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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅱ 追憶の果て
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sect.14 焦り


「そっちはどうだ?」

「だめです、プロテクトが固くて時間がかかりそうです」

アリアの研究室に、エンゾと数人の研究員の姿。

彼らはアリアの研究データの整理に取り掛かっていた。



アリアの更迭から一ヶ月間。

エンゾは彼直轄のプロジェクトチームを使い、オートマタと生体金属を融合した“魂の器”となる、ヒトによって造られた身体の研究を急ピッチで進めていた。

しかし、研究の進捗しんちょくはエンゾの想定以上に遅れを出しているのが現状だった。


ヒトの体を骨と肉体に分けるとすれば、骨となるオートマタの部分は完成に近づいている。だがそれは、ただ動くだけの骨格に過ぎない。ヒトとして機能するためには、肉体(五感)を付け加えなければならないのだが、肉体となる生体金属がうまくコントロールできないでいた。



「あの女、ああ見えてしたたかですね・・・」

エンゾが忌々しそうにつぶやく。

というのも、アリアによって研究の中核となるデータはプロテクトをかけられて、閲覧できないように工作されていた。エンゾの方針に反対して更迭されただけに、プロテクトの解除を求めても応じないだろうというのがエンゾの予測だった。


アリアのアシスタントだった研究員たちも、彼女への処遇に対し不満を隠そうともしないので、エンゾの思うようには動かない・・・。


(時間がないな・・・)


「苦戦しているようね」

突然声のした方に目を向けると、そこにはメリザが立っていた・・・。


「アリア博士とマザーシステムをつないで、彼女の記憶からデータやパスコードを抜き取ればいいんじゃない?」

「彼女がそんなことに協力するとは思えませんが?」

「この研究所やアナタのためには、協力しないでしょうね」

「だったら・・・」

「いるじゃない。彼女を簡単に操れる人物が」


メリザの言葉に、エンゾはふと気が付いた。

「・・・子供か」

「あの親子には気の毒だけど、大きな目的のために犠牲になってもらうしかないんじゃない?」

そう言いながらメリザは、なにか含んだような表情を見せた・・・。





・・・ハァハァハァ

研究所内の通路を、息を切らせて走る初老の男。

男は居住区の一室の前で立ち止まる。


息を整える間もなく扉に手をかけようとした瞬間、偶然にも内側から扉は開かれた。

「あら、トナム博士・・・」

扉の前に立つ初老の男を見つけて、アリアが声をかける。


「どうしたんですか?こんなところへ・・・」

「大変じゃ!」

トナムは荒い息を押さえながら言葉を発する。

「シュカヌ君が・・・」

「シュカヌがどうかしたんですか!?」


「事故で二階から落ちたらしい!」

「えっ・・・!?」

「早く医療セクションへ」

トナムはそう告げると、ガクッとその場に崩れ落ちた。



「シュカヌ・・・!」

アリアが医療セクションに駆けつけると、大きな部屋でひとりベッドに横たわるシュカヌの姿がそこにあった。

少年は口に呼吸器を取り付けられ、意識を失っている。

アリアはそんな彼に必死で呼びかけるが、反応が返ってくる気配は無かった。


「打ち所が悪く、危険な状態です」

担当医が静かに、感情の失われた抑揚の無い声で告げる。

「そんな!」

「高いところで遊んでいて、足を滑らせたようですね」

「どうしてそんな所へ・・・」

アリアは顔面を蒼白にして、力なくつぶやく。


「いずれにしても二・三日経っても意識が戻らなければ危険です。お子さんから離れず看病をしてあげてください」

「もちろんです!」

不安と混乱で情緒不安定になっているアリアは、医者の言葉に過剰すぎるほどに反応する。

「どうしてこんなことに・・・」




アリアの元にエンゾがやってきたのは、事故から一週間がすぎた頃だった。

その時になってもシュカヌの意識は戻らず、アリアは押し寄せる不安で潰れてしまいそうになっていた。

「・・・具合の方はいかがですか」

エンゾが語りかけても、アリアに反応は無い。


「いい気味だと思っているんでしょう?」

今の精神状態では会話をすることは無理だと、エンゾが判断しかけた時にアリアがぽつりと喋った・・・。



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