は公爵のみ。そしてリュートを攫うのは未だ婚約相手の決まっていない令嬢か?ミィナは平民であまり学はないが、リュートに関することのみ頭が回る。
「ということは、アンネリーゼ嬢、、、?」
そして一つの答えにたどり着く。
「待っててねリュート君。いま助けに行くよ」
そういってミィナは部屋を出ていった。
この後、ミィナとアンネリーゼの間で修羅場があったのは言うまでもない。
もしかしたら改稿して続きを書くかもしれないし、そのままかもしれません。