この場合は、転生? 転移?
同一性障害の方を揶揄するような表現が一部ありますが、作者にその様な意図はありません。
それでも不快に感じるかもしれないと思われた方は、ここでお止めください。
目が醒めると、そこは真っ白な空間だった。純粋な白色は目に優しくない。加えて寝起きなんかは特にそうだ。この空間も目がつぶれそうなくらいに眩し……くない。
「やあ、目が醒めたかい?」
声がかけられた方に顔を向けると、そこには何者かがいた。中性的な顔に、体のラインがわからない服装、声までも中性的ときた。この性別の判断しかねる男女だが、言葉使いやイントネーションから男と判断した。イケメンは死ね。
「この状況でそこまで分析したことには恐れ入ったよ。ちなみに私に性別という概念はない。この空間では相手の中のイメージがそのまま投影される。つまり君から見て感じた私の印象は、君の中にある複数の知識や経験又は妄想の類いから、この状況で最も相応しいと無意識下に判断された姿という訳さ」
成る程、心の中まで読まれると……。つまりはそういうことか?
「理解が早くて助かるよ。夢だと取り合わない人、浮かれて話を聞かない人が多くてね。やっと適任者を引き当てる事が出来たよ。」
ふむ、神的な何かであるところのあんたが、何かしらの用件を伝えようにも話が出来る状態の奴が少くて困っていた。そこに話が出来そうな俺が現れて少し浮かれ気味、と。
「……うん、まあそうなんだけどね。そこまで読み解かなくても良いんだよ? けど、うん。浮かれ気味なのは事実かな。柄にもなく長々と話してしまっているし」
ふーん。で、用件は?
「……君、本当に淡々としているね」
こればっかりは性分でね。起きてしまったものはどうしようもない。なら受け入れる他にないと思っている。
「なら、なおさら都合がいい。実はね、私は暇を持て余しているんだ。この仕事を永遠に続けていると、刺激が欲しくなるんだ。だから定期的に人間を今まで暮らしてきたのとは違う世界に放り込んで、その様子を眺めては楽しんでいるんだ。」
おい、神。そんなことして大丈夫なのかよ。
「何の問題もないよ。私の管轄圏内においては、私がルールなのだから。世界が廻ればいい。どんな形であってもね」
……。
「君は本当に理解が早くて助かるよ。という訳で、君には今からとある世界へと旅立ってもらう。とりあえずは、あっちの空間で一般常識と生き残る術を学んでもらうよ。異なる世界で右往左往する姿はとても面白いんだけど、もうさすがに見飽きてきてね。そこで少し変わった人間を放り込んでみようと思ったのさ。あ、ちなみに君には女性になってもらうから」
はあああああ!?
「おっと、何でも受け入れるのではなかったのかい?」
ものには限度があるから! 今の今まで男として生きてきたのに、いきなり女になれとか言われたら、そりぁ驚くから! 女としての生活なんて何も知らないんだけど!
「安心していいよ。そこのあたりも含めての一般常識だから」
いや、そういう問題じゃないんだけど! 男の精神のままで女の体とか何それ!? 意味がわからん!
「さあ、君に新たな体を授けよう」
話を聞けよ!
「ははははは」
笑ってんじゃねぇよ!
「だってその方が面白いだろう?」
はあ!? いやいやいや! ……。あああああっ、やってやんよ!
「では、早速」
「ああ、やっぱちょっと待って! って、声高っ! まだ心の準ーー」
「はぁ、実に楽しみだ。今のやり取りだけでも中々に新鮮だった。ん?」
「ーー突に!? って、戻されるのも突然!」
「じゃあ、本番に行ってみようか」
「ドラマの撮影か! ……えっ? もう飛ばされんの?」
「ははははは」
「だから笑ってんじゃーー」
ある空間の中でのお話。
主人公「ーー備ができてなっ、い?」
先生 「それでは一般常識のレクチャーから」
主人公「え?」
♯
先生 「これでここでの訓練は修了です」
主人公「ありがとうございました!」
先生 「ではあちらに戻します」
主人公「えっ、そんな唐ーー」
終わり
主人公「え? これだけ? あの空間でのやり取りの描写はこれだけ?」
神 「ははははは」
主人公「いや、だから笑ってんーー」