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第四話 もう一つの顔 ーFamily Circumstancesー

【堺浜駅前 スーパー店内出口付近】



 今晩の「すき焼き」にする食材を買いにスーパーにより、購入した食材をレジ袋に積み、出口へ向かう途中。



「あれれれー、誰かと思えば石倉さんじゃないですかー。」



 中学時代にいじめられていた小野瀬(おのせ)にまた会ってしまった。




「・・・・。」


「ちょっおい!こっち来いよ。なー。」



 そのまま帰ろうとしたが、また小野瀬(おのせ)の強い力と腕力に負け無理矢理肩組まれ、「近くの公園で色々話そうぜ」と強引に連れていかれた。



「な、何か用なの・・早く帰らなきゃいけないんだけど・・・。」


「大丈夫、大丈夫。すぐ終わるから。」



 小野瀬の言う言葉は全て信じちゃいけない。


 何故なら小野瀬は小学校からずっと「嘘」と「喧嘩」だけの不良で、今まで小野瀬の言う言葉は全て嘘しかない。 




【近くの公園 ブランコ内】 



 スーパーの近くの住宅内にある公園に連れてかれた僕は、何とかして逃げれるチャンスと道はないか探していた。

 しかし、すでに公園内では小野瀬のツレ不良仲間達が数人いて、明らかにまだ僕と同じ未成年のはずなのに、「煙草(たばこ)」を普通に吸っていたり酒の飲酒などしている人もいた。

 

さすが地元一の不良校「内川田工業高校(ウチコウ)」だ。

 

 当然の様に、小野瀬もその集団に寄り煙草を吸い出し蒸しながら僕を呼び出した。



「なー、石倉。話なんだがよー。昨日の女ぁ、彼女?」



「か、彼女って・・・?」



「とぼけんなよ。昨日の女ぁ、お前ぇと一緒にいた100万円ばら撒いた眼鏡の女だよ。」



!(宮阪さんのことだ・・・)



「か、彼女じゃないよ、先輩で昨日会ったばかりで僕もあまり知らないんだ・・・。」

 


(一体、宮阪さんに何の用なんだ・・)



「ほぉー、そうなんだ。いや昨日さぁ思わぬ大金が入ったからすげぇ感謝してるんだよ俺達。おかげで欲しかったビックスも買えたし、最高だよ。」



「そ・・そうなんだ・・良かったね・・」



「そこで相談なんだけどよー。もう一回その女呼び出して、俺達に紹介してくんない?」



え?



「またお金ばら撒いてくれるのをお願いしたいんだよ、いいだろ?はは。それにあの女、結構可愛かったよな、みんなー?」笑




ダメだ・・・。紹介も、会わせちゃいけない・・




「話は以上や、明日の夕方ぁ、此処に呼び出せ。ほら帰れや。」






【アパート住宅団地 自宅付近】


 まずいことになった。よりによってあの小野瀬が彼女を狙っているなんて、やばいよ危険すぎる。

 きっと宮阪さんのお金を強奪と暴力する気だ。絶対に無事じゃ済まない・・。

 こんな時にユウヤがいたら、すぐ小野瀬達をやっつけてくれるのに。



 ダメだ、今ユウヤは全日の大事なサッカーのシーズンだ。ユウヤの夢のフィールドを邪魔したくない。



 それに、いつまでもユウヤにばっか頼ってではいけない、僕がしっかして宮阪さんを守らなきゃいけない。


 

 でも、運動神経に「0」と喧嘩もした事のない僕に彼女を守れるのか?



 小野瀬は小学校から上級生と喧嘩したり、中学時代も不良の中で番を張っていた奴だ。



とても、勝てる要素は無い・・・。








「あ。兄貴。今帰り?」



 アパート住宅団地の階段で中学生数人が屯していた中、弟の「(たける)」がいた。




(たける)・・どうしたのその髪の色?」


「似合う?兄貴もしてみたら。」笑




弟の(たける)は、髪の毛が全て「銀髪」に変わっていた。



(たける)、何処行くの?今からご飯作るけど。」


「いや、いい。ダチの家で済ましたし。」


「そっか、わかった。早よ家に帰れよ・・」



僕はわかった。


 最後、階段から上がる時に弟の左手が赤く血が染みた包帯が巻いた拳と弟が着ているNIKE(ナイキ)の「白いパーカー」が、誰かの返り血が付いた様な赤黒いシミ模様と足下に落ちている無数の煙草(たばこ)の吸い殻。



また誰かと激しい喧嘩して煙草を吸いながら帰って来た事がわかった。




 僕と弟の(たける)は2つ歳が離れている。


 僕達家族3人がこの団地に引っ越す前は、父の実家に住んでいた。父が行方不明になり、莫大な借金を背負う事になった僕達は、父の両親からも見捨てられ家を出る事になり、現在の団地へ引っ越して来た。 

 当時、僕と(たける)は5歳と3歳。当然そんな大変な事もわからないし、行方不明になった父の顔も写真しか知らない。

 たまに、母が神棚に置いてある父の写真を見て泣いている姿も観る。僕達兄弟は父との思い出があまりなく、どこか遊園地や遠くへ遊びに行った事もなく、いつのまにか突然消えて、いなくなってしまったから涙もひとつも出ない。

 そんなある日、小学校2年生の時。ユウヤと部屋で父から貰った「スーパーファミコン」でゲームをしていた時、遊んでいた「スーパーファミコン」を(たける)に壊された事があった。

 考えてみたら5歳、6歳の子がゲーム機本体を壊すのはなかなか難しい。飲んでいた麦茶が溢されてそのまま水没したもある、もしくは本体が高い机の上に置いてあり、たまたまぶつかって床に砕ける事も壊された原因も考えられるだろう。


 だが、「(たける)に壊された」は(たける)本人の主張で、

「このゲーム。壊す。」の一言で、

(たける)がゲーム機を両手で持ちアパート5階の部屋から落とされた。

 突然の事で止める事も出来なかった僕とユウヤは、逆になんでこうなったのか、わからなかった。

 その事件から、(たける)の大人しかった性格は小学校に入学してから荒くなり、1年生とは言えど上級生と喧嘩したり3年生になると万引きも遊びの一つに警察からの電話はしょっちゅうあった。

 同じ血が繋がっている兄弟だが、ここまで性格が違い過ぎる僕と弟。

 ユウヤも(たける)の性格にかなり心配しているし、昔から一緒に遊んでいた時も気を遣いながら優しく声掛けたりして場を明るくしてくれていた。


【アパート自宅 5階】



「あ、母さん帰ってたんだ。」


「朝太。おかえり。・・・今日は遅かったわね。」



部屋の時計を見ると時刻は夜の21時になっていた。



「うん、課題があってさ。」



本当は、早く帰れた。


 

 今日はあの意味不明な部活動と小野瀬のくだらない話に付き合わせられて遅くなってしまった。



「そう。勉強大変ね、」


「大丈夫!勉強するため進学したんだから、早く母さんを楽させたいよ!」


「朝太、ごめんねいつも。あなたばかり使って。大事な時期なのに、」


「大丈夫だって!お金はまだまだだけど返済し続けてるし、大学も名門じゃなくても何処か入って弁護士になるから平気だよ。」



 母さんにはこれ以上、苦労と心配はかけたくない。高校から僕は学校と家事も両立しながら勉強して、余裕ができたら休日にもコンビニでバイトして稼ぎ、残った2800万の借金をコツコツ返済して早く良い給料を貰える公務員になって全て終わらしたい。 



「別にいいのよ、焦らなくても、ゆっくりでいいんだから返すのは。」


「ダメだよ!早くこんな苦しい生活を抜け出して終わらせなきゃ、母さんが倒れちゃうよ!」


「いいのよ。母さんは。お父さんのお金を少しずつ返してあの人の役に立ってると思えば、それに朝太や健の笑顔でいつも元気貰っているし、母さんは幸せよ毎日。」



 幸せなもんか、いつも朝早く僕の弁当を作ってそれから工場の仕事に行き今に帰って、1時間後にはスナックで朝の3時まで働いているくせに、何が幸せだよ、顔なんか今のこの時間しかみれないし、(たける)だって一度も笑ってないじゃんか・・・



「本当に大丈夫よ、朝太。借金なんて深く考えなくても、母さんが全部返すから、朝太は今の学校生活と勉強を楽しんで頑張ってちょうだい。それだけで母さんは本当に嬉しいから!あ!すき焼きするの?今日は母さんが作るかな!」



母さんは本当は苦し過ぎるのに、その表情を顔一つ出さない。



こういう時の元気な母さんは、何か隠している時だけだ。きっと何かがあったに違いない。



お風呂から上がった後、すでに母はスナックの夜の仕事に行き、茶の間には僕が作るはずだった「すき焼き」が用意してあった。



「いただきます。・・・」



 本来、「すき焼き」とは家族団欒(かぞくだんらん)で食べる幸福な鍋料理だ。僕が初めて「すき焼き」を食した思い出は、昔住んでいた、父の自宅で僕と健と母さんお爺ちゃんお婆ちゃん、そして嬉しそうに食べている父の笑顔の記憶。父の顔は写真とその時の笑顔だけ覚えていて、笑顔は素敵だった。

 僕も「すき焼き」は大好きな方で、特に家族や皆で食べる鍋料理は美味しくて大好き過ぎる。

 本当は今日は母さんと(たける)と僕で3人楽しく食べるつもりだったんだけど、いつの間にか団欒はバラバラになってしまい、今日の「すき焼き」は美味しいけど一人で食べる「すき焼き」は好きじゃない。



「ん?なんだろこの封筒。」



通知書?




 その封筒は届け日が今日の今朝になっており、送り先は書いてなかった。




「金融関係かな?でも返済額は一昨日来たし、来月まで来ないけど、・・・・。」




「追加返済金?・・・え。?」




なんだよ、これ・・・残り返済金額が100万も増えてる!?




「どうして・・・まだ未払い金があったのか?」  




まさか!?









【翌日】


 今朝6時半。母さんに昨日の「追加返済金額」について聞こうとしたが、母さんは仕事へさっさと行ってしまった。



「あれ、(たける)。帰ってないな。友達の家で泊まりかな?」



 朝の朝食も僕が作っていて、今日はご飯と味噌汁と玉子とハムのスクランブルエッグにサラダと牛乳にした。



 学校に行く支度もし、洗顔途中、僕のスマホからメッセージアプリでユウヤから


「わり!寝坊した笑笑」

「先行ってて!すぐ行く!笑」



と通知があり、いや「笑笑」がある意味わざとだろ。




 7時半に自宅を出て5階のアパートから下の1階まで降りて、団地の出口まで歩いてた。




 その時、団地から離れた遠くにある交差点から大きな爆音と派手にうるさい音楽を流しながら飛ばしてくるオートバイが走って来た。




ヴォン!ヴォォォン!!

ドッ!ドッ!ドッ!





その爆音でうるさい音楽流したオートバイは団地の出口に止まり、どうやら乗っている人は3人が乗っていた。




「団地の人かな?あんな子いたかな。?」





 その子は、赤いヘルメットを後ろ向きに被り。背は僕より低く小柄で腰パンをし、左手には包帯をし赤黒くシミが付いた白い・・・



「え?・・・(たける)?」



「あ。兄貴か、今から出勤、じゃなくて学校?」



「何やってんだよ、朝だぞ・・何処行って、」




ヴォン!ヴォン!!



「おお!石倉、お前えの弟は(おとこ)だぜ。」



え!?なんで、小野瀬(おのせ)がここに!?え?



(たける)君!また遊ぼー!」



小野瀬の後ろに乗っている小ギャル系の女子が(たける)に言っていた。



「うん、またね。」



ヴォン!ヴォォォォォン・・・




そのまま小野瀬と小ギャルはまた爆音と共にオートバイで走っていった。



 (たける)もあくびをしながら、自宅へ移動しポケットから煙草(たばこ)を取り出しライターで火を付けようとしていた。




「健!!お前何時に帰って来てんだよ!!それになんで小野瀬なんかと!?」



(たける)は煙草を加えながら振り向き、火を付ける前に、




「うるせえなー、朝帰ろうが、誰とツルもうが俺の勝手だろ。学校遅れんなよ。」シュボ!



と言い、煙草に火を付け自宅へ帰って行った。



(たける)・・・。」




「コラァー!!(たける)ー!また煙草(たばこ)吸っとんかぁ!!」




 突然、ユウヤがアパート団地から自転車で登場し、ユウヤに気づいた(たける)は煙草を捨て、隣の団地へ逃げて行った。


(たける)はユウヤが苦手。







堺浜(さかいはま)駅】


 団地から離れた上田駅までユウヤの自転車で2人乗りして行き、快速鉄道に乗り30分後に堺浜駅に到着した。

 堺浜駅から堺浜高校まで徒歩20分あり、駅から学校まで歩いて通学をしている。



「それにしても(たける)の奴、変わったよなアサタ!」


「そうだよね・・・。」



「髪の色も銀髪にしやがって、中坊のくせに。」


「そうだよね・・・。」



「て!元気ねえな兄貴の方は!笑」


「君は、元気ありすぎる問題だよ。」



 昨日の夜の事も今朝の件もあり、とても良い気分ではなかった。まさか(たける)があの小野瀬と仲が良かったのは驚いたな。それに一緒にいた小ギャル系の子も・・・あーもー、頭が変なりそうだよ。



「あ!そういえば、昨日の体験入部どうやったんよ?」


「体験?」


「ん?パソコンクラブ行ったんだろ?」


「あ、あー!あーあーぁ。う、うんまあまあ良かったよ。」



そうだ僕は昨日、もう一つもっと驚いた人達と会ったんだった。確かぁ異世界・・きゅう・



(異世界救世部です。本日もお待ちしております。)



「え??今なんか聞こえた?ユウヤ!?」


「はい?なんの事?お前やっぱおかしいぞ、」笑





【堺浜高校 第一体育館】


 今日は1年生2年生3年生全校生徒が集まり、週に一度の「全校集会」。

 当然、朝のLTの時間にする集会で今月に行うイベントや各部の部長からの報告や生徒会長のお話し校長先生からの長いお話もある。


「おーい、お前らぁ列を乱すなよぉ〜、ふぁ〜眠い。」


本日も宗茂(むねしげ)先生は一人一番やる気がなく、あくびをしながら職員の方へ行った。



 校長先生の長いお話が終わり、続いて各部活動の部長が来週から始まる春季大会への意欲を報告し、中でもユウヤが入部しているサッカー部も今年も連覇に向けて気合いの挨拶をしていた。

 最後に全校生徒のトップの生徒会長が挨拶をし、多数報告と来週の球技大会の行事について説明していた。

 生徒会長の座は憧れていて、中学時代は副生徒会長をしていたから、学級をまとめる仕事は大好きだ。

 派手な運動もしないし、重たい荷物も持つ事もなくただパソコンを作業したり楽な業務だ。

 いつか僕も3年になる頃には生徒会長になって、この学校の教訓を「部活動は別に絶対に入らなくていい」を作り、安心に勉強して過ごせる学校にしたいな。



「では、続いて生徒理事長(せいとりじちょう)からのお話です。」



え?生徒理事長?


なんだ「生徒理事長」とは?「生徒会長」が一番トップじゃないのか?トップのさらに上ってこと!?




周りの同じ同級生の1年生全員が初めて聞く役にザワザワと騒いでいた、しかし先輩の2年生3年生は一つも驚きの表情を見せずにいた。



「1年生の皆さん!お静かに!」


生徒会長のアナウンスで騒ぎは落ち着いた。




体育館ステージの奥のカーテンから一人の女子生徒が現れ、周りはあれが理事長か理事長かと確認していた。



あれ?・・・あの人って、




「皆さん、おはようございます。1年生の皆様は初めての方はほとんどですが、改めてご挨拶を致します。

私が堺浜高校の生徒執行部会の「生徒理事長」。

宮阪莉央(みやさかりお)と申します。これから1年間宜しくお願い致します。」




【堺浜高校 西門(せいもん)校舎3階】



 朝の全校集会から3時間が経ち、お昼の休み時間で今日は教室でお弁当を食べていた。

 ユウヤは、今日は来週から始まる大会に向けてサッカー部員全員は2限目から帰宅して、明日の日曜日に大会開催地の大阪に向かう予定で早めに帰っていた。



「ユウヤ、忙しいなー。さすが頼りにされてるんだな。なかなか一緒に帰宅も出来ないし、早く僕も部活動決めなきゃな。」



 でも、本当は学校終わってコンビニでバイトして残りの借金を返さなきゃいけないんだけどな。でも堺浜高校はバイトは禁止されてるしバレたら停学だもんなぁ。




「おい今朝の生徒理事長の人、可愛かったなー!」


「だよなー!俺タイプかも!」


「でも先輩なんだろ?とても2個上に見えないよな、」


 

 いつのまにか、クラスでは今朝の生徒理事長の宮阪さんで話題で一杯だった。

 まさか、生徒執行部もやっていたとは思わなかったな。てか生徒執行部も部活動に入らないのかな?今度宗茂先生に聞いてみなきゃ。





「ザーコースーケーーーーーーー!!」


ドォーーーーン!?



 

 突然、教室の前のドアが誰かに蹴破られ、何者かが入ってきた。(うわぁ、弁償されそ・・あの人。)




あれ?あの人って、昨日・・・



「見つけたぞ雑魚助。お前ぇが入らなければ俺は・・最強になれねんだーーー!!」



 服装は制服だけど、髪型は黒髪でツンツンに竹刀を持って凶悪そうな顔の剣道部の人だ。



「おい、アイツ、スポーツ科のA組 片村 (かおる)じゃないか?」


「あ、あぁ。間違いねぇ。隣町の泉町の全剣道部や道場を破って、めちゃくちゃ暴れん坊侍だ・・」



やっぱ噂も度が越えててヤバすぎる・・



竹刀を持った暴れん坊侍が僕の席に向けて走り出し、力の限り竹刀を振りに来た。



ブォン!ブォン!



「ひっ!?」



「待てやコラァーーー!!」



とにかく、殺されるのは確定と判断して、僕は教室から出て全速力で校内を逃げた。



「なんだよ突然!?はぁ、はぁ、走るの、はぁ、遅いから、捕まってしまう。」



「だから!お前が入らなければ俺も異世界へ行けねんだよ!入れやー!」



「だから、はぁ、はぁ、僕は入らないって、はぁ、それに異世界はデタラメだよ!」



「まだ言ってんのかコラー!あの世界は現実だー!」



「なんでそんなに僕に拘るんだよ、他に運動神経な奴がいるだろー!僕は運動出来ないんだよー!」



「嘘つけー!現にめちゃくちゃ早く走ってるだろうがー!それにあの宮ナントカって女が、お前じゃなきゃダメだと言ってんだーーー!」



「そんな、無茶な。、はぁ、はぁ、」   



はぁ、はぁ、あれ?僕って、こんなに長く早く走れたっけ?どうなってんだ、いつもならもうバテバテでフラフラになるのに。あー、考えるな、とりあえず今は逃げなきゃ。







【堺浜高校 北門校舎側のプール付近】



 突然出てきた暴れん坊侍から逃げ、なんとか撒き。誰もいないプール付近にまで来た。



「はぁ、はぁ。ここまで来ればもう大丈夫だろ、」


 

 それにしても運動神経が「0」の僕に、ここまで全開に早く走れた事に驚いた。あんなに校舎内を走り回ったのに、まだ体力はあるくらい平気だ。



「知らぬ間に、成長してるのかな?もしかしたら今度のマラソン大会良い線いくかな?」





チャポン・・・。


 



水の音?まさか、またアイツか??





後ろのプール内から聞こえた水の音に反応し、先の暴れん坊侍かと柵を覗けば、そこにいた音の主は、





「あ、宮阪さんだ。」





宮阪莉央さんがプール内で一人、素足だけプールに浸かり寂しそうな表情で1番の飛び台に座っていた。




(何してんだろう。もう5現目の授業は始まっているのに。てか僕もだけど。)




「そうだ。宮阪さんにどうしても聞きたいことがあったんだ。」



 


プール内に入り、宮阪さんの方へ向かった。




「み、宮阪さん!」


「!!・・・石倉くん?」




僕の呼びかけに気づき、すぐに振り向いた宮阪さんの顔の表情は、


あのゴーグルの様な眼鏡は外してあり





泣いていた。




【第五話へ続く】




 

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