創作よりも現実の方がぶっ飛んでいることってよくあるよね
古代ギリシアの言語とか知らん
18:00にも投稿します。
どうも皆さんこんにちは、クロエです。気が付けば教員補佐なんてやらされております。まあ、今日が初日なのですが。ついカッとなってやってしまった感は否めないですが、これも身から出た錆と割り切りましょう。
事の発端は些細な認識の齟齬なのでしょうか。貴族と小市民。価値観が違って当たり前なのですが、そのズレが引き起こした悲劇と言えるでしょう。
私に契約内容外の仕事などやる気は無く、男爵家は多少の契約外労働を命じることに戸惑いが無い。まあ、私も多少の契約外の仕事をやるのは仕方はないと思いますが、貴族のそれとは規模が違います。
例えば接客としてだけ雇われたとして、店の前の掃き掃除程度なら許容出来ましょう。しかし高水圧ノズルを用いたレベルの清掃を求めるのは違うと思いませんか? 道具の貸し出し? 無ぇよ、そんなもん。
なので高水圧ノズルを持ってる業者を呼び、before&afterを撮った写真と一緒にSNSで呟いてやったみたいな? 求められた水準が私の腕を越えていたので業者を呼んだ。実費で。写真の端に店の名前が載っているだって? てへぺろ。
そしたら飛ばされた感じですね。扱いが難しいとは聞いていたが、ここまでとは思っていなかった。これはご隠居様の談。いつかやるとは思っいてた、でもここまでのことをやるとは思っていなかった。これは姉御の談である。
どうやらブラッドオーガは思っていたよりもヤバい奴だったらしい。あの森ではちょっと強い程度のレベルなんですがねぇ。要するにやり過ぎたらしい。全王国民が引くレベルで。
王城で行われた諸侯会議(!)での結果、制御出来る人間と手綱を操れる人間を近くに置いた上で飼い殺すことになったそうな。そんな話を聞かされた私がどのような行動を取るかなんて、火を見るよりも明らかだろう。だが次の一言でそれは封じられた。
「君はまだ契約を満了していないだろう」
私もかつては資本主義社会で生活していた身だ。契約の不履行の代償は身をもって知っている。例え無茶な内容でも契約を交わした以上は完遂するのが義務である。無理無茶無駄だって? ゴリ押せば行ける? どおりで自殺者が減らない訳だ!
「契約内容を言ってみたまえ」
「男爵家令嬢の護衛及び教練です」
「期限は」
「学園を卒業するまで」
「よろしい。これに明日からの君の職場と役職が書かれている。励むように」
渡された書類にはこう書かれていた。宛クロエ・マオー、発職業斡旋所トロア支部。記日をもって以下の職場、役職での勤務を命じる。王立学園戦闘科教員バルトルト・ベッケンハイム付き教員補佐及び、第三女子寮寮監バルトルト・ベッケンハイム並びに第三女子寮寮監代理マリア・アイヤゴン付き寮監補佐。
……なるほど。節々に強権が発動されているところが散見されるな。例えば第三女子寮寮監とか。ちなみに第三女子寮はエミリーの入っている寮だ。まあ、マリアさんを寮監代理に捩じ込むためのゴリ押しだろう。
え? にやけてなんかいませんよ? 寮監室でマリアさんと寝食を共に出来るだなんて喜んでいませんよ? これは職務ですからね? 公私混同は良くないなぁ~。
教員補佐は男爵令嬢の教練のために。ついでに他の貴族子弟も鍛えて欲しいなぁ。寮監補佐は男爵令嬢の護衛のために。ついでに他の貴族令嬢も護ってね。ってことだろう。ふむふむ、これなら多少の範疇と言えなくもないのか?
なんか第三女子寮の下位貴族家の寮生と他寮の上位貴族家の寮生が入れ換えられているらしいけどな。逆にエミリーの所属するクラスには将来兵を率いて前線に出ることを期待されている三男以下の子女が集め直されたらしい。……露骨過ぎない?
だがしかし、こんなことは些細なことだ。俺が一番驚いたのは、バルさんが貴族子弟だったことだ! なんとバルさんはお隣の国、帝国貴族の四男坊らしい。何で職斡所で働いているんですかねぇ。
言われてみれば、それっぽいところはちらほらと有ったような無かったような。数々のゴリ押しはバルさんあってのものですね。そんなバルさんは現在、生徒達の前で講義前のお話し中です。
え? 俺は何しているかって? どこからか入り込んできている蟻の行列を観察しています。本能寺の変の際に明智勢に包囲されたと聞いた信長が脱出を促す小姓に、奴が包囲しているのならば蟻の這い出る隙もあるまいと発言していた作品がありましたね。どうやら学院の訓練所には蟻の這い入る隙間があるらしい。
小学校か中学校で習ったが、蟻の行列を石で分断してもまた新たな経路を構築するらしい。……ふむ、実験してみよう。何、何匹かは石の下敷きになるかもしれないが、鏡面のような断面の石でもない限りまず無いだろう。
……。ふはははははっ、慌てふためいておるわ! どうした蟻よ、貴様らの力はその程度か!
「…………佐。……補佐っ。マオー補佐!」
「え、はい」
とてて、と駆け寄る私。後ろで手を組ながら上目使いで小首を傾げちゃったりしちゃう。え、あざといって? 知らんな。
「……挨拶をしたまえ」
眉間揉みながら言う様が、様になりつつあるバルさん。ため息をつくと幸せが逃げますぜ?
「はじめまして」
何はともあれ挨拶だ。ペコリと可愛らしく頭を下げる。何人が俺のことを知っているかは知らないが、反応を見る限り噂以上の事を知っているか奴は居なさそうだ。
「……先程も話したが、君たち全員とこのマオー補佐とで模擬戦をしてもらう。ルールは何でも有り、死なせさえしなければ何をしても大丈夫だ」
え、そうなん? そして、なぜこっちを見るし。ニコニコ笑顔を浮かべる俺を見る生徒諸君が困惑してますぜ?
「どうした、早くかかれ」
困惑しつつも移動する生徒たち。約一名は顔をひきつらせていたがな。俺も移動し、訓練所の真ん中を境に対峙する。本当に良いのかなんて言っているようだが、滑稽だな!
「準備は良いな? 始め!」
ふははっ、先手は貰った! 出でよ! 地球史上最強の戦士達! 軍事史上あり得ない戦いを繰り広げし強者達よ! お前達の為した偉業は不滅なり! 顕現せよ! ラケダイモニオイ!
立ち上るのは五つの光柱。地面には魔方陣のエフェクト付き。徐々に弱まる光柱の中から現れたのは古代ギリシアで勇名を馳せたスパルタ兵だ! おっと、裸にマントの姿ではないぞ? ちゃんとした重装歩兵の姿でだ。
「お前達は何者だ? スパルタ人だ!」
「「「「「Woh!!!!!」」」」」
「ラケダイモンに敗北は無い!」
「「「「「Woh!!!!!」」」」」
「勝利を我らの手に!」
「「「「「Woh!!!!!」」」」」
勝敗を決める要因とは何か? 兵数差? 兵器の質か? 否、士気の差だ! イタリア半島で勃興した国の歴史を追えばわかるだろう。どれだけ兵数差があろうが、兵器の質で優れていようが士気崩壊を起こしてしまえばそこまでだ。
「ふむ、敵はざっと三十人。二十人ほど足りないな」
「「「「「HAHAHAHAHAHA!」」」」」
スパルタ人は人口の十倍の奴隷を抱えていたからな、一人一人が奴隷十人を殺せるだけの力を求められていたのだ。まあ、一万で三十万の敵を殲滅したりしてるけど。
「見ろ、腰を抜かしている腑抜けがいるぞ? どうする」
「「「「「Woh!!!!!」」」」」
「よろしい全力だ。……ああ、心配するな学徒諸君、彼らにはある制約が掛けられている。呪いと言ってもいい。不殺の誓いだ」
「「「「「Oh……」」」」」
「だが心しろ、死ぬほど痛いぞ?」
「「「「「Woh!!!!!」」」」」
「さあ構えろ、戦いの時間だ」
「「「「「Woh!!!!!」」」」」
ガシャンと一挙動で組まれるファランクス。盾を構えられて恐怖させられる相手がどれだけいるのだろうか。盾と侮るなかれ、盾は防具にあらず相手を殴り殺すための武具なり。
さあ、この威容を前に何人の生徒が立ち向かえるかな? まあ、全部ただの幻なんだけど。
クロエ 「顕現せよ!」
バルさん「あいつは普通に戦えーー」
スパルタ「Woh!」
バルさん「……」




