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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅱ 追憶の果て
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sect.6 静かな確執

「一体どういう事ですか?」

突如聞こえた声にアリアとトナムが振り向く。


そこには怒りを抑えたエンゾが立っていた。

「二人とも報告会に顔も出さずに、何をしているのかと思えば・・・」

「いや、これは・・・」

「どうしてもトナム博士との打ち合わせで、今は外せなかったのです」

バツが悪そうなトナムに代わり、アリアが即座に答える。


「ほう・・・」

エンゾは冷ややかな目で二人を眺めている。

「それほど大事な打ち合わせを必要とする成果があったのであれば、是非とも我々にも報告を頂きたいものですな」

冷めた口調で話すエンゾの言葉に、アリアが素早く反応する。


「いいえ、これはまだ報告をするほどの段階ではありません」

「報告会よりも、それほどの段階ではないものが大切だというのですか?」

「では研究の進捗を阻害してでも、報告のほうが大切だと?」

「ぐっ・・・、むぅ」

したたかさではアリアのほうが、エンゾよりも一枚上手のようだ。


「それよりも、どうしたのですか?わざわざそんな事を言うために、ここまで足を運ばれたわけではないでしょう?」

「そうでした。これを・・・」

そう言いながらエンゾは二部の冊子を、それぞれアリアとトナムに手渡す。


「これは・・・?」

アリアが手渡された冊子の表面に大きく書かれた、極秘事項の文字を眺めながら尋ねる。

「来週、軍部関係者がこの研究所を視察に訪れます。これはその時の案内スケジュールや注意事項です」

「・・・え!?」

エンゾの言葉に面食らうアリア。

「そんな!ここは国の直轄の施設ですよね?軍になんの関係があって、彼らがここに来るのですか?」

「この研究所に資金援助をしているのは主に国でしたが、軍部からも援助を受けているのですよ」


エンゾの言葉に衝撃を受けるアリアだったが、それ以上にある言葉に引っかかった。

「でした・・・?」

「知らないのですか?この国はクーデターにより軍の統治下に入りました。研究も大切ですが、もっと外の世界にも興味を持つ必要がありそうですね」

「な・・・!?」

「聞いていないという顔ですね。だが報告会の中では、何度か議題に上がっていますよ。あなたはさして重要ではないと感じたのか、いつも欠席でしたが」

慌ててトナムのほうに視線を投げるアリア。


トナムは眉間に皺を寄せて、静かにうなずく。

「本当じゃ・・・」

「・・・そんな」

アリアはトナムの答えに肩を落とす。

確かにアリアにも、身に憶えはあった。研究とは関係が薄いと思われる報告会には、今までも何かと理由を付けては放棄していたのは事実だ。


「でも、軍部が視察に来る理由は?」

「我々の開発したオートマトンの技術を、戦争に活用できないかという意見を受けております」

アリアのかすかな希望を嘲笑うかのように、シナリオは最悪の方向に進む。

「まあアリア博士に対応を依頼する事はあまり無いので、研究の邪魔になる事はそれほど無いとは思いますが」

「そういう問題では・・・」


「この段階に来るまでの議論をこれまで放棄しておいて、いまさら異を唱えるのはどうかと思いますが?」

エンゾの正論にアリアは反論できない。先程までエンゾを言葉でやり込めて、得意になっていた自分が恥ずかしくなってきた。


「二人にお伝えする事はそれだけです。それでは、お願いしますよ」

そう言いながら、エンゾはきびすを返し部屋を後にする。




そして数日後

エンゾのプレゼンテーションにより、軍関係者の視察は無事に執り行われた・・・。



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