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歩け異次元廻れ異世界  作者: ペプシマン
1/1

第一セクション 山賊

始めまして!ペプシマンと申します。

読む前に一つだけお約束があります、僕は小説を書くのが初めてな為文法や言葉選びが拙いです。お見苦しい点が多々あるとは思いますが、どうか何卒最後まで読んで下さい。お願いします。

それでは本編をお楽しみ下さい!どうぞ!

①はじまり

「この世の終わりはあの世の始まり、あの世終わりはこの世の始まり。表裏一体と成りて世界は完成する。」

そんな声が聞こえてきた気がする、それも寝ている間に。悪い夢でも見たのだろうか?はたまた現実か?まどろみの内に何気なく窓を開けてみると、そこは...異世界だった。最初は幻覚でも見ているのだろうと鼻で笑っていたが、意識がはっきりしていくにつれ幻覚では無い事が分かってきた。空を飛ぶ大竜、異形のゴブリンや耳の長いエルフなどが行き交う町。

「あー、これ完全に異世界転生しちゃってるわ。まるで将棋だなしないといけないヤツだ。」

目眩がやけにきつく、水でも飲もうかと思い寝床から身を起こした時にふと枕元を見るとメモが書いてあった。

「やあ( ゜∀゜)ノこの手紙を読んでるってことは、転生に成功したってことだね。おめでとう゛(pq´∀`)┌iiiiii┐(´∀`pq)゜゜これから君にはミッションをこなしてもらいます、でもミッション内容は教えませ~んwww/(^o^)\まあ頑張ってq(*・ω・*)pファイト!

PS.24時間以内にクリアしないとこの世界に置き去りにするから気をつけて(^ω^)」

僕は声を荒げて発狂した。

「ふざけんじゃねえよ!何が「置き去りにするから気をつけて(^ω^)」だよ!せめてミッションの内容くらいは教えろや!誰が書いたか知らねえが、しまいにゃドツき回すぞクソヤロー!」

5分ほど発狂した後、僕はまたメモを見つけた。

「発狂は済んだかな?(?_?)ミッション内容は教えませんなんて嘘、↓のメモに色々書いて有るから見てね(o≧▽゜)o」

指示通り下を見ると、箇条書きでいくつか情報が書かれていた

「・ミッション内容・山賊からの人質奪還

・この世界は2次元と3次元の間にある

・この国は「サハトゥマ」と言う

・言語は「セニカム語」を公用語とし一部の地域で「キルミア語」を第二言語としている

・言語は日本語とほぼ変わらないが、一部独自の言葉もある

・人種は「エルフ」と「ゴブリン」、それらのハーフと少数民族の「サハトゥマ人」がいる

・通貨は「ナフヤ」であり硬貨のみ

・今回は資金を2700ナフヤとする

・武器や食料は資金額を越えてはいけない、越えた場合はタイムリミットを3時間縮小する

では健闘を祈る」

入ってくる情報量が多すぎるため、頭が混乱したがなんとか飲み込んだ。

「はーあ、やるしか無いのか...」

こうして、僕の異世界ミッションが幕を開けた。


②敵襲

外には活気に溢れた市場が広がり、どれも魅力的に見える。市場の全体マップを見ながら武器屋を探していると、威勢の良い声が聞こえてきた。

「このテンカル素材の剣、見た目は他の剣と変わらないけど性能は他の100倍!しかも有名なセスト地方で作られた剣が何と1000ナフヤと来たもんだ!さあさあ買った買った!」

何やらこの世界では聞いたことの無い金属が流通しているようだ。

「あそこにするか」

僕はその店に入り、武器を選ぶことにした。しばらく品定めをしていると、店主が

「兄ちゃん見たこと無い顔だね、どこから来たんだい?」

と聞いてきた。しまった、そんな事は考えても居なかった。言葉に詰まりながら

「この国では無い遠い所です」

とあながち嘘では無いことを言った。店主は首をかしげながらも

「そうか、まあゆっくり見ていってくれや。」

と豪快な声で答えその場を去って行く、僕はほっとしてまた品定めに戻った。

結局僕は悩みに悩んだ末、先程のテンカルとやらの素材の剣と短剣を購入し1700ナフヤを払って店を出た。

「武器ってこんなするのか...食料を切り詰めにゃいかんな。」

確かに武器は高かった、しかし食べ物の物価が安かった事が幸いした。何しろリンゴのような果物が10ナフヤなのだから、金には困らなかった。しかし食料品店の老婆曰く

「これでも高くなった方だよ、昔はもっと安かった。物価が上がったのも山賊のせいだよ、あいつらが畑をあらすんだよ。」

老婆はどこかしんみりした様子で話した。


老婆の店で買った干し肉をむさぼりながら市場をぶらぶらしていると、悲鳴とも聞こえる声がした。逃げ惑うエルフの一人が

「来たぞ!セスパルの奴らだ!」

と叫んだ

「セスパル?誰だそれ?」

「お前知らないのか⁉山賊だよ山賊!」

慌てているのがはっきり分かる口調だったので、すぐに事の重大さに気づいたがそれでも遅かった。その内悲鳴が大きくなり、人々はよりパニックに陥った。

「よーし!全員膝まずけ!動いたやつは全員殺すぞ!」

やけにテンションが高い声が、市場中に広がった。

「お前ら喜べ!俺は新しい商売を始めた!何だと思う?おいそこのお前だ。」

僕が指されているのに気付くのに、少し時間がかかった。

「え、えっと...武器商?」

「不正解!」

僕はセスパルとやらに、思い切り蹴られた。恐らくみぞおちに入ったのだろう、意識が朦朧としている。

「正解は...奴隷商だー!ということでこの中から奴隷になってもらう人を選びまーす!」

セスパルとやらとその仲間は、人々の間に散らばり数人拉致した。拉致されたのはどれも美形の女エルフだ、エルフ達は

「放して!助けて!行きたくない!」

と涙混じりに叫んだ。セスパルはこれまでとは違う、低いトーンで

「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえぞ、お前らに与えられた選択肢は拒否して死ぬか一生俺の下で性奴隷として働くかの2択だ。」

と言って女エルフを黙らせた。

僕は止めようとしたが思うように体が動かない、まだ蹴りのダメージが残っているのだろう。そうこうしている内に、セスパルとやらとその仲間は行ってしまった。自分の弱さと力の無さが切なかった。


③輪廻企画

山賊が去った後、市場はそれまでの活気を失い静まりかえっていた。僕はよろよろと立ちあがり、山賊を追いかけようとするがまだ体が動かない。そのとき、しわくちゃの手を差しのべられしゃがれた声で話しかけられた。

「今は体力の回復が優先です、さ私の家に行きますぞ。」

見上げるとそこには、老いたゴブリンが居た。

「私は貴方の味方です、何も警戒する必要なんて無い。」

老ゴブリンの肩をかり、市場を抜けた。

「ここが私の家でございまする」

僕は目を疑った、何しろ僕の家なのだから。

「あの...間違えてません?ここ僕の家ですよ。」

「何も間違ってはおりませぬ、ささ中へ。」

部屋に入りベッドに腰掛けると、バリバリバリ!と何かが裂ける音がした。

「暑っ、やっぱり無理するもんじゃ無いわ。」

そこには老ゴブリンの姿は無く、18歳位の女の子が立っていた。

「やっほー、改めてよろしく。私はネバダ、輪廻企画のナビゲーターだよ。」

しばらく状況が飲み込めないのは当たり前だ、10秒ほど呆然とした後に我を取り戻した。

「輪廻企画?そんな会社聞いたこと無いぞ。」

「そりゃそうだよ、地球には存在しないんだから。」

頭に?が何個ついた事だろう?見兼ねたネバダが説明してくれた。

「輪廻企画って言うのは5次元にある会社で、数十年に一度、他次元宇宙から無作為に生物を選ぶの。理由は他次元の危機を救うため、選ばれる条件は高等知能を持った生物、つまり貴方のような高い知能で生きてる生物って事。」

「質問、何で他次元宇宙から呼び寄せる選ぶ必要があるの?」

「良い質問だね」

と嬉しげにネバダは言った。

「それは他次元の存在で無いと救えない問題が有るからだよ。簡単に説明すると、例えば君はカーボンと呼ばれる炭素の集合体を知っているだろう?カーボンは加工しやすく、軽く、強い。しかしこの次元にはカーボンは存在していない、と言うより発見されていない。しかし君はカーボンを知っている、つまり君はこの次元の生物より高等な知識を持っている事になる。何故他次元から呼び寄せる必要があるのかと聞いたね、そういう事なんだよ。この次元では一方向からしか物事を見る事が出来ない、そこに他次元の存在を持って来る事によって新しい切り口から解決法を見いだせるんだよ。」

「すげー分かりやすい、そんで簡単に纏めると僕は他次元に呼び寄せられて山賊問題を解決するのが使命って事?」

「その通り!理解が早くて助かるよ。」

ネバダはそう言って笑った。

「あ、そんでもう一個。起きた時に目眩がしたと思うんだけど、どの位のキツさだった?」

「んーと...頭がぐわんぐわんする位。」

そう言われてネバダはガクッと膝を落とした。

「えーとここで残念なお知らせ...行動次第では貴方死にます。」

「...えっ?嘘だよな?頼むから嘘だと言ってくれ。」

「残念ながら本当、目眩って言うのは言うならば予知みたいな物なんだよ。5段階に分けられていて、一番ヤバいのは「頭がぐわんぐわんする」つまり貴方は死ぬ可能性が大。」

「もちろんこの次元で死んでも、元いた次元で生き返るよな?...な?」

ネバダは首を横に振った。

「残念ながら次元はいくつ有っても命は1つよ。」

こんな事聞かなければ良かった、そう思いながら失神した。


④過去

目が覚めると、日は暮れかかっていた。

「やべぇ!時間が無くなる!」

ベッドから飛び起きて、どう倒すかを考えていた。するとネバダが話しかけて来た。

「貴方まさか一人で倒そうって訳じゃ無いでしょうね?」

「えっ?何か悪い?」

「あんだけの軍勢相手に一人で立ち向かう気?貴方の身体能力は、漫画と違って向上して無いのよ。」

「そうなの⁉てっきり何かの加護がついて、強くなっているものかと...」

「貴方が選ばれたのは身体能力じゃない、知能なのよ。体が強い生物だけなら、腐るほどいるわ。」

そう言って彼女は、そっぽを向いた。

「となると後は数で圧すしか無いな、でも時間が足りない。」

「...貴方走れメロスって話、知ってるよね。」

暗い声で聞いてきた。

「知ってるけど、何か関係あるの?」

「メロスが処刑される前に妹の結婚式を挙げさせたのは知ってるでしょ?その時新郎側は大分グズったのよ、でもメロスは一晩中話し合い結局結婚式を挙げた。何が言いたいか分かる?」

「...長くても良いからちゃんと話して、理解させて強引に決行させる。それを繰り返して人数を増やす、そういう事?」

「流石高等知能を持った生物、それでこそ召喚した甲斐有ったって物よ!」

「でもそれだったら、タイムリミットが...」

「その為の私じゃない?さっきの説明聞いて、何も思わなかった?」

「確かに納得できる説明だった。」

「そう言う事よ。さ、日が暮れるわよ。」

ネバダの不機嫌そうな顔は変わらなかったが、どこか優しい笑みを浮かべていた。


俺はエルフを殺す、殺して奴らの上に立ってこき使ってやる。あの頃からずっと思っていた事だ。


サハトゥマ人は少ないながらも、高度な知能と技術を持っていた。テンカルの加工はサハトゥマ人でしか出来ないと言う程だ、あの時は毎日が楽しかった。しかし平穏は束の間の休憩に過ぎない、ある日エルフの騎士団か親衛隊かが俺らの所に押しかけて来た。

「お前がセスパルだな、殺人の容疑で逮捕する。」

頭が真っ白になり言葉を失った

「待ってくださいよ!俺は何もしてません!」

「こっちには証拠がある、第一にお前を見たって言ったやつも居たくらいだ。さ、おとなしくついてこい。」

「嫌だ!俺は何もして無い!」

「ほう、歯向かう気か。良い根性してるな...」

そこから後は何も覚えていない、腹部を蹴ったとか顔面を殴ったとか後から嫌味のように言われたけど全く記憶に無い。むしろ暴力を行使したのはあっちの方だ、気がつけば牢屋の中に入れられていた。隣には若いゴブリンが居る。

「起きたかい同室さん、あんた見たところサハトゥマ人かね?」

「ああ、はい。今は只の殺人犯ってことに成ってるんですけど...」

「何か言いたそうだね、言ってみなさい。」

「...俺は殺人なんかしてない、それどころか村から一歩も出て無いのに殺人犯に仕立てあげられた。」

「あんた職業は?」

「テンカルの加工をしてました」

若いゴブリンは納得したような顔をして、話してくれた。

「分かったよ、エルフの連中はテンカル加工の技術が欲しかったんだ。」

「???」

「テンカルって言うのは加工がとても難しい金属なんだよ、でも強くて使い勝手も良い。奴らはテンカルの加工技術が何がなんでも欲しいんだ。例え人を殺しても」

「それは...まさか!」

「そう、殺したのはお前さんじゃ無くて奴らだ。」

セスパルの腹から怒りがこみ上げてくる、まるで炎がメラメラと燃え盛る様に。

「俺に罪を被せて、自分達はテンカル加工の技術を得ようって算段か!糞が!」

元々力の強かったセスパルは、全ての牢屋をこじ開けた。不可解な事にエルフは誰一人として居らず、ゴブリンが大半を占めている。

「お前らの中で自分はやってないのに、捕まったヤツは居るか?」

そう囚人達に問いかけると、ほぼ全員が手を上げた

「なあ?こんな制度可笑しいよな?エルフが好き勝手して捕まらず、何もして無い俺たちは死ぬまで牢屋の中だ。はっきり言って腐ってる。」

所々で賛成の意を述べる者が出てきた

「そこでだ、今から俺の側について腐った世界を変えようじゃないか!」

そのスピーチが行われた夜、セスパルは囚人達を引き連れてエルフの居る監視塔を襲撃した。塔はすぐに制圧され火が放たれた、その中にエルフ達を残して。翌日にも別の牢獄を襲撃し、囚人を仲間にし塔を焼いた。その翌日も、そのまた翌日も。

「お前ら、よくやった!罪の無い者を救い、罪にまみれた汚いエルフを焼き、これだけの同士を手に入れた!しかし、これからは殺すのではなく国を作ろう!俺たちだけの、自由な国を!」


⑤会議

「お願いだ!力を貸してくれ!」

必死の訴えは、走れメロスの展開通りになっていた。相手がグズりこちらの話を飲んでくれない。大体の理由として

「仕返しが怖い」だの「戦ったことが無い」だのとありきたりで、エルフって以外と腰ぬけなんだな~と僕は思った。

「何も落ち込む事はないわよ、次行きましょ次。」

ネバダは優しく声をかけてくれたが、彼女も話を飲んでくれない事に苛立っているのだろう。声に怒りがこもっているのが感じ取れる。


結局、1000人程呼び掛けた結果50人程が応じてくれた。

「集まってくれてありがとう、ではこれより作戦会議を始める。」

ネバダは輪廻企画の規約上、戦闘に関する助言が一切禁じられている為外に出て貰っている。

「それじゃ、5人の班になって1班ずつアイデアをまとめて発表してくれ。」

「はい」

若いエルフが質問してきた

「班とか、アイデアとかってどういう意味ですか?」

僕は頭を抱えた、この世界の言葉は確かに日本語に似ている。が、完全に日本語と言う訳では無いため会話に齟齬が生じるのだ。

「えーと、班って言うのは小さな団体だな。何人かで固まって、共に行動する小隊みたいな物。アイデアは、平たく言えば考えだな。」

若いエルフは納得して、話し合いに入った。


それぞれの班の意見を纏めた結果、大きく3つに絞れた。

・人質がいるので、拠点に忍びこんで人質だけ奪還

・拠点に火を放ち、ある程度敵を殲滅させた所で人質を奪還

・正面突破

「まずは忍び込み派、発表して。」

眼鏡をかけた「サンタン」と呼ばれるエルフが発表した

「我々は人質の身の安全を考えつつ、議論した結果このような意見にたどり着きました。まず、奴らの拠点は市場の外れにあります。周りは柵で囲まれており侵入は難しそうですが、以外と隙だらけであっさり入る事が出来ます。さらに奴らは毎晩酒盛りをしており、判断が鈍くなっているので奪還はこの策が一番安全かと思われます。」

「ありがとう、では次放火派どうぞ。」

背の高い「ガラム」と呼ばれるエルフが発表した。

「我々は戦力をなるべく削ぎ落とす事を重点に置いて議論した結果、このような結論にたどり着きました。奴らの家の素材は主に植物を使っています、我がサハトゥマでは昔は植物素材の家屋が主流でしたが火災の発生率がとても高かったため今の様なレンガの家屋が建てられました。その歴史の逆を捉えれば良いのです、勿論火災の規模は人質に被害が行かないよう火災の規模は人質に被害が行かないように抑えますが。」

「ありがとう、では次正面突破派どうぞ。」

筋骨隆々の「ゼスト」と呼ばれるエルフが発表した。

「前二つ意見はその場しのぎの意見に過ぎず、長い目で見てサハトゥマの為にならん。この先もサハトゥマの民が平和に暮らす為にも、ここで潰しておくべきだと思う。」

「ありがとう、意見を纏めたいので少し休憩していてくれ。」

はーあ、と大きなため息をつく。意見がバラバラで、全く方向性が纏まらない。

「お疲れ様、どうなった?」

ネバダが外から入ってきた。

「あんまり詳しくは言えないけど、3派に別れてて全然方向性が纏まらないんだ。」

「ふーん...私、輪廻企画の会議で議長やった事有るんだけど、その時も中々意見が纏まらなくてね。結局それぞれの意見に折れてもらって、強引に1つに纏めたわよ。」

彼女の意見は正に、的を射ていた。

「ありがとう!解決策が見つかった!」


休憩が終わりまたネバダには外に出て貰った。

「策が纏まったので報告します、まずサンタンの案...採用。」

サンタン達はホッと胸を撫で下ろした

「次、ガラムの案...採用。」

ガラム達も安堵していた

「最後、ゼストの案...採用。」

全員の意見が採用されたことに、ざわめき始めた。

「皆びっくりしただろう、俺も悩んだ末に出した結論だ。今から説明する。」

そう言って僕は立ち上がった。

「まずサンタンの案、忍び込みはよく用いる常套手段だ。しかし、失敗した時のリスク...つまり危険が大きいという弱点を持つ。その弱点を補うのが、ガラムの案だ。忍び込みに失敗しても、相手拠点に甚大な被害が及ぶので多少の時間稼ぎも出来る。そこにゼストの正面突破を付け加えると、より強力な策の完成だ。」

全体からおぉ!と歓声が上がる。3人も納得したらしい。

「ここで50人を3班に分ける。1班...仲間内では「忍者」と呼んでくれ。はサンタン率いる10人、2班...仲間内では「焼き討ち」と呼んでくれ。はガラム率いる10人、3班...仲間内では「ブレイク」と呼んでくれ。はゼスト率いる30人で行ってくれ。何か質問は?」

はい、と若いエルフが手を上げた。

「何でその分け方なんですか?」

「隠密行動するにはなるべく人数を減らした方が気付かれにくい、逆に正面突破するなら人数がいた方が押し切り易い。火を放つと言っても人質に燃え移ったら大変だから、相手の戦力を削ぎ落とす為だけの人数にがいた方が押し切り易い。火を放つと言っても人質に燃え移ったら大変だから、相手の戦力を削ぎ落とす為だけの人数にした。」

若いエルフは納得して座った。

「他に質問は?無いな。では夜明け前に、奴らのアジトに集合。以上解散。」



「...ま!...様!...セスパル様!」

どうやら寝ていたらしい

「セスパル様!大変です!俺たちの国が!」

急いで表に出ると、あの塔の様に国が燃えていた。その炎の中に、エルフでもゴブリンでもない、サハトゥマ人に似た男が立っていた。


⑥逆襲~そして次へ~

「怯むなー!進めー!」

ゼストの怒号が鳴り響き、ブレイクの士気が高まる。僕もブレイクに参加し、戦場の最前線にいた。人を殺すとか、生き物を殺すとか躊躇っている暇は無い。今はこの世界...否この次元を救うために殺さねばならない。後悔は後回しだ。

「たぁぁぁぁ!」



奴隷小屋の中には、凄惨な光景が繰り広げられていた。鎖で手足が繋がれ身体中傷だらけ、猿轡までさせられている。

「うっ...」

サンタンは吐き気をこらえて拘束を解き、さあ行こうとしようとした時聞き覚えのあるやけにテンションが高い声がかかった。

「楽しそうだね~、俺も混ぜてくれよ!」

「セスパル...貴様!」

サンタンが飛びかかるが、何かが弾けた音がした。床には気を失ったサンタンが転がっている

「セスパル!」

残りの9人で襲いかかっても、セスパルは動じない。むしろ楽しんでいるかの様に思える。

「次は、あっちか。」

僅か10秒の間に、忍者は全滅した。



「やりましたね!」

ガラム率いる焼き討ちは、任務を終えブレイクに合流しようとしていた。

「よーし、敵はあと少しだ!気ぃ引き締めて行くぞ!」

「そーだそーだ、俺を倒せー!」

いつの間にかセスパルが背後に回っていた。

「っ...」

刹那、口の中に血の味が走りその場に倒れこんだ。忍者と同様に、焼き討ちは一瞬で全滅した。



一体何人殺したのかと思う程、セスパルの体は血にまみれていた。

「アハハハ!たのしー!」

狂った笑いが、戦場の静寂に響く。

「そうだ!皆沢山集まってくれたし、久しぶりにアレやるか!」

セスパルがその言葉を発した瞬間、敵がざわめき始めた。

「やめろセスパル!死ぬぞ!」

「駄目だ!アレだけは絶対にやるな!」

敵が必死に止めようとするが、セスパルに吹き飛ばされ泡を吹いた。

「うるせぇ、俺は今楽しみたいんだよ。邪魔したら例えお前らであってもぶっ殺す。」

女エルフを黙らせた時のトーンで敵を一蹴すると、セスパルは唸り始めた。

「ウァァァァァァ!」

体の形がみるみる内に変わっていき、唸り終わった頃には元の体の5倍の大きさになった。背中からは黒い翼が生えており、顔も鬼の様になっている。

「こうなったら誰にも俺は止められねぇ!」

翼をはためかせ、夜明けの空へ上昇する。朝日の光を背にして目を眩ませた。

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね!エルフは残らず死ねー!」

空中戦を想定していなかった為、飛び道具は持ってきていない。僕意外のブレイクは、あっという間に全滅した。

「っ...」

あまりの絶望で足がすくみ、体が硬直した。

「見た所お前が主導者か、名前は?」

「...」

「だんまりか。まあ良い、お前に一つ良いことを教えてやる。俺はエルフに罪擦り付けられたんだよ、だからエルフを殺してる。でもお前はエルフじゃ無い、一体何人だ?」

「...別の次元の、地球って所から来た。」

やっと喋れる様になった。

「知らねぇなぁ?まあそんな事はどうでも良い、俺はお前を誉めたい。」

「?」

「自分勝手なエルフをここまで統率出来た、お前家に入らないか?」

「嫌だ!」

「何でだよ?食事も居住地もあるし、何より傲慢で自分勝手なエルフを好きに虐げられるんだぜ?最高だろ!」

「...それでも嫌だ!」

「理由を聞かせて貰おうか。」

「確かに、エルフは傲慢で自分勝手かも知れない。僕もそんなエルフを、沢山見てきた。」

「だから入れと」

「でも!」

セスパルの話を遮る。

「ここに来たエルフは違う!仲間思いで、優しくて、何よりお前みたいに弱くない!」

「俺が弱い...だと?貴様!ぶっ殺してやる!」

セスパルは僕の腹に腕を突っ込み、音を立ててかき回した。耐え難い痛みが、体を襲う。

『ああ、死ぬんだな。こんな所で、全く知らない所で。』




薄れ行く意識の中、どこか遠い所から声が聞こえて来た気がする。

『...たいか?』

『え?』

『死にたいか?』

『いいや』

『なら俺に変われ』

『変わって、どうやって?』

『やれば分かる』

『...分かった。』

『但し注意、俺に変わったら後戻りは出来んくなる。それでもええか?』

『やる』




「ハハハハ!奴は死んだ!」

高らかに笑い転げるセスパルを背に今までの雰囲気とは明らかに違う、異形のモノがこちらに迫ってきた。

「何だよ、まだ生きてたのか?また殺してやるからな。はぁっ!」

セスパルは違和感を覚えた、奴の目が開いていない。

「そんな遅い攻撃が当たる訳無いやろ?アホか?」

「何を!」

「ほらかかって来いや、ナメクジ。」

何度飛びかかっても、当たらない。

「つまらんな~、こんなんに負けるとかアイツ雑魚やろ?」

「言うじゃねえかよ、なら見せてやるよ!俺の本気をな!」

「やらんでええわ、ほい。」

セスパルの目の前にひょいと現れると、にんまりしてこう言った。

「一つええこと教えたるわ、俺の目ぇ開けたらな半径3㍍以内にあるもんは...灰になる。ほれ」

目は赤黒く、吸い込まれそうな感じだった。

「これな一つだけ欠点があるねん、この結界な球状になってるんやけど、地面まで灰にしてもうてえんえん沈んで行ってまうねん。だからジャンプしてる間しか、外の景色見れへんのや。」




セスパルは一瞬にして上半身だけになり、悲鳴をあげていた。

「分かるか?それがお前のやって来た、エルフに対する仕打ちや。一生のたうち回ってろ、ナメクジ。」

今度は山賊に向かって叫んだ

「お前ら、今すぐここの後片付けせえ。異論は認めん、ここの集落も全部撤去せえ。でもナメクジはここにほってけ。そんで街戻って虐められろ、エルフの痛みを知れ。十分反省したら、仕事して人の役立てよ。分かったらさっさとやる、やらんやつは灰にするで!」




気付いたら僕はまたベッドの上で寝ていた。

「やっと起きた!心配したのよ、1日寝てたんだから!」

ネバダは泣きながら言ってくれた。

「ごめん、心配かけて。」

「...許す」

ネバダは僕を抱きしめた。強く、優しく。




「ん?1日ってタイムリミット過ぎてない?」

「心配しないで、次の次元に移動中よ。」

「次?」

「ああ、言って無かったわね。輪廻企画の規約で12の次元に行かなければいけないのよ。」

「つまり、それって...」

「一つクリアしたから後11個ね。」

次元の狭間に僕の悲鳴が響き渡った。




第一セクション 完

ここまで読んで頂き、本当にありがとうございます!嬉しい限りです。

この話は大分前から考えて来た物で、出す場所をどうしようと考えていたのですが、ひょんな事からこちらのサイトを見つけて投稿させて頂きました。見るに堪えない部分が多々あったと思われます、その時は遠慮無くお申し付け下さいませ。


ここまで読んで頂き本当にありがとうございました!また次回お会い致しましょう!では!

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