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第3話 賢者の秘密…?(Ⅰ)

「出立は明日の明朝だ。それまでに用意しておいてくれたまえ」


 そう告げて帰ったシリウスを見送った後、すぐに俺たちは明日のための準備を始めた。

 といっても、必要なものはシリウスが用意してくれるらしいから、やったのは外出の準備だけだが。マルクは「弁当の食材を買ってくる」とか言って出ていったけどな。


「悪いなリセナ。せっかく来てもらったのにバタバタしちゃって」

「ううん。お仕事なんだから気にしないで」


 準備の片手間にそう断りを入れると、リセナは(ほが)らかに笑って首を振る。


「それにしても、なんだかすごいことになっちゃったね。極魔だって」

「ああ……正直ヤバいことに首を突っ込んだ気はしてる」

「大丈夫かな? 危なくない?」

「シリウスの話じゃ魔物が出るかもしれないってさ。でもまあ、なんとかなるだろ。メイリとマルクがいるし、シリウスもそこそこやれるみたいだしな」

「……私もついていっちゃダメかな?」

「リセナが? ……勘弁してくれ」


 リセナについてきてもらえれば心強いのは間違いないんだけどな。

 衛生兵だけあって医療技術には信頼がおけるし、治癒の魔法も、軍が正式採用してるものだからかメイリの<ヒーリング>より遥かに高性能で効率的だ。少し前に本人から聞いたが、小型弓を用いた中距離戦闘術もかなり得意としてるところらしい。

 そして何より、俺たちの中で一番森に詳しいのもリセナだ。シリウスが「地点の目星だけはついている」と語った極魔の在処だって、リセナがいれば早々に見つけ出せる可能性は高い。

 目先のメリットだけなら余りある……けど、問題はそこじゃないんだ。


「あ、足手まといにはならないように頑張るよ! 魔法も……軍用以外はあんまり詳しくないけど、お手伝いくらいならできると思うし!」

「いや、そういう心配はしなくていい。リセナが来てくれるなら頼もしいよ。――じゃなくてさ、もしも万が一のことがあった時、将軍やエルフィアのみんなに顔向けできないから」

「そんなっ、何かあってもナユタ君たちのせいじゃないよ!」

「誰のせいとか関係なくあっちゃダメだろ。とにかく、俺たちなら大丈夫だから。不安になるのはわかるけど、気にせず待っててくれ。な?」

「でも……」


 これ以上食い下がられても困るので、何か別の話題はないかと周囲に目を向ける。

 で、気付いた。


「あれ? そういえば、カケルは?」


 いつの間にかいなくなってる。俺たちとシリウスの話すら半分聞き流しながら、そこで書類と格闘してたのに。


「ナユタ君たちが話してる間に帰っちゃったよ。『今回はナユタに任せるよ』とか言って」


 答えないのも悪いと思ったのか、若干心残りのある様子ながらもリセナはそう教えてくれた。

 ふーん……?

 なんか、妙な言い方だ。

 任せる――って、シリウスの依頼のことだよな。そりゃあ俺たちが受けた(無理やり受けさせたとも言う)依頼なんだから、俺が任されるのは当然だが……それならそれで『頑張って』とか言っていくよな。あいつの性格なら、普通。

 ここに来る前に、役場でシリウスから話を聞いてたとか? いやでも、今日はカケルも朝からずっとこの家にいたし……

 ……ダメだ。わからん。

 そもそも、あの万能イケメンが考えることなんかちょっと悩んだ程度で察せるはずがない。いいや、忘れよう。

 なんにせよ、応援してくれてることには変わりないだろうしな。



 <>



 そして、翌日。

 明朝も明朝、日の出とともにやってきたシリウスに()かされながら身支度を整えて、外に出ると――


「なん――っだよこれッ!!」


 玄関前には、大小さまざまな機械の山。山。山。一夜で工場でもできたみたいだ。


「見ての通り、極魔捜索に使う計測機器だよ。どれも貴重なものだから扱いには注意してくれたまえ」


 これ全部かよ!

 テレビでやってたピラミッドの発掘だってこんな大がかりじゃなかったぞ!


「どうやって持ってきたんだよ! てか、どうやって持ってくつもりだよ!」

「魔法を使えば造作もないさ。目的地までの運搬は――そうだね、君に一任しよう」

「はっ!? なんで俺が……」

「君には別段期待することもないからね。雑用くらい請け負ってもらうのは道理じゃないかい?」


 一理ある。

 俺がついていくのはメイリに通訳が必要だからってだけで、戦力としては自称他称問わずカウントされてないし。


「だからってこれは無理だろ!? 荷物持ちとかいうレベルじゃねーぞ!」

「君だって魔導士のはしくれなら<アンチ・グラヴィタス(フロート)>くらい使えるだろう」

「俺はそこまで出力出せないんだよ……!」


 魔導書で勉強して以前より精度は(はる)かに上がってるものの、それでも持ち上げられるのはせいぜい人1人分くらいの重さだ。こんな大質量なんかそもそも想定してすらいないっての。

 一応、将軍との戦いでは奇跡的にこれに匹敵する質量を持ち上げてるから、あの時の再現ができればなんとかなるのかもしれないが――あれは俺自身、できると思ってやったものの、なんでできたかわからない謎の現象。もう一度やっても上手くいくとは思えん。

 第一こんなことのために全力で叫ぶなんて嫌だ。恥ずかしいし。

 でも、これを持っていかないと極魔探しはできないんだよな。うぅむ……


「せめて数を減らしたりできないのか? 絶対に欠かせないやつだけ持っていって、あとは必要に応じて取りに戻るとか……」

「ふむ。そういうことなら――」


 シリウスは一瞬考えて、山に埋もれてる機械の1つを指さした。

 スパコンみたいな形をした長方形の演算機器だ。山の中でも大きい部類だが、2、3人いれば持ち上げられそうか……?


「これさえあればひとまずは困らない。あとは――これと、これも持っていこうか」


 言いながら、シリウスは手のひらサイズの小型ガジェットもいくつか拾い上げているが……それでも、全体からすれば10分の1以下に収まっちまったぞ。

 こんなにたくさん機械があるのに、本当に必要なの、たったこんだけ?


「……他のはなんのために持ってきたんだよ」

「念には念を、というやつさ。どこで何が必要になるかは行ってみるまでわからないからね。屋敷にある機材をすべて持ってきた」

「やっぱお前アホだろ」

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