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女にされて異世界へ!?  作者: ゆりかもめ
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やはりお約束は大事

あるゲームのイベントに参加していたら、投稿遅れました。

「お陰で不満分子の洗い出しは順調だ」

「それはようございました」


 今日はお嬢様ことエミリーが王都へ向けて旅立つ日だ。そのため屋敷の前に関係者が集まっている。今は各々が別れを惜しみつつも、激励の言葉をかけたりかけられたりしているところだ。


 そんな中で俺も男爵に声をかけられた。内容は主に極秘任務の進捗についてだけど。極秘任務なだけあり、ここの面子はごく限られたメンバーしかいない訳だが、かなり悪目立ちしている気がする。……いや、気にしたら負けだ。


 エミリーの男爵家参入はかなり急に決まったことらしく、反対派がそれなりにいたようだ。本当に男爵の子かどうかわからないじゃないかと発言した奴もいるらしい。この勇者がどうなったかは、言わなくてもわかると思う。


 そんなわけで反対派の炙り出しに使われたのが、俺だ。男爵が認知した人物に攻撃するのは馬鹿の所業なので、代わりに攻撃対象に選ばれたのが俺である。新参者であり、エミリーと一番親しい者である俺は格好の的だったわけだ。


 そんなわけで、エミリーの武術の師であり、一の従者である俺へ八つ当たりの如く攻撃してきた。ほとんど嫌がらせの類いのものであったが、すべて返り討ちにしてやったぜ。


 中でも若様の鍛練の相手まで務めたことのある俺に対する騎士連中の視線はかなりうざかったが、若様の護衛らとの一件以来距離を置かれたね。根性なし共が。


 で、その状況を上手く利用したのが、男爵とその一派だった。男爵は初めての可愛い娘のために、部下は忠誠心からの行動だった。特に男爵の気合いの入り様は、男爵夫人が呆れるレベルだったらしい。


 侍女長を排除したあたりでそれを聞かされたのだが、俺的には、はぁ、そうですか、って感じだったんだが、えらく感謝された。


「その調子で王都でも娘を頼む」

「勿論です」


 仕事はきっちりこなす、報酬が払われる間はな。降りかかる火の粉は払う、当然のことだ。何より弟子の世話を見るのは師匠として当たり前のことだ。


 俺の返事に満足したのか、伸ばした手を少し迷わせてから頭を撫でて行った。うむ、肩に手を置きたかったが背が小さすぎたので頭を撫でて行ったと理解しておこう。そうに違いない。


 そんな感じで一人で納得していると、後ろからふんわりと抱き締められた。この感触は、ずばりマリアさん! そうに違いない!


「体は大事にね? 無茶をしてはダメよ? 辛いことがあったら誰かに相談するのよ? あと甘いものの食べ過ぎに注意してね? それから、それから……」


 マリアさん……、心配しすぎですぜ? その気持ちは嬉しいですが、自分もう大人なんで! 少し腕の力が緩んだ隙にクルンと向き合い、抱きついて一言物申す!


「毎日お手紙書きます」

「ふふっ、毎日は多すぎるわ。一月に一回にしておきなさい? お金もかかるしね」


 そんな……、一月に一回でいいの? 本当に? 無理してない?


「そんな顔をしないで? お仕事頑張るのよ?」


 そんな泣きそうな顔で言われても、説得力が無いですぜ? でもこの雰囲気に流されている感じ、嫌いじゃない。


「はい、頑張ります」


 そういうとギュっと抱き合った。欧米文化は最高だな! 今「あんなまともな感性があったなんて……」「おいっ、聞こえたらどうするつもりだ……!」「あ、やっべ」「行くぞっ」「ああっ」ってやり取りが聞こえたが、聞かなかったことにしてやろう。なんせ気分が良いからな! だが、顔は覚えたぞ。


 そんなお涙頂戴なやり取りを終えて、遂に出発の時間になった。随行員には、侍女、料理人、下男下女、護衛だ。ひゅ~、貴族のご令嬢の旅は荷物だけじゃなくて、人も一杯だぜ!


「では、気を付けてな」

「はい、お父様」

「気を付けてね?」

「はい、お義母様」

「義娘を頼みます」

「うむ」


 え、なんで俺に頼むんだよ。暴れて以来の俺に対する信頼の厚さが半端ない。王都ってそんなにヤバい所なの?


「はい、お任せください」


 まあ、いい。降りかかる火の粉はどうせ払うんだ。頼まれたところでたいして変わらんだろう。


 一抹の不安を抱えながらも、俺たちは王都に向け出発した。町を抜け、城門をくぐり、街道を進んでいった。何事もなく順調に進んでいたが、お嬢様が尻の痛みを訴え始めた頃にそれは起こった。


「うう、お尻が痛い」

「何を軟弱なことを、まだ半日は行程が残っていますよ?」

「なんでクロエちゃんは平気なの?」

「ふふ、ふわふわクッションを敷いているからに決まっているではないですか」

「ずるい! わたしにもください!」

「まったく、我が儘ですね」

「どうして最初から渡してくれなかったんですか!」

「仰られなかったので」


 最も効率の良い学習方法とは? 答えは簡単、失敗することである。人間は失敗したことはなかなか忘れない。それが大きいものであるほど忘れ難いのだ。馬車の座席に直で座るとヤバい。


「もうっ、クロエちゃんはいっつも意地悪なんだから!」

「いえ、痛みに耐えるお嬢様の様子が愉か、可愛らしかったもので……」

「本音! 本音が溢れてるよ!」


 ふははははっ、貴様が憤慨したところで微笑ましいだけである! ん?


「あの時だって……! もうリンゴは飽きました!」


 いや、いつの話を……。って今はそれどころではない。


「しっ、静かに」

「え?」


 ちっ、面倒だな。この格好の時に出くわすとは面倒臭い。


「ちょっといいか?」

「はい」


 外から声をかけられる。基本的に随行員は馬車に乗っているが、護衛は外を歩いている。その護衛から声をかけられた。

あ、ちなみに俺たち二人の乗っている馬車の護衛はおっさんたちだ。


「嬢ちゃんは気づいているとおもうが、囲まれた」

「やっぱり、感じ的にゴブリン?」

「多分な」


 ちなみにおっさんたちはトロア(いち)の実力を誇る。男爵がわざわざ護衛のために契約したのだ。力量的には、俺が一対一でなら戦えなくはなく、ワンパーティー最初から戦うという選択肢がないぐらいのレベルだ。


「どうする迎え撃つか? 相手に有利な場所で襲われても面倒だ」

「うーん、私たちなら大丈夫だけど、護衛の兵士は大丈夫かな?」

「大丈夫じゃないか? 感ずいている感じだしな」


 へぇ、精鋭を付けてくれていたみたいだ。


「なら、大丈夫でしょう」

「そうだな。ここで殺っとくか」


 感じ的に前方と後方で足を止めて、横から殴りかかって来る感じっぽいな。前方と方側面はおっさんたちが、後方は兵士たちが相手をするだろう。ということは、もう側面から来るのは俺たちのか。


「という訳なので、迎撃しますよ」

「え? え?」


 混乱するのは仕方がない。こればっかりは実践を経験しないとどうしようもないからな。っと、止まったな。


「いいから、外に出て」

「え?」


  なるほど、森と丘陵に挟まれた所か。四方が森よりは全然マシだな。森の方面はおっさんたちが受け持ってくれているし、楽勝だな。


「あれは拾ってる?」

「ああ、もちろん」


 って、かなり拾ってるな。こんな量を持って歩いていたの? ドン引きだな……。


「じゃあ、そっちは任せた」

「うん」


 さて、殺りますか。お嬢様の実践練習だ。本番でどれだけ動けるかな? もちろん加減はするけどな。


「さて、ゴブリンの襲撃です。これから迎撃します。お嬢様の訓練の成果が示されますね」

「え!?」


 まず右手に持ちますは、おっさんたちが道中で拾った石でございます。右手に石を持ちましたら、迫り来る先生に向かって投げましょう。見事命中、頭がトマトのように弾けましたね。強化をかけて、石を握り潰さないように気を付けながら投擲しましょう。加減は厳禁。必殺を期すように。


「では、始め!」

「はわわっ」


「隊長! お嬢様が外に!」

「なに! いや、クロエ殿が一緒なら大丈夫だろう」


 早速握り潰しとるがな……。まあ、初の実戦だしな。俺は近づけないように牽制でもするか。


「お嬢様!」


 おいおい、空気読めよチェリーボーイ。射線を潰したら投げられないだろうが。


「貴様正気か! お嬢様を危険に晒すなど!」

「そこにいると危険ですよ」

「えいっ!」

「危ねぇっ!」

「やったぁ! 当たった!」

「…………」

「危ないですよ」

「ああ、そうだな……」


 エミリーの握り潰した石ころを親指で弾きながら、周りの様子を伺おう。おっさんたちは……、何の問題も無いな。兵士たちも危なげなく立ち回っているようだ。


「師匠! 石が無くなりました!」

「ご苦労、下がっていろ」


 おっと、口調が。場の空気に飲まれたか。まあいい、誰も気にしないか。さて、先生方はまだ残っているな。よろしい、残敵掃討といこうか。


「おい見ろよ、笑ってるぞ」

「十匹以上は余裕でいるぞ、一人で大丈夫なのか?」

「いや、一方的だな……」

「ああ……」


 悲しいものだ、かつての恩師を越えるということは。だが、死ね。あんなに強かった先生は今ではこんなにも弱く……。だが、慈悲はない。最初の頃はタコ殴りに合っていたのに、今では一方的だ。だが、手は抜かん。


 ふう、状況終了、先生方は敗走し始めたようだ。ダメージレポート。…………、兵士に軽傷が数名、以上!


「さあ、出発しましょう」

「あっ、クッションください!」


「……隊長、女性ってタフなんですね」

「ああ、男は一生敵わないぞ」

ケヴィン「おい」

クロエ 「はい」

ケヴィン「私の分のクッションは」

クロエ 「ありませんが」

ケヴィン「……なぜ」

クロエ 「むしろなぜ」

ケヴィン「……」

クロエ 「……」

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