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①ミツキ

 退屈だ。


 連休が終わった途端に、手のひらを返したように厳しくなった日差しを睨みつけながら、沢村実月は思った。


 昨日何があった?朝起きて学校に行って帰って来て寝た。その前は?朝起きて学校に行って帰って来て寝た。


 じゃあその前は?


 毎日同じ日々の繰り返し。


 高校生活って、こんなにつまらないものなの?


 目をつぶっていても歩けるくらいに通い慣れた道を、重い身体を引きずるようにして進む。

 同じ制服を着た少女たちが、スマートフォンや友人を相手に、楽しそうに実月を追い抜いて行く。

 少年たち(彼らも同じ学校かどうかは分からない。だって、夏の男の制服なんてどれも一緒に見える)が、朝から大声でふざけ合っているのを、別の世界の出来事のように見つめる。


 ああ、本当につまらない。


 毎日、同じ場所に通って、知識を詰め込まれて、試験結果で区別されるだけの日々。


 ここには何もない。


 何も起こらない。


 物語の中は、あんなにも素敵なことで溢れているのに。


 不思議な事件や、心躍る駆け引き。


 特別な仲間との秘密の約束事のある世界。


 誰も私を“たったひとりの私”にしてくれない。

 いつまでたっても“その他大勢”のままだ。


 高校に入って二回目の春が来た時から、実月は毎日思っていた。


 何かが足りない。


 何かが違う、と。


 クラスの友人たちには言えない。

 小説みたいな学校生活に憧れているなんて。

 近所に住む、別の高校に通う幼馴染には、贅沢な悩みだと逆ギレされた。(ムカついたから、日頃の勉強のストレスを思いきりぶつけてやった)

 親になんてもっと言えない。といっても、実月の母親は、彼女に対して関心が薄い。実月はきょうだいが多く、母親の興味は、いつも上の方の彼らで止まっていて、実月にまで下りてこないのだ。


 誰か。


 誰か私を。


 特別な世界に連れて行ってほしい。


 もし、それが叶わないなら・・・







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