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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅲ 失われた過去からの使者
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sect.35 不注意

レヴナは猛烈な勢いで、逃げるシャンネラを追いかけてきた。

水しぶきを交えて砕けた橋から飛散する木片。

シャンネラはスライドボードのハンドルを限界までひねりトップスピードで走行していたが、レヴナの巨体はシャンネラのすぐ背後にまで迫ってきていた。


「シャンネラ殿、急いで!こっちです!」

対岸でヌシ狩りの民が、シャンネラに向かって叫んでいるのが見える。

その傍らでは半ば放心状態になっているユマや他のメンバーたちが固唾をのんで見守っていた。

「よーっし、合流地点まで、全員全力で、逃げろー!!!」

シャンネラが大声で叫び、その声でメンバーたちが我に返り一斉に動きはじめるのだった・・・。




・・・ゴン、・・・ドゴン

遠方から届いてくる地響きに、狼犬たちがピクリと反応する。


「・・・来たのか?」

ランブーが聞き耳を立てながらモールにたずねた。

「ああ、どうやら川を越えたらしいな」

「よし、準備を!各自打ち合わせの陣形・・・」

ランブーがそう言って指示をだしかけたとき大きな音が響く。


ドーン!!


「なに!?」

あわててランブーが振り返ると、木々の間の茂みから数台のスライドボードが勢いよく飛び出してきた。そして間髪入れずにレヴナの巨体が、続いて彼らの前に現れる。

「!?」

「早い!!」


「どうだい小僧、約束通り連れてきてやったよ!」

そのレヴナの鼻先で大きく宙を舞うスライドボードから叫ぶシャンネラの姿がそこにあった。

「さあ、今度はアンタらのやり方を見せてみな!」

シャンネラがこれでもかと言わんがばかりのドヤ顔で、ランブーたちを見下ろしながら叫ぶ。


「急いで指示をランブー!」

「フッ、上等!」

動揺するモールとは対照的に、ランブーは落ち着いた様子で声を張る。

「今だ!ネットを張れ」

急なレヴナの出現に浮き足立っていたヌシ狩りの民たちだったが、それでもランブーの指示ですぐさま行動に移った。十数人いるヌシ狩りの民たちは一斉に散らばり、あちらこちらに設置されている黒い箱を操作しはじめる。

間もなく周囲に群生する巨木の間を縫うようにして、辺り一面ネットが瞬時に張り巡らされた。

勢いをつけたまま走っていたレヴナは、突如現れたネットに気づきはしたが止まることができずに体ごと突っ込んでいく。

「よし掛かった!次だ!」


グモォォォ・・・!


ランブーの掛け声と同時に、レヴナの叫び声にも似た唸り声が大きく響き、辺りに髪の毛の焼けるような焦げ臭い匂いがただよった。


「なんだ!?何をしたんだい?」

「あのネットに電気を流したんだ・・・」

シャンネラの独り言のような問いかけに、シュカヌが答える。

「導電性のネットか・・・。どこでそんな道具を」

「たぶん過去の時代のモノだと思う」

「そりゃそうだろう、今の時代にそんなものを作る技術は残ってやしないよ」

シャンネラも薄々感づいてはいたのだが、これでヌシ狩りの民も遺跡から発掘した道具を使っているということを確信した。


「第二陣、攻撃準備!」

次に電気ショックで身動きができずにいるレヴナに追い打ちをかけるように、握りこぶしほどの銃口をした短銃を構えた部隊が躍りでる。

「てーっ!」

ランブーの合図で部隊がレヴナを取り囲むようにして一斉射撃をはじめ、その銃口からカプセルのような銃弾が放出された。そしてカプセルはレヴナの体に命中するとたちまち弾け、中から緑色をした粘着性の半液体があふれでた。

その狂牛の身体を覆った液体は、みるみる白く変色していき、同時にレヴナは体の自由を奪われたように動作が重くなっていく。


「速乾性の拘束剤か?」

シャンネラが"これは驚いた"という口調でつぶやく。

「どうかしたの?」

「ヌシ狩りの民たちが使っている銃とカプセル弾は、ちょっと大きな町に行けばいくらでも手に入るからそんなに珍しいもんじゃないけど、あいつらの使った拘束剤が面白いんだよ」

「どういうこと?」

「薬品ってのは使用期限に大きな制限がつくからね、完成品ってのは店では扱いたがらないんだ。おそらく空のカプセル弾に、自分たちで調合した薬品を詰めて造っているんだろう」


シュカヌはふぅんそうなのかと思ったが、シャンネラが何を驚いているのかいまいち要領を得ない。そんなシュカヌの様子を察してかシャンネラが言葉をつなげる。

「つまりヌシ狩りの民のなかに薬師くすしか調合士がいるってことさ。アンタがどう思っているのか知らないが、今この時代では薬学の知識っていうのはすごく価値があるんだよ」

「なるほど」

ようやくシャンネラの説明で納得したシュカヌ。

「いいねぇ」

だが何か良からぬことを考えているような表情でニシシと笑うシャンネラに、不安を覚えずにいられないシュカヌだった。



拘束剤によって体の自由を奪われたレヴナは、足元に群がるヌシ狩りの民たちをギロリと血走った眼で睨み付けている。時折拘束をほどこうと試みるように、力を込めて身動きをしているが成功には至っていない。

その突き刺すような視線を受けながら狼犬にまたがったモールが、同じく狼犬上のランブーに近づいて語り掛けてくる。

「さあ、どうするランブー?」

「同じてつは踏まない。速攻で決める」

「そうだな。余裕を見せるほどの力なんて、俺たちにはないしな」

「ああ」

「じゃあ確実に仕留めるためには銃殺か?」

「いくらコイツの暴挙による犠牲者は数知れないと言っても、身動きのできない相手へ攻撃するのは心苦しい。・・・だが仕方ないだろうな」

「ねぇねぇ、どうしたの?」

動きのない二人のもとに、不安そうな顔でチクリが歩いてやってきた・・・。



「どうしたのだろう?」

レヴナの面前で固まって動かないヌシ狩りの民のリーダーたちを見てシュカヌが疑問を口にした。シャンネラも同じことを感じていたのだろう同意するようにうなずいている。

「おかしいね・・・」

「うん」

「いや、アンタの考えてる事とは違う意味でだよ・・・」

シャンネラはランブーたちの姿を遠目に見つめたまま、歯切れの悪い口調でつぶやく。


「どういうこと?」

「いやね、ワタシャ一度だけヌシ狩りの民が戦っている戦場いくさばを見たことがあるんだよ。その時に感じたヒリヒリと焼け付くような怖さっていうか、"こいつらを敵に回したら危ない"と本能に訴えかけてくるようなヤバさが、彼らからは感じないんだよ」

「・・・」

「そりゃ彼らの今使っている道具とその知識からして素人とは言わないが、何か物足りない感じが否めない」

「なんでだ・・・」

シュカヌがそう言いかけたとき突然シャンネラが大きな声を上げる。

「危ない!いったい何をやっている!?」



「ねぇねぇ、どうしたの?」

「バカ!?チクリ何をしている!」

ランブーとモールのもとに歩いて近づいてきたチクリに、二人が同時に激しく叱責するように叫ぶ。

「えっ?」


グモオォォォ・・・!


拘束剤によって動きを封じられていたレヴナが、突然大きな声をあげて暴れだす。不意を突かれたようにチクリは、その場に呆然と立ち尽くすのだった・・・。



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