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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅱ 追憶の果て
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sect.8 報告



さほど広いとはいえないミーティングルーム。

そこには報告会に出席したアリア博士やエンゾ、トナムなどの研究所主要メンバーが揃っていた。


「・・・以上が、新開発の生体金属組織に、生物の遺伝子情報を組み込んだ際の実験結果というか事故の内容です」

出席メンバーを前にして、アリアが先日の出来事を報告する。


「アリア博士、あなたはどう見ますか?」

「と、いうと?」

エンゾの問いかけが実験の失敗を指しているのか、それとも今後の対応について聞いているのか分からず、アリアは逆にエンゾに問いかける。

だがエンゾから返ってきた答えは、どちらでもなかった。


「実用化できると思いますか?」

「問題点は二つです」

アリアはじっくり考えて答えた。


「明らかに植えつけたネズミとは別物の情報が混じっていました。この原因を究明することがひとつ。ふたつ目は、遺伝子情報の植え付けにより組織が変化したのにも関わらず、なぜ短時間で元に戻ってしまったのかの原因究明が不可欠です」

「その二点が解決できれば、実用化できると?」

「そのための研究であり、実験です。この課題がクリアできれば、半永久的に機能する器官を作成することも可能です。当然、拒絶反応をどう克服するかの課題は残りますが」


「ふむ・・・」

エンゾはそう言うと、なにやら考え込んでいる。

「ちょっといい?」

そういって口を挟んできたのは、オートマトンへのエネルギー供給システムを開発するメリザ博士だった。


「その実験体への、エネルギー供給はどうしているの?」

「養分を含んだ液体で培養しています」

「じゃあさ・・・。実験体のエネルギーは、その組織内に貯められたものしかないってことね?」

「そうです」

「なら短時間で元に戻ってしまったのは、ただ単にエネルギー不足なんじゃないの?」


現場を知らないヨソ者が好きなことを言ってくれると、アリアは内心歯がゆい思いを抑えながら返答する。

「それは慎重に調べてみないと・・・」

「いいわ、そのプロジェクトにアタシが一枚噛んであげる」

「え!?」

「だって面白そうじゃない?ウマくいけば、何にでも好きなものに姿を変えられる金属なんて、金の匂いもプンプンしてくるし」


だがメリザの提案に、アリアは動揺する。

女ながらに野心家の彼女に引っ掻き回され、他のセクションで潰されたプロジェクトも一つや二つではなかった。そんな彼女のあからさまな金目当ての申し出は、アリアにとって迷惑以外の何物でもなかった。


「まあ、待ってください・・・」

意外なことにアリアの心情を察してか、助け舟を出したのは一番あり得ない人物のエンゾだった。

「アリア博士、途中経過でもよろしいので、この事例の報告書をまとめておいて下さい。次回会合の時に、その内容を協議しましょう」

「はい、わかりました」

アリアにとっては面倒くさいメリザの介入を阻止できたのは喜ばしいことであったが、エンゾの提案にもなにやら嫌なものを感じずにいられなかった。

とはいえ、相対的にみればエンゾの案を受け入れるほうが、アリアにとってメリットが大きかったので素直に受け入れることにする。


エンゾは何か含んだような表情をしていたが、小さくうなずくと議題を変える。

「では次の案件ですが・・・。トナム博士、頼んでおいた例のものは?」

「フン、出来ておるわい」


「例のもの?」

隣席のアリアが、トナムに小さな声で尋ねる。

「オートマトンのサンプルじゃ・・・」


「結構です。では明日までに搬送の準備を整えておいて下さい」

「なに!?どこへ運ぶつもりじゃ?」

「これは軍からの依頼のサンプルです。明日の準備が整い次第、輸送いたします」

「ワシはそんな話、聞いておらんぞ!」

寝耳に水といった慌てぶりで、トナムがエンゾに食って掛かる。


しかしエンゾは、トナムの態度に動揺することも無く即答する。

「これは決定事項です」

「ぐっ・・・、むぅ」


「本日の議題は以上ですかね。そうそう私は午後より出かけ不在となりますので、急を要する連絡事項は午前中にお願いします」

そう言うとエンゾは報告会を一方的に終わらせる。

それを合図にしたように、一斉に席を立ち上がる参加者たち。


人気の無くなった部屋には、トナムとアリアの二人だけが残った。

「なんだか・・・」

「ん?」

言葉を選ぶように、何かを伝えようとするアリアにトナムが反応する。

「目に見えない大きな流れが、ジワジワと私たちを押し流そうとしているみたいです。抗おうにも何に向かってどこへ抗えばいいのか判らず、体力だけが奪われていく。そんな錯覚に陥ることが、時々あります」

「そうじゃな、ワシらはどこへ向かおうとしとるのか・・・。世界はどうなろうとしとるのか・・・。巨大な流れはその中心におればおるほど、周りが見えなくなる」

「そうですね・・・」


静寂に包まれた部屋の中で、二人はしばしその場に佇んだ・・・。




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