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第18話 誰にとってのバッドモーニング(Ⅰ)

 ひとしきり絡んできた挙句酔い潰れてしまった2人は、ゼンマイでも切れたみたいに床に崩れ落ちてご就寝。最後まで迷惑なフリーダム悪酔い姉妹だった。

 改めて2人に禁酒させる鋼の決意をした俺は――かといってそのまま放置するわけにもいかないので、1人ずつ背負って部屋に運び、ベッドに寝かせておいた。後始末する方の身にもなってほしいもんだよ。2人とも軽かったからまだいいけど、人1人背負って階段を上るって結構大変なんだぞ?


 などと悪態を吐きながら、今度こそ飯にしようと部屋に戻る俺――だがしかし、ここで新たな問題が発生。

 2人を連れて部屋を出ていったせいだろう。スタッフたちが食事は終わったものと勘違いしたらしく、俺が戻ってくるまでにすべての料理を片付けてしまっていたのである。

 行方を確認したら、全部廃棄してしまったとのことで……結局俺はその日、一切夕食を口にできなかった。


(ひどい……ひどすぎるぜ……)


 とか泣き崩れてたらメイドの1人が余ってるおやつを分けてくれたんだが、これがまさかのスルメ。嫌いじゃないけど、こんなものを食べてたら余計にひもじい思いをしそうな気がしたので、臭いの漏れない袋に入れてカバンに投げ込んでおいた。今度酒でも買ってきてこっそり食べよう。1人で。聞いたところ、この世界の成人は18歳かららしいし。


 そんなハートフルボッコの夜を越えて――翌朝。

 前日から続くあまりの空腹に(さいな)まれた俺は、まだ1割の白も空にはない早朝に目が覚めた。


(腹減ったな……)


 朝食の時間まで耐えられそうにないし、そもそも用意してくれているかもわからない。この時間だと城下町の商店も開いてはいないだろう。なので、厨房で食材のあまりでももらってこようと、さっさと着替えを済ませて部屋を出る。

 すると――あれ?


「メイリ?」


 メイリだ。ちょうどあっちも部屋を出たところらしく、隣のドアにもたれかかって、ふぅっと軽い息を吐いていた。

 珍しいな。メイリが早起きなんて。いい感じに酒が回ったおかげで、すっきり目覚められたのかもな。


「おはよう。今日はやけに早いな。酒の飲みすぎで変な夢でも見たか?」

「……部屋が、暗かったから」


 近寄って声をかけると、メイリは妙な返事。

 部屋が暗いって……そりゃあ、2人を運んだ時に部屋の照明は寝やすいよう消しておいたし、まだ日も昇りきってない時間なんだから、当たり前のことだろ。

 こいつも、時々変なことを言い出すよな。特に何かに悩んでる様子とかはなさそうなので、あんまり気にしないようにしているが。


「ふーん? まあ、なんか嫌なことでもあったら言えよ? 話くらいは聞いてやるから」

「……ん」

「ああ、そうだ。俺は朝飯もらいに行くけど、お前はどうする? 一緒に行くか?」

「先に、シャワーあびたい」


 昨夜は酔い潰れてそのままだろうしな。俺が洗ってやるわけにもいかなかったから放置してきたが、さすがに気になったか。


「そっか。ならお前の分も何かもらってきてやるよ。部屋へ持っていけばいいか?」


 こくっ。


「わかった。じゃあちょっと待っててくれよ」

「電気、つけて」


 立ち去ろうとした俺に、メイリが意味不明なお願いをしてくる。

 電気……? 発電機なんか持ってない……っていうか、この世界にないだろ。そもそも魔法で事足りちまうし。


「部屋の、電気」

「ああ……」


 照明のことね。

 ……って、それならスイッチ押すだけだろうが。なんでそんなことで俺に頼ろうとする。


「いや、それくらい自分でやれよ」

「……やだ」


 変なところで強情だし。

 スイッチの場所がわからないなんてことないよな。昨日部屋には入ってんだから。廊下は明かりがついてるから、その光があれば壁が見えないってこともないはずだし。

 あー……もしかして、リセナがまだ寝てるからか? 明かりをつけたら起こしちゃいそうだから、その罪を俺に被れと。

 なんというワガママ。『嫌なことがあったら言え』とは確かに言ったけど、そういう意味じゃねえっての。


「はあ……なら、俺の部屋を使えよ。リセナはまだ寝かせておいてやりたいし」

「そうする」


 と言うと、メイリはドアから離れて、後ろ手に持っていた着替えやタオルを前に回した。

 こいつ……さては最初から俺の部屋を使うつもりだったな? 妙な部分で策士の才能を発揮しやがる。

 ハメられたと知った俺はため息をつきながら、部屋を開けて中の明かりをつけてやる。


「じゃあ、行ってくるから。留守番頼むぞ」


 といっても、こんな朝早くにやってくる人なんていないだろうけど。


「ん。いってらっしゃい」


 早くもシャワールームに入っていったらしいメイリのくぐもった声を受けつつ、俺は下の階の厨房へと向かった。

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