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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅳ 月夜に浮かぶ影
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sect.14 奇襲

「これは一体何を意味している?」


空飛ぶ船の上で、暗視付きの双眼鏡を覗き込みながらヴェルデがつぶやく。

彼の視線の先には、エルザーク広場で睨みあうランタベルヌ兵と、キトトブ僧兵やヌシ狩りの民など混成集団の姿があった。

そしてそのランタベルヌ兵たちの先頭に立っている人物に、ヴェルデは見覚えがあった。


「・・・あれはルゾールか?」

「えっ、なぜ彼がこんなところに?」

不意にヴェルデから発せられた、意表を突いた言葉にリグアが反応する。


「わからん。だがヌシ狩りの民とキトトブの僧兵たちがあそこで対峙しているということは、あの巨大な岩のような物体はヌシ神・・・なのか?」

ハーデルマークで孵化してからの生命力にあふれたヌシ神を見ていたヴェルデには、再び発掘した時のように動かぬ塊にもどってしまったヌシ神の姿に、疑問をいだかずにはいられなかった。


「恐らくはそうでしょうね。しかしヌシ狩りの民たちの行動は予測通りだとして、ランタベルヌ兵がどうして今ここに・・・?どうしますか、我々もあの場に向かいますか?」

ハーデルマークを崩壊させた重要人物としてランタベルヌから追われる身になってしまった彼らとしては、それはあまりリスクの低い選択肢とは思えなかったが、それ以上に優先すべき事情、優先しなければならない事情が彼らにはあった。


「いや、待て。もう少し様子を見てみよう」

ヴェルデがそう答えた直後だった。

動向を観察している視線の先で、突如地面から巨大な触手が現れて、無差別にその場にいる者を襲撃しはじめた。


「な!?なんですかアレは?」

リグアが驚いた様子で声を張り上げる。


「どう見る?インド」

ヴェルデは傍らで黙ったまま、謎の触手を見つめている男に意見を求めた。

「もう少し観察が必要ですな」

「いいだろう、慌てることはない。もう少し経過観察してから動いても、遅くはなさそうだからな」

ヴェルデは冷静に状況を見定めていた。




「下だぁー!!!!」

「えっ?」

シュカヌが大きな叫び声をあげるのと同時だった。

地面から三本の巨大な触手が一斉に伸びて、その場にいた者たちを無差別に襲い始める。


この強大な敵のウィークポイントである脱皮行為。

その弱点を狙ったシュカヌたちの作戦は、完全に出端を挫かれてしまう。

古い殻を脱ぎ捨てて、中身である本体が出てくるのは"地上の側"という固定観念に彼らは騙された。

脱皮という行為における満月と言う時期。これが月の引力に関係しているのか、月明かりに関係しているのか正確なことは彼らにも分かってはいない。

しかし準備段階ではその月明かりが必要かもしれないが、準備が終わった後でもそれが必要とはかぎらなかったのだ。

実際シュカヌの推測通り、その本体は無防備となる脱皮後に自らを守るために、事前に体の下に掘っておいた穴へむかって脱皮を完了させた。

そして本体は地中という安全地帯で身を守りながら、危害を加えてくる敵への反撃を触手を使って始めたのだった。



そして地上では、それぞれのヌメヌメとして緑色をした触手の先端には、針のような黒い突起が付随しており、それが上空から人々を突き刺すようにして攻撃してくる。

最初の犠牲者はランタベルヌ兵の方だった。

何が起こっているのか理解できないといった様子で呆然と立ち尽くす兵士たちを、巨大な触手は次々に串刺しにしていく。そして攻撃を受けた兵士たちがバタバタとその場に崩れていった。

それに対してシュカヌたちの混成軍は善処していたというべきであろう。

とっさにシュカヌが上げた警告の叫びに素早く反応し、防戦一方とはいえ被害を最小限に抑えていた。


そのランタベルヌ側との差は明白で、襲撃からわずか数分の間にランタベルヌ軍は多くの兵を失ってしまう。しかしながらそれも当然の結果といえた。

強大な敵の出現を予測して訓練を重ね、満を持した状態でこの場に立っているシュカヌたちに対して、ランタベルヌがどれほどの強さの兵を率いてきたのかは知れないが、たかだか一人の重要人物を捕らえるためにここに来たルゾールたちでは覚悟の重さがまるで違うのだ。

この状況は覚悟があれば対処できるというものでもなかったが、覚悟がなければ話にもならなかった。


実際結果としてランタベルヌ兵は状況を把握もできないままに、混乱の中でいたずらに被害だけを増やしていく。事前に偵察隊を派遣していたから、こうなるかもしれないという可能性の情報は少なからずあったはずだが、それも生かされていない。起こるべき当然の結果が起きた、ただそれだけの事だった。


そしてそういう状況で人がとる次の行動は---逃走。


ランタベルヌ兵は場を混乱させただけで、何もせずに逃げ去っていく。

「おい待て!お前たち、どこへ行く!?」

だがルゾールの叫びも空しく、戦意を失った兵たちはすでに彼の制御を離れていた。



「まったく迷惑以外の何ものでもないな。アヤツらは、いったい何がしたかったのだ?」

ニーガ・ルージが触手の攻撃を軽快にかわしながらシュカヌに漏らす。

「さあ?」

「まあしかし、これで邪魔者は消えたな。反撃に出るぞ、シュカヌ」

「うん」

シュカヌが今の状況を把握するために辺りを見渡すと、まず目に入ったのは群衆のなかで頭一つ飛び出た巨漢の破戒僧だった・・・。



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