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女にされて異世界へ!?  作者: ゆりかもめ
34/39

砲兵は戦場の女神って言うだろ?

6:00にも投稿しています。

「お、臆するな! 相手はたったの五人だ、皆でかかれば倒せる!」


 ほう、なかなかの胆力の持ち主のようだ。声が震えているのは見逃してやろう。


「あ、ああ、その通りだ!」

「皆で力を合わせるんだ!」


 士気崩壊は間逃れたか。術師タイプが後衛に、戦士タイプが前衛にと分かれたな。この辺りはよく訓練されているのだろう。まだまだ新兵の域を出ていないがな。


 まず術師による制圧射撃、その間に戦士タイプが距離を詰めてきているか。ふん、教科書通りなのかな? 何か普通の攻め方だな、つまらん。


 十分に距離が詰まったのだろう、蛮声と共に突撃をかけてきた。だがしかし! 土煙の晴れた先からは無傷のスパルタ兵がお出迎えだ! 土煙は俺が払った。


 そもそもファランクスに正面から突撃をかますなんて愚の骨頂だな! だからといって側面からの攻撃なんて許すつもりも無いけどな!


 まあ、最初の砲撃は隊列を乱すのが目的なんだろうから正面突撃もわからんではない。目的通りに隊列が乱れていればかなり効果的な攻撃だろう。乱していればね?


 そもそもスパルタ兵の姿は幻影なので制圧効果なんて期待するだけ無駄だし、俺が防御魔術を展開しない訳がない。あの程度の魔術なんざなんて事はない。スパルタ兵より後ろの地面は開始前と変わりはない。


 さあ、接敵だ。スパルタ兵の動きに合わせて槍と盾の迎撃に模した攻撃魔術を行使する。


「うおおおおおっ!」

「「「「「……」」」」」


 ドンッ。


「ぐえ」

「ぐぼぉ」

「痛ぇっ」


「弾き返せ!」

「「「「「Woh!!!!!」」」」」


「ぎゃあっ」

「う、うわぁぁっ」

「た、助けて……」

「ひ、退け!」

「お、置いていかないでくれっ!」

「あ、足がっ」

「腕が折れたっ」

「動ける奴は動けない奴に手を貸してやれ!」

「走れる奴は自分で動け!」

「殿は引き受ける! その間に退け!」


 おお、満身創痍なのにようやるわ。まあ、追撃なんてしないけど。この模擬戦の目的は俺とあいつらの力量さを見せ付けること、その目的は達したも同然だからな。


 追撃して殲滅してもいいんだけど、それは最後だな。この後、あいつらはどう動くかな。


「救護班は治療を!」

「おいっ、しっかりしろ!」

「俺を先に診ろよ!」

「うるさい! 腕の骨折ぐらいで騒ぐな!」

「何だと!?」


 あぁあぁ、実に混沌としているなぁ。貴族子弟なんて所詮こんなもんか。


「落ち着け! まだ終わっていないんだぞ!」

「はあ!? なに言ってーー」

「よく見ろ! 向こうはまだ隊列を解いていない!」


 ほう、まだ冷静な奴がいるな。見込みのある奴も二、三人はいるようだ。敗走した奴等をまとめ直そうとする奴が二人、そして側面からの攻勢をかけようとしているのが一人。


 正面が硬い敵を崩すには側面攻撃は効果的だ。だが知っているか? 側面攻撃を成功させるには正面に敵の目を釘付けにする必要があるんだ。


 で、正面に釘付けにされるほどの攻勢はかけられているのかな? 側面攻撃に失敗した部隊の末路を知るがいい。


「ぐあぁっ」


 MP5モドキより放たれた九ミリ弾の味はどうだ? 鉛玉じゃなくて魔力玉だけどな。加えて言うならば九ミリかどうかもわからんけどな。


「ぐうっ」


 おっと足がやられていますね。そんなところで踞っていていいんですか? 追撃いきますよ?


「ぐっ、まずーー」

「動かないで!」


 シュカカッ、と俺の攻撃が弾かれる。……なかなか面白い真似をしてくれるじゃないか。そうでなくちゃな。


「動きが様になってきたじゃないか」

「し、師匠の教えの賜物です」


 防御用魔術は自分から離れれば離れるほど強度を持たせるのに魔力を必要とする。しかも走りながらあれを弾いたのなら及第点かな?


「そら、次はもう少し強くいくぞ?」

「は、早く掴まって!」

「いやしかしーー」

「もう!」


 ……男が女に肩に担がれて運ばれるのってどんな気持ちなんだろうか。……どうでもいいな。


 さあさあお次に持ち出しますはカラシニコフ自動小銃! っぽいやつ! 最も人を殺していると言われるほどに製造コピーされる傑作自動小銃だ! 威力は使用弾薬からお察し下さい! なお威力は私の匙加減です!


「ほぉらしっかり張らないと死ぬぞ?」


 ピシピシパリーンってね。ありゃりゃ、案外脆いな。まあ、走りながら人も担いで貫通特化の攻撃だからな、仕方ないか。


「うっ」


 あー、脇腹に入ったか。ありゃあもう走れんだろうな。


「痛つぅ……、大丈夫か!?」

「だ、大丈夫っ、それよりも後ろに隠れて!」


 バンバンバンと単発で三連射してみるものの、その場に留まり人も担いでいない状態では流石に防ぐか。が、抜けない場所しかない訳ではないのでしっかりと狙えば抜ける。


 一発目。ちっ、外したか。二発目。……少し内に入ったか。三発目。次は少し下か。四発目。……ビンゴ、抜いた。如何に硬度を持たせようが一枚板ではな。一ヵ所の綻びが全体へと波及するのも時間の問題だ。ムラがあるのも問題だが、ここら辺が次の課題かな?


 折角だ、たったの一ヵ所の綻びから打ち砕かれる障壁の脆さを体験してもらおう。術の崩れた箇所らへんに何発か撃ち込むだけの簡単な作業だ。さて、何発必要かな?


 ふははっ、簡単に貫通するではないか! 先程の強度が嘘のようだ! どうした、貴様の力はその程度か!? ほれ、術が砕けたぞ? パリーンってな。では、去らばだ。


 ……側面敵強襲部隊を排除。これより正面敵主力の掃討にかかる。オワリ。


 さあさあ正面敵主力諸君、終わりの始まりだ! スパルタ兵よご苦労、諸君らの武勇この目で見届けさせて貰った。さあ集えよ皇国の(つわもの)どもよ! 奴等に本物の突撃をお教えして差し上げろ!


 次に現れたのは、集団突撃に一定の評価を頂くとある亡国の一個歩兵分隊相等。事前準備砲撃は俺が担当しよう。なに、軽く陣形を乱すだけよ。ただ、未だに陣形は組めていないようだが。


「生徒諸君、突撃の正しい使い方を教えてやろう」


 ゴロゴロゴロと雷鳴が鳴り響いたが如くの音の後に降り注ぐのは衝撃波の雨霰だ。金属片と爆風の嵐に晒されないとは幸運な奴らだ。


 ヒュルルルルルー、と砲弾が落ちてくる音と映像まで再現してやった。アホ面晒して上を見ていたいるが、良いのか? 立ち尽くしていると吹き飛ばされるぞ? 文字通りな。


 炸裂音と共に中空で撒き散らされた衝撃波は、不運にも真下にいた男子生徒を吹き飛ばした。さっきから喚いてばかりで煩い奴だったからこれで少しは静かになるだろう。


 そら、伏せろ。でなければ吹き飛ぶぞ? 砲弾は二発、三発と降ってくるぞ? 頭を抑えられる恐怖の味はどうだ? 叫びたくはならないか? いったいいつまで続くのかと喚きたくなるだろう? でも残念、これはまだ前半パートなんだ。


「分隊っ! 突撃にぃ、前へっ!」

「突撃ぃっ!!」


 俺の号令に合わせて下士官兵らしき人物が復唱、ラッパ手の奏でる突撃ラッパの音を背に突撃は敢行された。まだ砲撃は降り止んではいないが、彼らが到着する前には終わる予定である。


 彼らは聞くだろう。砲撃音でイカれた耳が正常に聞こえ出すと共に聞こえる雄叫びを。彼らは悟るだろう。まだ攻撃が終わっていなかった事を。彼らは気づくだろう。もうすぐそこまで来ていることに。


「うおおおおおおっ!」

「隊長のためにぃっ!」

「クロエ隊長、万歳!」


「て、敵襲ぅっ!」

「は、反撃だっ!」

「撃てっ、撃てっ!」

「うわあああああっ!」

「たっ、倒せたっ! 倒せるぞ! ぐはぁっ」

「ぐぇっ」

「ぐふっ」

「皆さん! 適当に撃たないで! よく狙って!」


「軽機手、あの金髪縦ロールを狙え」

「きゃあっ」

「次はあの赤毛の男だ」

「ぐあっ」


 これで指揮のとれる人材は排除した。あとは無秩序な反撃を捌くだけだ。大勢は決したな。


「なんだあの旗持ち! 倒れねぇぞ!」


 ふはははははっ、旗持ちは部隊の中でもより屈強な男が任されるのだ。そう容易く倒れるわけがなかろう! あっ、倒れた。


「くそっ、くそっ、くそっ!」

「うわっ、止めてくれ!」

「は、母上ぇぇ」

「おお神よ、助けたまうぇっ」


 ……一掃したか。


「状況シラセ」

「敵の戦闘続行は認められず、オクレ」

「了解。捕虜と倒れている奴らを連れて戻れ、オワリ」


 ふぅ~、疲れた。まあ今回はなかなか全力で遊べたから、そこそこ楽しかったかな?


「あいた!?」

「やりすぎだ、馬鹿者」

生徒A「痛ぇ、痛ぇよぉ……」

生徒B「ひっく、ひっく」

生徒C「……」

生徒D「おいっ、気をしっかりと持つんだ!」

生徒E「ヒュー、ヒュー」


クロエ「……野戦病院かな?」

バルさん「早く(正気に)戻してやれ」

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