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第二章、夢路

一、

 ――叶わないことなど、初めから分かっていた。

 それでも、願わずにはいられなかったのだ。

 君と共に歩むことを。


 風が頬を撫でる。鼻腔を擽ったリナリアの甘い香りに目を細めると、ヨフィエルは寝転がったまま、リナリアの花に手を伸ばした。

 かさ、と草を踏む音がすぐ傍から聞こえてきて、ヨフィエルはゆっくりとそちらに顔を移す。紫色の花の隙間から覗く白い肌に、勢い良く身体を起こした。

「ミーシャ!」

「こんばんは、ヨフィエル」

柔らかい表情を浮かべて立っていたのは、リナリアと同じ色の髪を持つ可憐な少女だった。

 リナリアに触れようとしていた手を、ヨフィエルはミーシャに伸ばす。

 指通りの良い髪は、掴んだ途端に指の隙間から滑り落ちてしまう。滑らかな触り心地に何度も彼女の髪に触れていると、ミーシャは擽ったそうに笑みを浮かべる。

「今日は甘えたい気分なの?」

 まるで小さな幼子に触れるかのように頭を撫でられて、ヨフィエルは顔を顰めた。

 答える代わりに、彼女の細い腰を引き寄せると、ミーシャは少しだけ恥ずかしそうに頬を赤らめる。

「そうだって言ったら?」

「……甘やかしてあげる」

 くすくす、と可笑しそうに笑うミーシャに、ヨフィエルは自らも声を上げて笑うと、華奢な身体に思い切り抱き着いた。

「本来なら、俺が君を甘やかす役割なんだけれどね」

 誰に、と告げず小さく零したヨフィエルの言葉はリナリアの香りに紛れて空に舞い上がる。

 

アマネがルーシェルと共に生活をするようになって、そろそろ一ヵ月が経とうとしていた。日に日に書類仕事を覚えていく彼女に、可愛げないと思いつつも成長の速さにルーシェルは内心驚いていた。まるで、始まりの人間であるアダムとイヴが再来したかのような吸収力だ、と遠い記憶が蘇る。

 近頃、本気でイヴと彼女の名前を呼び間違えそうになることがある。それほど、彼女と始まりの女性であるイヴはよく似ていた。銀の髪に、美しい声。初めて見た時ですら、そっくりだと思ったのに、共に過ごすうちに、それはますます色濃くなったように思える。

 否、自分と過ごしているからこそ、イヴに似てきたのであろうか。口を一文字に結びながら、ルーシェルは紅色の扉を二回ノックしてから開いた。

「……アマネ」

 自分に宛がわれた部屋の窓から人間界を見下ろすのが日課となったらしい彼女の後姿に声を掛けると、アマネは銀の髪を揺らして、ルーシェルを振り返った。

「何です、明星」

 明星、という響きに、知れず頬が緩みそうになる。だが、寸でのところでそれを堪えるとルーシェルは一枚の書類をアマネに手渡した。

「これは?」

「以前から担当の村を持ちたいと言っていただろう。……明日からお前の担当する村のリストだ」

 ルーシェルの言葉にアマネは喜色の色にその頬を染めた。

 常から白い肌が淡い薔薇色を孕み、うっとりとした視線で渡された書類を眺めている。

「何か分からないことがあれば――」

 言え、と続くはずだったルーシェルの口から、ごふっと間抜けな声が漏れ出る。胸部に感じた圧迫感と鈍い痛みにルーシェルが顔を顰めると、彼の胸にタックルを決めたアマネがぐりぐりと髪が乱れるのも構わずに、額を押し付けていた。

「ありがとうございます! 私、頑張りますね!」

「……ほどほどに、励め」

「はい!」

 嬉しそうに笑うアマネの頭にポン、と掌を置くとルーシェルは、常より少しだけ軽い足取りでその場を後にした。

 

窓から人間界を見ながら、アマネは鼻唄を歌っていた。初めの頃は、ルーシェルと上手くやっていけるか不安ばかりが募っていたが、最近では随分と言葉を交わすようになったと思う。

先日、窓から飛び降りようとしたアマネをルーシェルが叱った日から、彼は何だか優しい顔をするようになった気がする。執務中は恐ろしいが、アマネの中で長兄の好感度は着実に上がっていた。

「明星ったらいつの間にこんなものを作ってくれていたのでしょうか」

 ほう、と悩ましい息を吐き出しながら、アマネが視線を落としたのは、先ほどルーシェルから渡されたばかりの書類である。

――現在、アマネには二つの仕事が宛がわれていた。一つは、以前より手伝っていたルーシェルの書類整理の補佐。ルーシェルが書いたものをイルたちと一緒に籠に入れていく単純な作業である。もう一つは、魂管理の書類を作成することだ。これは人間の生死に関わる重要なものである為、ルーシェルも最初のうちは渋っていたが、一度教えてもらっただけでミスなく作業を進めたアマネを見ると少しでも自分の仕事が減るのであれば、と僅か数日で任されてしまったほどである。

 そして明日から新たに加わるのが、切望していた「夢渡し」と呼ばれるものだ。


――夢渡し。それは下位天使たちが行う魂管理の次に重要な業務の一つであった。

人間は眠っている時に浅い眠りと深い眠りの波を交互に入れ替えている。浅い眠りに入っている際は身体は眠っていても、脳は起きておりこの際に夢を見ると言われていた。

そしてその「夢」は天使たちが管理している。

特殊な水晶を用いて人間たちの記憶から夢を形成し、彼らの健康状態と精神状態を管理するのだ。

基本的には身体に記憶された一日の体験を元に夢を形成するのだが、稀に亡くなった人と会話をしたり、数日中に起きる出来事を夢の中で偶然体験するという不思議な夢が存在する。

神から許可を得て、見せられるこの夢のことを天使たちは「夢渡し」と呼んでいた。

「夢渡し」は天使自身が直接夢の中に入り、神や亡くなった者たちからの言葉を伝える。下手をすれば、その人間の一生を左右するかもしれない言葉や映像を伝えるので、魂管理や悪魔を討伐するのと同じくらい難しく、同時に天使たちの憧れの職業の一つでもある。


「ふふっ」

 ――嬉しい。

 ぼふん、とベッドに背中からダイブしながら、アマネは笑った。

 天上の城で、神と共に暮らしていた時も毎日が楽しかった。けれど、今はもっと楽しい。知らないことを学ぶのがこんなに楽しいなんて知らなかった。誰かの役に立てるって、なんて素晴らしいんだろう。結局、その日は嬉しすぎて、書類を胸に抱いたまま眠りについた。


 翌日、目が覚めるとアマネはいの一番に自分の机へと向かった。朝餉を食べて間もなく、執務室にやってきたアマネにルーシェルは渋い顔をしたが、昨日渡した書類を心底嬉しそうに見ながら、仕事を始めた彼女を見ると何も言えなくなってしまい、はあと深い溜め息が整った唇から零れた。

「ええと……。今日夢を見せるのは、この方たちだったかしら?」

「……アマネ」

「はい?」

「手順は分かっているのだろうな」

 ルーシェルの問いに、アマネはにっこりと笑みを返してみせる。

「もちろんです! まず始めに、見せる夢の内容をこちらで確認します。その次に、上級天使――私の場合は明星に確認書類を作成してもらい、判子をもらった後、対象の人間に夢を見せ、『御言葉』を伝える、です」

 合っていますか、と目で彼女が語るのに対し、ルーシェルは肩を竦めながら頷いた。

 相変わらず、一度教えただけで呑み込みが早い。怖いものでも見るように首を振ると、ルーシェルは早速一枚の書類に判子を押した。

「試しに、というと聞こえが悪いが練習は必要だろう。天使の夢を覗かせてもらうと良い。この時間だと門番の誰かが、仮眠に入るはずだ」

「わ、分かりました」

「きちんと、許可を取って夢に入らせてもらうように」

 はーい、と間延びした声でアマネが執務室を出ていくのをルーシェルは何とも形容しがたい顔で見送った。


 練習しろ、と言われたものの、門番を任されている者たちは皆屈強な天使たちばかりだ。気軽に夢を見せてくださいと言ったところで快諾してくれるかどうか分かったものではない。

 重い空気を纏ったまま、ルーシェルの館から続く雲の階段を歩いていると、頭上から歓声が響いてきた。

「おかえりなさいませ、ヨフィエル兄様!!」

わああ、と聞こえてくる歓声の中に知った名前を聞いて、アマネの足取りは軽くなる。

「神の美」を司りし者、ヨフィエル。その名は天界の誰もが知っており、真名が表す通り、神にも劣らぬ美しき容姿の天使であった。

 早足で駆け上った先には、凱旋してきたばかりの上位天使たちが下位天使たちに迎えられている光景が広がっている。

 その先頭を歩いていた白銀の髪の天使がアマネに気付き、手を振ってくる。

「アマネちゃんじゃないの! 久しぶりね~!!」

 独特な喋り方に苦笑しながらも、アマネはゆっくりとそちらに近付いて行った。

「お久しぶりです、ヨフィエル兄様。お変わりなさそうで、何よりです」

 アマネが会釈してそう言うと、ヨフィエルが可笑しそうに笑った。

「相変わらず、お行儀がよろしいこと。ミカエル兄様の教育の賜物ね」

「……恐縮です」

 あまり褒められることに慣れていないからか、こういう時どういう反応をすればいいのか分からない。もじもじと手遊びをして、照れを誤魔化す彼女にヨフィエルが口元に弧を描く。

「それで? 今日は何か御用があって来たんじゃないの?」

「え、ああ! はい。えっと……」

 慌てたようにルーシェルから渡された書類と、夢の中を覗く際に使用する水晶を取り出せば、ヨフィエルはそれだけで全て分かったのか、にっこりと笑って頷いてみせた。

「あら、夢を見るの? 良いわよ。丁度、ゆっくり休みたいと思っていたし。むしろ見てって感じ?」

「ありがとうございます!! ヨフィエル兄様!!」

「いいのよ~。可愛い妹ちゃんの頼みだもの。お兄様何だってしてあげちゃう~」

 うりうり、と頬を摺り寄せられて、アマネは笑った。

 

早速、彼に宛がわれている仮眠室に赴くと、ヨフィエルは少しだけ眉尻を下げて言った。

「ねえ、アマネちゃん」

「何です?」

「夢って、現実になると思う?」

 まるで、人間のようなことを言うものだから、アマネは思わず返答に困った。どうして、そんなことを聞くのだろうと顔を顰めた彼女に、ヨフィエルが慌てて首を横に振る。

「あー。そのごめんね? 困らせるつもりじゃなかったのよ。ただ、ちょっと気になっただけだから」

 ほら、とヨフィエルは自らベッドに腰掛けると少しだけ困った風に笑った。

「人間の場合は眠りが浅い時に見るとされているけれど、私たちは身体を休める時に夢を見るでしょう?」

「はあ……」

「それに、人間の世界ではよく言うのよ。『夢で見た内容とまったく同じことが起こった』ってね。そりゃあ、私たちが頑張って祈祷したり、色々手を回しているからそうなるのであって……。じゃあ、私たちの見る夢はどうなのかしらって時々思うのよ」

「ど、どうなるのでしょうか?」

 二人して、首を傾げてうんうんと唸り声を上げる。それに先に堪えかねたのはヨフィエルの方だった。

 けらけらと楽しげに肩を揺らして笑う彼に、アマネの眉間に皺が寄る。

「か、からかったんですか!?」

「ち、違う違う! こんな馬鹿げた話、真剣に聞いてくれたのは貴女が初めてだったから嬉しかっただけ!」

 笑いながら、愛しげに頭を撫でられたら、何も言えなくなってしまった。ぶっすうと、ここにルーシェルが居たら鼻で笑いそうな表情を浮かべて、アマネがヨフィエルの隣に腰を下ろす。

「では、お兄様は夢がお嫌いなのですか?」

「……いいえ。むしろ好きかしらね」

「どうしてです?」

 そう問うたアマネに、ヨフィエルは悪戯っ子のような表情で微笑んだ。

「それは内緒」

「まあ、意地悪ですこと!」

 くすくす、とアマネが冗談めかして言った。

ふわり、と優しい笑みを浮かべながら、兄の手にそっと自らの手を重ねる。

「さあ横になってくださいな、ヨフィエル兄様。お身体を休めなければ」

「はいはい。せっかちさんなんだからぁ」

 ヨフィエルがアマネの手を握ったまま、寝台に身体を転がした。それを見たアマネが満足したかのように口元を綻ばせる。

「それでは、参ります」

「よろしくどうぞ~」

「――よき夢かな、よき夢かな。汝に幸多からんことを」

 ヨフィエルの手に水晶を持たせるとアマネは両手で彼の手を包みながら、そう祈った。数秒ほど待っていると、ヨフィエルの額から淡い光が発せられた。その光にゆっくりと顔を寄せ、軽く口付けると、途端に辺りを眩い光が覆い、視界が真っ白になってしまう。

 瞼の裏で光が僅かに弱まったのを感じ取ると、アマネはゆっくりと目を開けた。

 眩しい光の所為でまだ視界がはっきりしていなかったが、何度か瞬きを繰り返していると辺り一面真っ暗な闇の中に立っているのが分かった。次いで、ふわり、と芳しい香りが鼻をつき、温かい風に頬を撫でられたかと思うと、色鮮やかな花畑の中心に移動していた。


(ここがヨフィエル兄様の夢の中……)

 

 美しい、と呆けて突っ立っていると、数メートル先に人影が見えた。その人はこちらに気が付くと大きく手を振って、嬉しそうに駆けてくる。


「――ヨフィエル!」


 愛しげに兄の名前を呼んだのは、薄紫の髪に笑顔が良く似合う可愛らしい女性だった。花冠を作っていたのだろうか、手にはシロツメクサとリナリアの花々が握られていて、芳しい香りがここまで漂ってくる。

「ミーシャ!」

 アマネのすぐ脇をヨフィエルが嬉しそうに走って行った。

 少女の身体を抱き上げると、ヨフィエルはくるくると花畑の上を翼を広げて舞った。

「もうすぐ会える?」

 少女がか細い声でそう言えば、ヨフィエルは困ったような顔をして笑った。

「ミーシャ、『俺』は……」

「嘘つき。迎えに来るって、そう言ったのは貴方じゃない」

 泣き出してしまった少女を見てもヨフィエルは困ったように笑うだけで、何も言わなかった。見ているこっちが、ハラハラするとアマネが思ったのも束の間。二人が浮いたままの空が音を立てて崩れ始めてしまった。

「……ミーシャ」

「ああ、また行ってしまうのね」

「すまない」

「愛してるわ、ヨフィエル」

――だからどうか、早く私を連れ去って。

パキン、と音を立てて少女の姿が消える。その光景を最後に、アマネの意識はヨフィエルの夢から浮上した。


二、

 目が覚めると、そこには先ほどと同じく真っ白な天井が広がっていた。

「……よく眠れまして?」

 寝転がったまま、未だ眠そうに眦を擦る兄に問うとヨフィエルはにっこりと笑った。

「――ええ。とても良い夢が見られたわ。ありがとう」

「こちらこそ、ご協力ありがとうございました。これで、明星に判子を頂けます」

「随分懐かしい名でルーシェル兄様を呼ぶのね」

 嬉しそうな、それでいてどこか寂し気な声でヨフィエルがそう言うのに、アマネは曖昧な笑みを零す。

「兄様、と呼ぶなと言われてしまって」

「まあ」

 ヨフィエルがけらけらと声を立てて笑う。

 やがて、彼はゆっくりと上体を起こすと、アマネの手に優しく触れた。

「良いこと、アマネちゃん。兄様はね、とっても天邪鬼なの」

「え?」

「素直じゃないのよ。だからね、その分、貴女が素直になってあげて。それだけであの人はとても嬉しいと思うから」

「わ、分かりました」

 真摯な目をしたヨフィエルに気圧されて、アマネはそう答えるのがやっとだった。

 部屋を出る際にもう一度、礼を述べると、ヨフィエルはどこか擽ったそうに笑って見せた。

 きらきらと、まるで夜空に輝く星々の如く眩しい笑顔に、アマネも笑みを零すと、仮眠室を後にする。

 だから、気付かなかったのだ。

 ヨフィエルが去り際に苦しそうに胸元の衣服を握りしめたことに。


 ヨフィエルと別れてから無事に自分が担当する村の人間たちに夢を見せる作業を終えると、アマネはふう、と息を吐き出した。

 村の数は二つと本来この業務に付く天使の半分にも満たない数なのだが、見せる人間の数に圧倒されてしまった。

 先ほどヨフィエルに見せたように、個人を相手に夢を見せていくのだが、夜が明けるまで、という時間制限があるとそう悠長に作業をしている暇はない。

 最低限の「御言葉」を伝え、次の人間に夢を見せる、という作業を繰り返していると、すっかり東の空が明るくなってしまっていた。

中継用の大きな水晶が動作を止めるのを確認して、アマネは額に滲んだ汗を拭った。

「初めてにしては上出来だな」

 ルーシェルが桃を片手に部屋の中に入ってくる。

 放り投げられた桃を受け取るとアマネは苦笑した。

「そう、でしょうか? ラムがお手本を見せてくれたのですが、彼の鮮やかな作業工程に比べるとまだまだです」

「アレと比べるな。アレは直に中級の試験を受ける身だぞ。年季が違う」

「あら、そうだったんですね。それは知りませんでした」

 くすくす、と可笑しそうに笑いながら、アマネはルーシェルから貰った桃に被りついた。一仕事終えた後に食べる桃はこれ以上ないくらいに甘くて、思わずうっとりと頬を綻ばせる。

「午前の業務は構わんから、ゆっくり休め」

「ええ!? そんなぁ……」

「そこでそんな可愛くないことを言うから、お前は半人前なんだ」

 はあ、と溜息を吐きながらルーシェルが乱暴な手付きでアマネの頭を撫で回す。

 少し痛いくらいの手付きにアマネは若干眉根を寄せながら笑った。

「じゃあ、少しだけ。仮眠させて頂きます」

「ああ」

「おやすみなさい、明星」


 起きてください、と肩を揺さぶられたのは寝入ってから差ほど時間が経っていなかった。

 ラムが額に汗を滲ませて、こちらを見ている。

「や、やっと起きられた! 大変ですアマネ様!」

「な、何事です?」

「ヨフィエル様が――」

 お倒れに、とラムの声が弱々しく告げられるのに、アマネは全身から力が抜けるのが分かった。昼間、笑顔で自分を見送ってくれた兄の顔が脳裏を過る。よろよろと寝台から降りると、覚束ない足取りでルーシェルの部屋を目指す。

「みょ、明星」

「……大丈夫だ。あれはそう簡単にくたばらん」

顔色を悪くして部屋に入ってきたアマネの後ろから遅れてやって来たラムを軽く睨むと、ルーシェルは溜息を吐き出した。

「ヨフィエル兄様は?」

「お前と別れた後、更に仮眠する為に自室に籠っていたらしいが、それきり目を覚まさないんだそうだ」

 ルーシェルは緩慢な動作で椅子から立ち上がると、背凭れに掛けていた紺色の外套を身に纏った。

「支度をしろ。天上の城に向かう」

 ばさり、と灰色の大きな翼を出しながらルーシェルが言うのに、アマネは小さく頷いて、慌てて自分の部屋へと戻る。

「ルーシェル様」

「分かっている。アレを責めるつもりはない。すまないが、留守は任せたぞ」

「御意」

 心配そうな表情でアマネの後ろ姿を見送った小さな二人の天使たちの髪を優しく撫でると、アマネの後を追うようにルーシェルも部屋を後にした。


 ヨフィエルが隊長を務める門番守護隊は天上の城の最も東に寝所を構えていた。

 朝日が昇るのを皆に知らせるために最東端に位置しており、天国の門からも一番近いことから「明けの宮」と呼ばれていた。

「……事情はミカエルから聞いている。面会は出来るか?」

「はい。一番奥のお部屋にいらっしゃいます」

 まだ下位の者たちには知られていないのか、声を潜めて言う門番にルーシェルは一瞥をくれると彼に教わった通り一番奥の部屋を目指してアマネと共に廊下を歩いた。

 ルーシェルの寝所とも、ミカエルの寝所とも違う澄んだ空気の中にある重い感覚にアマネは無意識のうちに眉間に皺を寄せる。

 常であれば、鮮やかな朱色の壁や天上の城と同じ硝子板で出来た廊下に目を奪われるのだろうが、今はそれどころではなかった。

「アマネ」

「はい」

「笑え。お前がそんな顔をしているとヨフィエルが悲しむ」

「……はいっ」

 うっすらと目の端を流れそうになった涙を拭うと、アマネは両の頬を叩いて気合いを入れた。

 その様子を見たルーシェルは僅かばかりに眉間の皺を和らげると、眼前に迫った白い大理石で造られた扉に手を掛けた。

「これは」

むわっとした嫌な空気が肌を刺す。

寝台で蹲るヨフィエルから発せられるその空気にルーシェルは思わずヨフィエルからアマネを隠すように外套で彼女を遮った。

「……『夢堕ち』か」

「明星?」

「離れていろ。お前にこの気は毒だ」

 アマネが言葉を投げかける前にルーシェルは彼女を街頭で包むと、部屋の隅へ追いやった。

 訳の分かっていないアマネを他所に、苦しそうに寝台で蹲るヨフィエルに近付くと、ルーシェルは溜息を吐き出した。

 本来であれば、ミカエルやガブリエルが来るのを待つのが得策なのだろうが、この場にいるアマネのことを思うとそう悠長なことも言っていられない。

 汗の所為で額に張り付いた白銀の髪を掻き分けてやると、そこには紫色の紋様が浮かび上がっていた。

「……やはり『あの方』の仕業か」

「え?」

「ミカエルを呼んで来い。俺は夢の中に入ってこいつを叩き起こしてくる」

「な、なら私も一緒に行きます!」

「ダメだ」

「何故です!」

 食い下がるアマネに、ルーシェルは唇を強く噛み締めて首を横に振った。

「こいつは今、夢を悪魔に侵食されている。『夢堕ち』という危険な状態だ。夢の中に入れば、悪魔は侵入者である俺やお前を狙うだろう。俺は半分悪魔のようなものだから良い。だが、お前はどうだ?」

 ルーシェルの言わんとしていることが分かって、アマネは拳を握りしめた。

「……それでも。私の所為で苦しんでいるかもしれない兄様を見るのは嫌なのです!」

「お前に何の不手際も無かったことは皆分かっている。これはこいつの心が弱っていたから引き寄せただけだ」

「ですが!」

「くどい!!」

 低い声で唸ったルーシェルにアマネの肩が戦慄いた。

 これ以上ここに居ることは許さないと存外に彼の目が語っていた。

 アマネは視界が涙で歪むのにも構わず、ふるふると弱々しく首を横に振る。

「いやです」

「アマネ!」

「私の所為でなくとも、ヨフィエル兄様と最後に言葉を交わしたのは私です。兄様の様子に気が付けなかった私にも落ち度はあります!」 

 鴇色の目が、じっとルーシェルを見つめる。涙の膜に覆われた所為で、常ならば凛とした煌きを持つ目は、今にも零れ落ちそうな頼りなさを感じさせた。

「……はあ。一体誰に似たんだ、お前は?」

「その台詞、そっくりそのままお返しいたします」

 ツン、とそっぽを向いて言うアマネに既視感を覚えてルーシェルの眉間に皺が寄る。脳裏に過ったのは幼き頃のミカエルの膨れっ面だった。喧嘩をしたときは決まってそっぽを向く癖があった弟と目の前の妹の顔が重なって、知れず眉間の皺が更に深くなる。

 こういうところばかり似るのだから、こいつらは可愛くないのだと片手で目を覆うと荒んだ心を鎮めるために一つ息を吐いて、未だ明後日の方を向く妹に小さく声を掛けた。

「アマネよ」

「何です?」

「……俺の傍から離れぬと誓えるか」

 アマネの顔が徐々に薔薇色に染まっていく。

 ルーシェルの外套を頭から被ったまま走り出すと、その逞しい胸へと勢い良く飛び込んだ。

「誓います! 明星の傍を絶対に離れません!」

「……ただし、俺に何かあったときは迷わず俺を捨て置け」

「え?」

「いいな」

 重々しい言葉の意味をアマネはこのとき理解できていなかった。だが、常にも増して鬼気迫るルーシェルの声音に、殆ど反射的に頷く。

 彼はそんなアマネの様子を見て、困ったような笑みを浮かべて口元を緩めるだけだった。

 一瞬だけ見せたその表情の意を問う前に、ルーシェルは常の険しい表情に戻ってしまい、開きかけた口をそのままに、彼の行動を見守る。

 ルーシェルは徐に瞼を閉じると、灰色の翼をゆっくりと広げた。緩慢な動作で開いた翼は所々くすんでいて、本来の色である白からはほど遠い。かつて見たことのあるミカエルやガブリエルの黄金の翼も美しかったが、汚れの中に見える「彼らしさ」にアマネは黙ったままルーシェルの翼を見つめた。

「――来い、アルプ」

 スッとルーシェルが右手の人差し指でヨフィエルを指差しながら、空中に呟く。

 すると、彼の灰色の翼がざわざわと蠢いた。

 部屋の中に流れる空気が、途端に重く冷たいものに変わる。

 息が苦しくなって、思わず手で口元を押さえながらルーシェルに目を遣れば、彼の指先からドロリとした黒い液体がヨフィエルの額に滴り落ちた。額を流れ落ちた黒い液体は瞼まで伝っていくとヨフィエルの目に染み込んだ。

「明星、何を?」

「夢を喰う悪魔を侵入させた」

 驚いて目を剥くアマネに、ルーシェルは大丈夫だとヨフィエルの髪を撫でながらに言う。

『……主』

「何か見つけたか?」

 目に染み込んだかと思っていた黒い液体が耳の穴からヌルリ、と姿を見せる。

『あの方がいらっしゃいます』

「そうか」

 ルーシェルの顔が一瞬曇りを帯びた。肩を竦めて、首を横に振ると、いつの間にか隣に立っていたアマネに視線を移す。

「アマネ」

「はい」

「先の約束、忘れるなよ」

 そう言いながら、ルーシェルはアマネの手を握った。

 ヨフィエルの耳から姿を覗かせたままのアルプに視線で合図を送る。

 握りしめた小さな手が静かに震えるのを感じながら、ルーシェルは自身を覆う暗闇に身を任せた。


三、

 背中が熱い。

 ゆっくり、と重い瞼を開けると、そこは未だ暗闇の中だった。

「明星?」

「……ここだ」

 子供のように舌足らずな声で己の名前を呼ぶアマネにルーシェルは手を伸ばす。

 闇の中に見つけた銀色の星を腕に抱いて、ルーシェルは辺りを見渡した。

「昼間に見た時と景色が違うようですが」

「恐らく悪魔の仕業だろう。――行くぞ。あちらからヨフィエルの気配がする」

「はい!」

 二人してゆっくりと立ち上がるとルーシェルとアマネは歩き始めた。

 丘一面を覆っていたはずの色鮮やかな花畑はなく、代わりに辺りを闇が支配している。

 生温い風が肌の上を撫でていくのに思わず身震いすれば、骨張った大きな手が握られるのが分かった。

「あ、あの」

「離れて困るのはお前だからな。少し我慢しろ」

 ぎゅ、と握られた掌の温度に、一人ではないのだと安心を覚えて、胸の辺りがポカポカする。

それきり黙り込んだルーシェルの後に、アマネも黙ったまま続くことにした。

 時折聞こえる断末魔のような風の音が辺りに響いて、その度にアマネはルーシェルの掌をきつく握り返した。

 どれくらい歩いたのだろうか。一向に晴れる気配のない暗闇にアマネは不安を抱いた。少し前を歩くルーシェルも表情こそ見えなかったが、少しばかり苛立ちの混じった気配を纏っていることから、彼も焦っていることが窺えた。

 むしろ進めば進むほどに風の温度が冷たく、肌を切り裂くような錯覚を覚えた。

 ふと、甘ったるい花の香りがした。

 昼間嗅いだあの花の香りだ、とアマネが思うのと同時に急に目の前が真っ白になる。

 思わず目を瞑れば、間近にルーシェルの気配がしてアマネはますます強く瞼を閉じることしか出来なくなってしまう。

「……大丈夫だ。目を開けてみろ」

 ルーシェルの声に恐る恐る瞼を開くと、そこには昼間と変わらぬ様子で丘一面を埋め尽くすリナリアとシロツメクサの花が咲いていた。

 芳しい花の香りに、うっとりと目を細めていると何故かルーシェルの掌が伸びてきて、鼻と口を纏めて覆われた。

「あまり吸い込み過ぎるな。悪魔の呼気が混じっている」

「?」

 どういう意味だとルーシェルを見上げると、彼はアマネの方を見てはいなかった。

 ただ花畑の中の一点をじっと見つめて、眉間に深い皺を刻んだ。


「ルーシェル?」


 ふわり、と風に乗って聞こえてきた小さな声に、ルーシェルの肩がぴくりと震えた。

 繋がれたままの手を痛いくらい握りしめられて、アマネは思わず声を上げそうになる。だが、険悪な雰囲気を醸し出し始めたルーシェルに寸での所で声を押し殺した。

 ルーシェルが睨んでいた花畑から銀色の髪が覗いたかと思うと、それはあっという間に距離を詰めて目の前に姿を見せた。

 色白な肌とは対照的な真っ赤なルビーのような目が爛々と嬉しそうに輝いて、またルーシェルの名前を呟く。

「懐かしい気配だと思っていたら、やっぱり貴方だったのね」

「――イヴ」

「どうしたの? そんなに怖い顔をして。せっかくの美形が台無しじゃない」

 おどけたような口調でそう言ったのは、夜空を彷彿とさせる黒のロングドレスを身に纏った女だった。にこり、と笑みを浮かべる女とは対照的に、これでもかと顔を歪めたルーシェルが彼女を睨む。

「俺の弟を返してもらおうか」

「嫌よ。……あら、そちらは? 私の記憶だと天使に「女」はいなかったように思うのだけれど」

 ひたり、と冷たい手で頬を触られて、アマネは引き攣った悲鳴を上げた。慌ててルーシェルの後ろに隠れると、女はますます楽しそうに笑ってみせる。

「随分と悪趣味ね、お父様は」

「……」

「こんな紛い物に情を注いで、楽しい?」

 長い前髪が、風に煽られて女の顔があらわになる。その顔を見て、アマネは息を飲んで固まった。

「私と同じ顔――?」

 アマネの声に女はムッと表情を顰めると、再び彼女に触れようと手を伸ばした。

 だが、寸での所でルーシェルに阻まれて、失敗に終わる。

「ヨフィエルはどこだ」

「答えないとダメ?」

「ああ」

「じゃあ、私と一緒に戻ってきてくれる?」

「……それは無理だと、お前が一番分かっているだろう」


 眼前で悲しそうに顔を歪める女にルーシェルは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

「貴女は始まりの女性で、俺は天使。そちら側には行けないと、あのとき分かったじゃないか」

「最初に私を誘ったのは貴方でしょう? なら最後まで責任を持って」

「イヴ!」

 低い怒鳴り声が辺りに響く。

 久方ぶりに腹の底から声を出した所為か、じーんと響く己の身体にルーシェルは眉間に寄せていた皺を更に深く刻んだ。

「……みょ、明星」

 背中の服を掴むアマネの手が震えている。

 それを落ち着かせようと振り向いたのがいけなかった。

 すぐ後ろから冷たい殺気を感じ取って、ルーシェルはハッとした表情で視線を戻す。

「随分とそれ(・・)にご執心なのね」

 手首に女の――イヴの冷たい手が触れる。

 つつ、と手首を伝って腕に、腕から腰に回された手に、ルーシェルはグッと奥歯を噛み締めた。触れている箇所からじわじわと侵食する得体の知れない嫌悪感に、ルーシェルは自分に抱き着いているイヴからアマネを遠ざけようと強い力で彼女を突き飛ばした。

「走れ! 夢渡しの水晶を使えばヨフィエルの場所が分かるはずだ!」

「ですが!!」

「行け!! 俺との約束を違えるな!」 


『……ただし、俺に何かあったときは迷わず俺を捨て置け』


 ヨフィエルの夢の中に入る前に言われた言葉を思い出して、アマネは唇を噛みしめた。

 引き返そうとした己の身体を叱咤して、言われたままに懐から水晶を取り出して起動させる。

「私には一度もあの名で呼ぶことを許してくれなかったくせに」

「……」

「まあいいわ。貴方さえ手に入れば何もいらないもの。行きましょう、ルーシェル」

 ――私たちの家に、帰りましょう。

 再び視界を覆った暗闇にルーシェルは、ぎり、と歯ぎしりした。

 動かなくなった腕を睨むと、自分の言いつけを守って走り出したアマネに視線を移した。

鴇色の衣を纏った背中が肩を忙しなく揺らしながら、段々と小さくなっていく。

 ただアマネとヨフィエルの無事を祈ることしか出来ない己に吐き気を覚えながら、ルーシェルは意識を手放した。


 背中に感じていたルーシェルの気配が消えた。

 代わりに現れたヨフィエルの気配に、掌の上で踊る水晶が淡い白銀の光を放ち始めた。

「……あっちね!」

 暗闇の一点に向かって光り始めた水晶に従うように、アマネはそちらに向かって只管走った。


(明星……!)


 イヴに抱き着かれた所為で苦悶の表情を浮かべたルーシェルの姿が、脳裏を掠める。

 ずきり、と痛んだ胸に気付かないままアマネは走った。

 走って、走って、息が出来なくなるのではないかと思うほど、走って。

「――アマネちゃん?」

 不意に聞こえてきた兄の声に、アマネは走っていた足を止めて辺りを見回した。暗闇の所為で視野が狭く、どこに何があるのかが上手く把握出来ないのが悔しい。

「ここよ、ここ。そのまま、光に向かって進んで」

 ヨフィエルの優しい声に従うと、そこにはぐったりとした様子で横たわる少女と血だらけになったヨフィエルがいた。

「兄様!! 大丈夫ですか!?」

「私は平気。殆どは返り血だし……。ただ、背中に傷を負わされてしまって、上手く飛べないの」

「そんな……」

「大丈夫よ。天界に戻ればすぐに治るもの」

 ヨフィエルは微笑みを浮かべると、アマネの手に握られていた夢渡しの水晶を見て、ハッとした。

「それは、ルーシェル兄様の水晶じゃない?」

「え、ええ。明星から頂いた水晶です」

「これを使えば、すぐにでも天界に戻れるわ!」

 薔薇色に頬を染めて嬉しそうに言うヨフィエルに釣られて、アマネも眦を和らげた。

「さあ、アマネちゃん。心の中で天上の城を思い浮かべてみて」

「?」

「この水晶が闇から天界までの道を作ってくれるから」

 半信半疑のまま静かに頷くと、アマネはゆっくり瞼を閉じた。

 真っ白な雲の上に建つ美しい白を脳裏に浮かべれば、掌の中で水晶が熱を持つのが分かった。ぐにゃり、と形が歪んだそれを思わず握りこむと、途端に元の冷たい温度に戻った。

 目を開いて、掌の中を見れば、小さな鍵が鈍い光を放っている。

「鍵?」

「流石、ルーシェル兄様の水晶! 一回で呼応してくれるなんてすごいわ!」

「えっと、これは?」

 キャーと喜ぶヨフィエルに尋ねると、彼は悪戯が成功した子供のような顔をして笑った。

 ヨフィエルのその顔を見て、知れずルーシェルの顔が脳裏を掠める。

 ルーシェルも極まれに、そんな笑い方をしていた。

 目元をくしゃり、と歪め、声を押し殺して笑うその表情をアマネは気に入っていた。普段は仏頂面ばかり浮かべて怖い印象を与えがちな彼だが、そういうふとした時に見せる子供のような表情がよく似合っていた。

 胸の内をチクチクと刺す得体の知れないモノに、アマネはヨフィエルの声に反応するのが少し遅れた。

「大丈夫?」

「え、ええ。ごめんなさい、ぼーっとしてしまって……」

 顔を覗き込まれるまで近付かれていたのに気が付かなった自分が情けなくて、アマネは口を一文字に結んで何でもない風に首を横に振った。

「顔色が悪いわよ」

「平気です。それより、これはどうやって使うんですか?」

 鍵を弄びながら問えば、ヨフィエルは貸して、と言って手を出した。

「開け」

 鍵を上に向けながらヨフィエルが叫んだ。すると、鍵は彼の手から飛び出し、眩い光を発して上へと向かい始める。

 鍵から溢れた光はやがて階段へと形を変え、ミーシャを抱えたヨフィエルが鍵の後を追うように階段を上り始めた。

「アマネちゃん?」

 階段に足をかけたまま動かない妹に声を掛けると、彼女は慌てたようにヨフィエルの元まで走って来る。

「す、すみません」

「いいのよ。大丈夫?」

「はい」

 ――必ず、助けに来ます。

 そう心の中で誓って、アマネは光の階段を進んだ。



お久しぶりの更新になります。

主人公たちでもここまで甘く書いていないというのに…。

おまけに長いしくどいし…。申し訳ありません…!次回はちゃんとメインのカプが登場します~!

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