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女にされて異世界へ!?  作者: ゆりかもめ
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ふっ、所詮は子どもか……

 こういうシーンを初めて書いた。

 ん、暖かい。もう朝なのか? 目が覚めてしまった。どうやら俺は何かに抱きついて寝ていたようだ。柔らかくて、良い匂いがする。そして暖かい。このまま二度寝できたら最高だ…………。


 ……だが、だがっ! その誘惑に抗わなくてはならない! なぜなら、今日はマスターの喫茶店で働く日だからだ! 昨日受けた恩を返さなくては、日本男児としての名が廃る! ご恩と奉公! これが日本男児の本懐(注:一個人としての見解です。)! 


 さあ、準備を始めようではないか、いざ鎌倉へ! 


「んんっ」


 うん? 今、上の方から女性の悩ましい声が? ……! っ!?!?!?!? なっ、なななっ、なんということだ! お姉さんがっ、受付のお姉さんがっ、一緒の布団に寝ているだとぅっ! どういうことだっ!? 


 ……昨日は、そうだ受付のお姉さんの家で暮らす事になったんだった。そして俺は、宛がわれた部屋で先に寝たはず……。びっくりするぐらい速攻で寝落ちした記憶しかない。思っていた以上に疲れが溜まっていたようだ。


 な、ならばどういうことだ? 俺は無意識の内にお姉さんの部屋に忍び込んだのか? ……いや、ここは俺に宛がわれた部屋だ。ということは、お姉さんが夜這っ! いやいやいや落ち着け! そんなわけないだろっ! お姉さんがそんなはしたない真似をする訳がないっ!! 


 !?


 いっ、勢い良く、立ち上がった俺の目に、とんでもないものが目に飛び込んできたっ! ぷるるんって! ぷるるんって! したぞっ! マジかっ! 『お』から始まって『い』で終わるものが!! ぷるるんって! くっ!! 魅惑の二つの枕が俺を惑わせるっ! 俺の本能が飛び込めと言っているっ!! だが! だがっ!! 俺にはっ! マスターのご恩に報いるという使命がっ……! 煩悩退散! 煩悩退散っ! 煩悩よ! 去れっ!!


「んん? ……クロエちゃん?」


 なぁっ!? 起きてしまっただとぅ!? くっ、どうすれば良い! こんなときの対処法を、先生は教えてくれなかったぞ!?


「? ……。ああっ、クロエちゃんは、起きたら私がいてびっくりしたのね?」


 イエス、その通りだ。コクコクと頷いて、肯定の意を返そう。


「実はね、寝る前にクロエちゃんの様子を確認したの。そしたらね、寝顔があまりにも可愛い過ぎて、そのまま一緒に寝ちゃった」


 ぐはぁっ!!! その顔はっ! その顔は反則だぞぅっ! そんな寝起きの! 無防備な姿で! そんな顔されたら! どうにかなってしまいそうだっ!!


 しかし! しかしだっ! どうした訳か、俺の体を! 俺の体の中をっ! 熱いパトスが駆け巡らないっ!! どうしてしまったんだ! なぜこんなにも暖かい気持ちが湧き出してくるんだっ!! あれか? あれなのかっ!? やはり俺の精神は肉体の方に引っ張られているというのかっ!?


「さあ、朝ごはんの準備をしましょう。手伝ってくれる?」


 はーい! はーい、手伝いまーす! え? お皿を並べたら良いんですか? こうですか? そんなっ、これぐらいで誉めないでください! 飲み物は牛乳で良いかって? 全然問題ないですよ! え? 朝ごはんは美味しいかって? そ、そんなのっ、お姉さんと一緒に食べて美味しくない訳がないじゃないですか~! え? そろそろ出ないといけない時間? 片付けも手伝います! いえっ、こんなの当たり前ですよ! 準備はできてるかって? 勿論です!


 ふぅ、今朝は色々と大変だったぜ。衝撃を受ける発見もあったが、問題ない。今からは仕事の時間だ。いつもよりだいぶ早い時間に起きたが、仕方がない。喫茶店の開店時間は早いんだからな。


「今日は随分と気合いが入っているな」

「ああ、まるで戦場にいるかのような顔つきだ」

「見ろ、あのやる気に満ち溢れた姿を」

「ああ、最高に輝いて見えるぜ」

「今日は何かをやってくれるに違いない」


 おっさん達、今日も来ているのか。……昨日は醜態を見せてしまって、申し訳なかった。しかし、今日の俺は一味違うぜ? しっかり見ててくれよなっ!


「おっ? こっちを見てるぞ」

「本当だ」

「ああ、やっぱり可愛いなぁ」

「頑張れよ!」

「俺達も応援してるぞ!」


 可愛いだと? 当たり前ではないか。今日は最強装備のメイド服を装備しているのだからな! しかも、メイド服とはいっても、アキバの店のようなチャラチャラしたメイド服などではない! 正統派のメイド服だ! メイド服とは異性を誘惑するための衣装に非ず! 奉仕するための衣装である! 間違えないで頂きたい! ダンディーなマスターの装いと対になる装備だ!


「おざまーす。所長、いつものお願いしゃーす」


 む? 最初の客か。随分とチャラい奴が来たな。だが、今日の接客担当は、この俺だ。マスターではなく、俺に注文してもらおうか!


「ん? 何すかこの子? へー、新人の。え? この子が注文取ってくれるんすか? ひゅ~、今日は朝からついてんなぁ! 君、可愛いね? 名前は何て言うの? 何歳? 随分と小さいね? 成人してるの?」

「え? え? わ、私は、あの、えっと」


 あっ、あっ、ごめんなさい! 俺、人見知りなんです! こんなにグイグイ来られても、困ります! え? なに? なに!? どうしたら良いの!?


「おいピエール、ちょっとこっち来いや」

「え? 何すかシモンさん、俺は注文中……」

「まあ、黙ってついて来いよ」

「え? イヴォンさんも?」


「嬢ちゃん、こっちの注文を頼む」

「コーヒーを五人分だ」

「ついでにパンケーキも同じだけ」


 おっさん達っ! ふ、ふん! あの程度のこと、俺だけでも十分に対応できたんだからな! 勘違いするなよ? だ、だが、礼を言ってやらない事もない、ぞ? え? 早くコーヒーが飲みたいって? 腹も減った? し、仕方がないなぁ! すぐに持って来てやろう!


「畏まりました!」


「あっ、お前ら!」 

「てめぇ、ピエール! お前のせいで!」

「え、何すか!? 俺が悪いんすか!?」

「他に誰がいる!」

「あの嬢ちゃんにはだなぁーー」


 後ろで何か聞こえるが、聞こえない。聞こえないものは、聞こえない。俺にはマスターの作り上げた商品を、テーブルまで運ぶ仕事が待っているのだ。邪魔しないで頂きたい。


 なっ!? コーヒー五人分だと!? マスター、さては俺の実力を測るつもりっすね? いいでしょう、受けて立つっす! まあ、見ててくださいっす! この程度は余裕っす! ……おっと! ふぅ、まあ落ち着け、おっさん達。まだ焦る時間じゃない。 ……。……。……。……。……。……よっと、中々に困難なミッションだった。魔法が使えていなかったら、危なかっただろう。いや、マジな話し、筋力強化が使えなかったらヤバかった。


「ピエール、わかっているだろうな」

「任せてくださいっす。このピエール、接し方さえわかれば余裕っすよ!」


 むむ? あちらで何か動きがあるな? ホールを任されている身として、対処しなければ。


「あっ、店員さん」


 むむむ? 貴様か、チャラ男。先程は不覚をとったが、次はそうはいかないぞ?


「モーニングセットを一つ」


 ふむ、確と聞き届けた。しばし待つが良い。


「ピエール、やればできるじゃないか」

「ふっ、この程度のこと余裕っすよ」

「最初からそうしていれば、何の問題も無かったんだ」

「えー、あんな可愛い子がいたら気になるじゃないすかー」

「お前はノリが軽すぎるんだ」

「あの子と接するときは、猫と接する様にだ」

「最初が肝心だぞ」


 ピエールとやら、中々に良い奴ではないか。その顔、

覚えておこう。だが、今はお前に構っている暇がない。パンケーキが仕上がったからな。ふむ、これを一回で運ぶのは無理だな。二つづつ運ぼう。


「お待たせしました」


「ああ、ありがとう」

「んー、いつもより美味い気がするな」

「一回も頼んだことないけどな」

「バカ野郎、空気を読め」

「まったくだ。コーヒーのお代わりを頼む」


 良いだろう。全員分でいいか? うむ、全員分だな。少し待っていてくれ。マスター、コーヒーのお代わりを五人分っす! ……お? ちょうど良くチャラ男のモーニングセットが出てきたではないか。今、運んでやろう。……。……おっと気安く触らないでもらおうか。俺は誰にでもすぐに許可を出すほど尻軽ではないぞ?


「えー、何でシモンさん達は良くて、俺はダメなのー?」


「バカめ、ピエール」

「俺たちとは積み重ねてきた時間が違う」

「簡単になつくと思うな」

「お前は最初の接触に失敗している」

「険しい道のりだぞ」


「えー、納得いかないっす」


 良くわかっているではないか、おっさん達。俺の頭を撫でて良いのは、受付のお姉さんとおっさん達だけだ。……え? マスター? マスターに撫でてもらおうなど畏れ多い。そもそも許可などいらない。だが、あのダンディーなマスターに撫でてもらえるようなことが俺にできるのだろうか?


 新たな課題に直面したが、何とかその日の仕事を終えることができた。だが、マスターに認めてもらえるような内容ではなかったようだ。……当然だな、あの程度で認めるようではあのダンディーさを醸し出すことなど出来ないだろう。……え? 今日の報酬? そ、そんな、貰えないっす! まともに注文を取れたのが、おっさん達とチャラ男だけなのにっ! 仕事をした者に、報酬を支払うのは当然? マ、マスターぁ! 貰えないっす! 報酬を貰えるほどの仕事なんて出来てないっす! 仕事を出来ていたかどうか判断するのは雇用者の権利? 労働者に報酬を支払うのは雇用者の義務? マ、マスターぁ! こんな俺を評価してくれるんすかぁ? あ、ありがとうございます! ありがとうございますっ! 早く一人前の仕事できるようになるっす! え? それまでウチで修行しろ? マ、マスターぁ! 一生ついて行くっす! 何があっても俺だけはマスターの味方っす!


 ……え? 今日の報酬? ……お、お菓子ぐらいは、買えるんじゃないかなぁー?


おっさんA「くそっ、どうしようもないのか!」

おっさんB「俺たちのフォローだけでは限界が!」

おっさんC「何か、何か手はないのかっ!」

おっさんD「いや、大丈夫だ、あれを見ろ」

おっさんE「! 所長が動くのなら安心だ」


マリア  「あなた達、お仕事は?」

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