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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅱ 追憶の果て
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sect.16 発覚

研究所に戻ったエンゾたちを、慌てた様子の研究員が出迎える。

「エンゾ博士!」

「なんですか騒々しい・・・」

「ちょっと見ていただきたいものが!」


研究員に連れられて入った研究室には、人間の頭くらいの大きさを持った金属が安置されていた。

金属の下にはぬめりのある液体が滴っている。

それはアリアを更迭したときに、エンゾが彼女の研究室から押収した生体金属の一種だった。


「これを見てください」

そう言いながら研究員が部屋の奥から取り出したのは、小鳥の入った鳥籠だった。

研究員は生体金属の隣に鳥籠を置くと、小走りぎみに急いで距離をとる。

「何ですか、いったい・・・」

「ちょっと見ていてください!」

あきれた様子のエンゾだったが、研究員は真剣だった。


鳥籠の中では小鳥がピピピ・・・と、さえずっている。

何の変哲もない金属の塊と鳥籠、アンバランスな構図にそれだけで違和感を覚えるが、変化は間もなく訪れた。


籠の中の小鳥が、落ち着きなくバタバタと動き始めたかと思うと、金属から細い針のようなものが伸びていき籠の中へと浸入していく。

小鳥は身の危険を感じているのか、籠の中を羽ばたきながら逃げ回っている。


「これは・・・」

「まだです、これからです!」


研究員がそう言いかけた瞬間だった。

金属から伸びた細い針が、目にも止まらぬ速さで小鳥の足を捉える。

小鳥はそれでも逃れようと羽ばたき続けるが、足に絡みついた金属はそれを許さない。


やがて小鳥に絡みついた金属は、小鳥を侵食するかのように、その小さな体を覆い始める。

数分も経つと小鳥の全身は金属に覆われて、その姿は蛇に飲み込まれたようであった。

そして小鳥が閉じ込められているのであろう膨らみは、次第に金属の中心に向かって移動を始める。

籠の柵はグニャリと曲がり、いとも容易たやすく膨らみは籠の外へと移動していく。


「捕食したというのですか?」

「私たちも最初は信じられませんでしたが、恐らく・・・」


エンゾ達が眺めているうちに、膨らみは金属の塊と一体化して、何もなかったかのようにそこには破れた鳥籠と金属の塊があるだけだった。

だが次の瞬間、金属の塊がグニャリと形を変えたかと思うと、今しがた捕食した小鳥の姿を模写するように変化していく。

「なっ・・・!」

しかしその大きさは元の金属の体積に依存するらしく、あの小鳥の姿形を写してはいるが元の小鳥よりもはるかに巨大なメタリックの鳥だった。


そして鳥はその場で羽ばたく仕草を見せるが、その体は重く宙に舞うことはなかった。しかしその場にいた多くの人間に焦りを与えるには十分だった。

「マズい、逃げるぞ!」

「大丈夫です」

そう言った研究員の言葉通り、間もなく金属の塊は再びグニャリと形を変えると、元の金属の塊に戻ってしまう。


「驚きましたね・・・」

冷静さを欠いた表情でエンゾがつぶやいたが、その目には妖しい光が宿っていた。

「アリア博士の報告では、ヒトの手でこの生体金属に遺伝子情報を植えつけたと聞いていたのですが・・・。まさか自発的に、情報を取りにいく能力を持っているとは」

エンゾは生体金属と適度の距離を保ちながら、得体の知れない物体を観察している。


「もしかすると我々は思ったよりも早く、完全な“ウツワ”を手に入れることが出来るかもしれませんよ・・・」

その場にいた誰もがエンゾの言葉を理解できずに首をかしげた。

傍らにいたメリザを除いて・・・。




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