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出逢いー2

「話しを始める前に一つ、お約束頂きたい事があります。」


その言葉にピクリと王の眉が動く。


「なんだ?」


「どうか、私の話しが終わるまで、私の命を奪わないでください。今からお伝えする事は、王のご意向に反する事。しかし、どうしても民の声を聞いて頂きたいのです。王城への不当な侵入、および、王への拝謁の償いはこの身で果たさせて頂く覚悟で参りました。どうか、お聞き届け下さい。」


真っ直ぐに王を見つめる女に、ロウェルは愉快そうに頬杖をつきながら不敵な笑みを返した。


「ほう?その覚悟は買ってやろう。だが、私の命を奪おうと思っている輩と容易く、その様な約束は、口約束とはいえ出来ないな。」


「私は貴方を尊敬しています。腐りきった王宮で、貴族の甘言に耳を貸し、容易き道を歩む術はいくらでもあるというのに、民の生活を第一に考えて、それらを実行に移す手腕と意思は誰もが持てるものではないと考えるからです。だからこそ、王の愚行を憂い、この命にかけてでも正して頂き、末長く我らが王の御代が続く事を願ってここにいるのです。暗殺など露ほどにも考えてはいません。」


「口ではどうとでも言える。私を讃えながら、裏では暗殺を画策する輩などいくらでもいる事もまた事実だ。」


「しかし……!」


「もう良い。約束はしないが問答無用で刀を抜く事は控えよう。」


「……!我らが王の御心のままに」


一瞬驚いた顔をした女は、下々の民にあるまじき、優雅な礼をとり、また、貴族独特の言い回しを行った。

周囲が息を呑む中、淡々と語り出した。


「税を軽くして頂きたいのです。民の生活を第一に多くの事業を行う為に、お金がかかる事は重々承知しております。しかし、重い税により餓死してしまっては元も子もないのです。もう、私達は限界です。来月の課税により、生活できない者が現れます。そうなれば、王への信頼は揺らぎます。どうかその前にお考え直し下さい。」


「幾ら納めている?」


立ち上る冷たいオーラに官吏たちは既に縮みあがっていた。

さすがの女も、気圧されながら必死に目を見て答える。


「それは王が一番ご存知のはず……。」


「幾らと聞いている。」


「幾らとは答えられません。販売許可に関わる税や土地、農産物の出荷に関わる税の増加に歯止めがかからず、パン屋を営んむ私は、小麦売りから小麦を買えなくなりました。小麦を売ると利益どころか税の方が高くつく為です。小麦売りだけではありません。多くの農家が同じ状態なのですから、養鶏場は餌の確保が難しくなり、卵の流通が滞りました。同じ理由で、牛乳とそれを原料とするバターも市場に出回りません。そのため、商いが成り立たないのです。私には小さな畑があるので飢えはしませんが、服飾業や大工などは、食べ物を確保出来ないのです。ですから、現状、幾らとは答えられません。」


女の言葉に周囲がざわめく中、一人の官吏が進み出る。


「陛下。無礼を承知で進言させていただきます。北方は私の担当にございますが、その様な税は存在しません。確かに商いを営む上での販売許可申請や土地の所有にかかわる税は存在しておりますがあくまで、手続きに関する諸費用のみ。商いが成り立たぬほどの税を徴収するように指示したことはありません。また、農作物の出荷に関しても市場が混乱するような大量の品が出回らぬように、量が多い場合にのみ徴収しておりますが、流通が滞るような事態には決してなりません。」


「私が何の目的で嘘をつくと言うのですか!」


「無論、陛下のお命を狙ってのことであろう。」


「あなたが私腹を肥やしていることが露見しないように、私に濡れ衣を着せようとでもいうのですか?」


「二人とも控えなさい。陛下の御前だ。」


鋭い指摘にハッと顔を上げた女は深く頭を垂れながら言葉を続けた。


「私を捕えるなり、殺すなりしていただいて構いませんが、一市民の戯言として片付けないで下さい。私達は、もう、生きていけません。それ程辛い状況に立たされているのです。お願いです……陛下……!」


今まで黙って聞いていたロウェルが、一つ息を吐くと



「ノーザ、お前の言い分もわかる。だが、疑惑がある以上は中央が主体となって調査させてもらう。異論はないな。」


「異論はありません。早急に身の潔白が証明されるよう、お力をお貸しいたしたく思います。」


「ハルシュフィード、ノーザと共に現状の税制について早急に報告を上げろ。各地域においてもその様な事態がないか早急に調査を進めよ。隠蔽などの不祥事があった場合には……覚悟はできておろうな?」


ニヤリと楽しげに笑うが、その瞳は獲物を狩る狼そのものであった。


「ハルシュフィード、至急フェリアスをここへ。」


「何をお考えですか?」


「この女に興味が出てきた。」


「冗談も大概にしてください。」


と大層面倒くさそうに、ため息をつくと議場を後にした。


「女、名前は何という?」


「へ?あっ、えっ、ルイナと申します。」


唐突な問いかけに女が初めて動揺を見せた事が面白かったのか、くつくつと笑いながら、


「あれだけ警戒していたくせに素直に名を名乗るとはな。そこから身元を割り出し、一族もろとも殺せるかもしれんぞ?」


「いいえ。王はやはり民の味方でした。」


あわただしく動き出す官吏たちや、持ち場のものに連絡を取るべく書状の作成の指示を出す様子を微笑みを浮かべながら見渡し、頭をもう一度下げた。


「ありがとうございました。今後どのような沙汰が下されようと、私は後悔致しません。」

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