やりすぎ注意
投稿処女作です。拙い文ですがご容赦ください
怪物の悲鳴が響く。
無数のタコの怪物が俺の周囲に群がり、槍に切り裂かれ、弾かれ、吹き飛ばされていく。
槍の間合いは1mほど。この領域に入られさえしなければ怪物の攻撃はオレに通らない。
だが、油断はできない。
怪物の名前は『リトルクラーケン』。親玉の『クラーケンマザー』に一体一体の強さでは遠く及ばないものの、恐ろしいのはその数。一度大量発生エリアに入り込んでしまうと囲まれて隙間ない重量攻撃で押し潰されてしまう。
だから、本当に一瞬でも反撃の手をやめれば死んでしまう。集中力が切れればフルボッコにされる。
だが、それがいい。
集中力が最大限に高まり、他の事が何も考えられなくなる状態。極限状態での戦闘。
こうしている限りは、何も考えなくてもいい。全てを忘れて没頭できる。
『逃げの一手ですか……情けない』
「っ!! 」
集中力が切れた。
怪物たちは同情などしない。俺の反撃の手が緩んだ直後、一斉に槍の間合いの内側に入り込み、無数の触手で俺を攻撃した。
「ゲームオーバー」
戦闘の高揚感が去り、その反動で降りかかる虚脱感に曝されながら俺はベッドから身を起こす。
「チッ、俺の世界にまで入ってきやがって……」
思わず一人で悪態を吐く。
集中力が切れたあの時、俺は過去に言われたある言葉が頭をよぎった。
その言葉は実によく俺を客観的に観察した言葉だった。
嘘偽り無く、正論で、人間的な感情も籠っていて……俺には致命的だった。
たった一言で立ち直れなくなるオレも弱すぎるのかもしれないが、『あいつ』だって……
俺が一人で思考の泥沼にはまっていると、部屋のドアが軽く二回ノックされた。
「お兄ちゃん、起きたの?」
「……」
起きてない。
「起きてたらでいいけど、ご飯置いといたから」
「……」
ほっとけばいいのに。
「……お兄ちゃん、ゲームばっかりやってると病気になるよ?」
『ダメ人間になる』の間違いじゃないのか?
「……ごめん」
俺は最近、家族とうまくいっていない。
原因はいろいろあるだろうが、一番の要因は俺が大学受験に落ちたことだろう。
そもそも、成績的には不可能ではないが危ない賭けだった。だが、公務員の父親がほぼ無理矢理有名大学への受験を受けさせ、そして失敗した。
俺の浪人が決まり、俺を自分のコネで就職させようとしていた親は手のひらを返した。
金と部屋だけは与えられた。そして、こう言われた。
『問題だけは起こすな』
つまり、両親はこう言いたかったのかもしれない。
『期待した私達が悪かった。これからは何も期待しない』
俺には妹もいたが、妹は俺より優秀だ。きっと俺なんかとは違って、二年後には現役で何の憂いも無く親の名に恥じぬ有名大学へ行くだろう。俺は浪人でもして家庭教師かつ反面教師にでもなれれば上出来だ。そう思っていた。
だが『あの日』、そんなやり直しの機会を信じた自分の甘さを知った。信じていた自分の価値はどん底まで突き落とされ、絶望の淵に追い込まれた。
人生に絶望した俺はVRゲームにのめり込んだ。
情報技術が恐るべき速度で発達して現実のものとなった、非現実の結晶。
脳内に埋め込まれたチップから脳に直接情報を送りこんで、実在しないものを認識させる技術。
仮想現実。そしてそれを応用したゲームである通称VRゲーム。
中でもネットワークを通じて同時に多人数で行うものはVRMMOとされ、今俺こと大倉文武⦅おおくらふみたけ⦆がプレイしていたのもその一つ≪GOD WARS ONLINE≫だ。
今最も人気があるオンラインゲームの一つとされ、VR技術を最大限に発揮した臨場感あふれる戦闘が売りだ。
俺は小さいころから道場に通わされていたこともあり、特に長物での試合には自信があったため、このゲームに没頭した。
このゲームの中では俺は上位プレイヤーとなれる。
俺は自分に価値を見いだせる。
だが、俺がゲームの世界で自分の価値を求めるほど、現実世界でのオレの居場所は無くなって行った。
今ではもう何日も部屋に籠っているし、妹が話しかけて来ても居留守を決め込んでいる。
もういっそのこと、あっちの世界に住みたい。
俺なんて、最初からこの世界にいなかった事にできたらどんなにいいだろう。
そう本気で思った。
だが、実際は食事やトイレの為にはどうしてもこちらの世界に戻らなければならない。
俺は遠ざかる妹の足音を確認して、十分な距離ができたと思ったタイミングで扉を静かに開いた。
いつもこうだ。いつも部屋から出るときは夜逃げでもするように家族を避けて……
「逃げの一手ですか、相変わらずですね。」
驚きに目を見開くことになった。
扉を開けると、そこには……俺の妹がいた。
初投稿なので投稿の仕方も正しくできているかわからないので、読みにくかったらすみません。