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第28話 決闘の果てに(Ⅸ)

 カケルに頼んでリセナを送り届けてもらい、屋敷には俺とマルク、そしてメイリだけが残った。

 各々(おのおの)体を休めながら、気絶しているシリウスの覚醒を待つ。


「うっ……私は……」


 ほどなくして、頭を押さえながら起き上がったシリウスの前に俺たちは立つ。

 メイリは近くの大きな瓦礫にもたれかかって寝てるけど……まあ、いいや。お前はそれで。

 自慢の魔導具がこのありさまだ。特に縛ったりはしてないけど、この状況で暴れ出すほどシリウスもバカじゃないだろうしな。


「目が覚めたか」

「マルク、それに……くっ……」


 まだマルクに突き飛ばされたダメージが抜けきっていないらしい。腹のあたりに手をやって眉を寄せる。

 それでも、さすがは高貴な身分にあるだけある。弱みを見せまいとすぐに表情を(やわ)らげ、自嘲気味に笑ってみせた。


「どうしたんだい? 見ての通り、私の敗北だ。言い訳するつもりはない。煮るなり焼くなり自由にするといい。君には、その権利がある」

「するかよ。俺には別に、お前をどうこうする理由はない」

「君は甘いな。そんな様子では、今に足元をすくおうとする者が現れてしまうよ。私のように、ね」

「そんときゃその時だ。またマルクたちにどうにかしてもらうさ」

「バカ」


 冗談めかして言ってみたら、マルクに呆れ混じりに怒られた。

 一応本心なんだけどな……頼ってばかりは騎士様の許すところじゃないらしい。


「なあ、シリウス」


 少しだけ緩みかけた緊張を取り戻しながら、俺は言う。


「さっきも言ったけど、俺には本当に極魔なんて必要ない。できることなら今すぐにでも、お前に(ゆず)り渡してやりたいと思ってる」

「けれど、死ぬつもりはないんだろう?」

「当たり前だ。だから代わりに、それ以外ならどんなことでも手伝ってやるよ。横取りしちまったお詫びにさ」


 俺がそう投げかけると、シリウスは珍しくきょとんと疑問を抱いたような顔をした。


「……どういう意味かな?」

「お前だって、極魔の全部を理解してるわけじゃないんだろ?」

「それは当然だ。君が所有している限り研究を行うことすらできないのだからね」

「だから、その研究に協力するって言ってんだよ。俺が見本を見せれば、全部は無理でも何かちょっとくらいわかることがあるかもしれない。もしかしたらその中で、死なずに契約を譲る方法だって見つかるかもしれないじゃねえか」

「――――」


 見上げる目に、少しだけ光が戻った気がした。

 それで俺は、シリウスに手のひらを差し出す。

 きっと、受け入れてくれると信じて。


「探そうぜ、俺たちで。全員が幸せになれる、本当のハッピーエンドをさ」


 精いっぱいの笑顔を浮かべてそう伝えると、シリウスはフッと静かに笑った。


「――どうやら私は、君には敵わないみたいだね」


 なんて言いながらそっと差し出された手を、俺は強く握り返した。

 これが本当の契約だと。

 ここからが本当の始まりなのだと――確かめるように、ぎゅっと。

 満天の夜空に、一際強く輝く青白い星(シリウス)の下。

 悲しい行き違いから始まった決闘は、こうしてひとまず幕を閉じた。

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