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プロローグ

 遥か古代、世界は魔術による高度な技術と知識を有し、繁栄を極めていた。


 そんな中、技術の粋が結集される魔道具は、最早個人が扱うには過ぎたる力を有するまでになっていた。意志を持つ事さえある魔道具は、時に莫大な金額で取引され、国家間の争いの切っ掛けとなる事さえあった。


 そこで、世界最高学府であり、一国の国王と同等以上の権力を持っていた魔法学院"学院長"は、自分達魔術師が生み出す魔道具が、世界の安寧を妨げている事を憂いていた。


 そこである日、一つの計画を立ち上げる事にした。


 その裏には、魔道具を扱う事の出来ない存在への迫害と軽視の問題。そして、生まれたばかりの幼子の存在があったが……何にせよ、学院長はその権力を以て世界に語り掛けた。


 "危険な魔道具を集め保管しておく仕組みをつくり、半永久的に機能させる"


 一見、魔術師たちの功績を永遠に残すかのような取り組みだったが、これは、危険な魔道具を完全に管理する目的を主としていた。


 これに賛同した魔術師や、賛同した訳では無いものの、プロジェクトの規模と意義から、より貢献すれば名声が高なると考えた魔術師は多かった。


 そして、それら魔術師たちの多くは、その巨大プロジェクトに参画し、こぞって持てる技術を差し出した。それが自らの名声を高める最善の行動だと確信して……。


 一部の魔術師は、見向きもせずただ自分の研究に集中していたが、それも最終的には形を変えてプロジェクトへと加わっていた。


 完成したのは、空中に浮き魔道具を管理する"魔道具管理島"――通称"空島"だった。


 あらゆる魔道具は、この島の中では無力だった。この時点で、過去最大級の偉業である事は確実だったが……それだけでは終わらなかった。


 ――とっておきの目玉は、まだあった。


 特別な魔石を四肢に備え、その核に魔術を刻み込んだ"魔核"を持つ特別な魔道具。学習する人工生命体――"ミナス・ファール=フェルメス"その管理者だった。


 魔道具の管理を、常に最適な方法で行うようプログラムされた管理者は、目が覚めた時魔法学院中央区その"世界の中心"とも言うべき場所いた。


 目が覚めた管理者は、早速情報を集め始めた。


 当初その行動に興味をもっていた魔術師たちもいたが……管理者の行動が、魔道具を管理する為に必要な最適解。これを算出する為の行動だと知って、次第に興味を失って行った。


 情報を集め始めて数か月が経過したある日。管理者は、集めた情報に基づいて最初に行うべき"最適解"を出した。それは――自身の製作に携わった魔術師の"殲滅"。


 これが、まず初めに手を付けた"仕事"だった。

 始まってから終わるまでは、ほんの一瞬だった。


 管理者は、集められた魔道具。その全ての性能を引き出し、抵抗する間も与えることなく殲滅していった。全ては、管理者の計算した通りの結果だった。


 そうして、管理に際して最も危険な因子は取り除かれた。


 ただ、流石に無傷と言う訳にも行かなかった。


 管理者は、自身の核に亀裂が生じたのを確認した。その亀裂は、修復不可能な傷を孕んでいたが……この影響により遠くの未来、自己破壊を招くと知った。


 自己破壊により、自身が暴走する可能性を考慮した結果、通常の攻撃では付くはずのない傷を付けた魔術師を"処理人"として、自分が暴走した際に処理させる事に決めた。


 傷を付けたのは、破壊の魔力を持つ魔術師だった。


 それは、"能なし"と蔑まれ、ただ魔道具の処理をするだけの底辺の魔術師だった。時間が掛かると思ったが、思いの外すぐに見つかった。


 その魔力の種類に於いて、最も強く純粋な魔力――それ(・・)を持つ存在を見つけた管理者は、既に廃墟と化した学院の一室で"仮死"状態にある赤子を連れて来た。


 赤子は魔道具の中で仮死状態にあったが、それも都合の良い話だった。仮死状態を保つ魔道具を管理島の中心部に移植すると、その解除時期を2140年後の自分が壊れる10年前に設定した。


 それに満足した管理者は、遥か天空から地上を監視する任務に戻った。



 ◇◆◇◆



 地上に強い力を持つ魔道具が生み出される度、それを蒐集して来る事を続けていたが……ある日、ついにその時が来た。


「おぎゃあ~おぎゃあ~!」


 役目を始めて二千と百余年、初めて響く赤子の声だった。


 その声に、異常事態か、大切な"安全装置"に何か不足が生じたか、と慌てた。しかし、地上に降りて情報収集した処、どうやらそれが赤子にとっては"普通"で正常なのだと知った。


 それから数年、困った事が起こる度に赤子の相手をしていた管理者"ミナス"は、いつしか想定外のエネルギーロスを重ね始めていた。


 そのロスはほんの僅かで且つ、以前であれば直ぐに気付いた程度の事だった。


 しかし、その全てを僅かとなった時間を、"我が子"への時間として使っていたのもあって、積み重ねたロスが十数分のズレを生んでいた。


 その事に気が付いたのは、最後の瞬間だったが……どうにか管理者権限の委譲を終えると、薄暗い中、四肢が活動を止めて行くのを感じていた。


 最後に考えたのは、自分の生まれて来た使命に関する事ではなく、遥かに長い時間のほんの僅か、その全てを(そら)んじられるほどの、思い出の"記憶"と"記録"だった。


 赤子の気配を遠くに感じたのを最後に、役目を終えた管理者は永い眠りについた。


魔法の下行使される魔術、それを扱うのが魔術師。


――

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