隣のホストさん番外編・レイニィディ
改名しました!
「雨が降っていた。俺はもう、何か夢を追えずにいる自分に嫌気がさしてたんだ。
毎日毎日、世の中の女性の相手をし、酒を飲みまくるだけの生活。夢を追いたくて始めたホストクラブのボーイの筈がいつの間にかNo.1になり辞めるに辞めれず……もういっそ、死のうかと思ったときだった。
雨音の中、今日越して来たばかりのマンションからバイオリンが聞こえてきた。
『……』
もうその時の俺は、吸い寄せられるようにその音の聞こえる部屋へ向かったんだ。弾いてる少女を見たときはかなりビビった。俺だってバイオリンで飯を食うつもりだったからわかる。この音は、この年の子が弾けるようなものではない。俺だって弾けない、いや、弾けない方が当たり前だ。
まだ聞いていたくて、俺はそっと寝室らしき部屋へ行き腰かけた。
『糞馬鹿ホストがぁぁぁあ!』
『ぎゃぁぁぁあ!』
どうやら聞いている内に寝てしまったらしい。激しいアゴの痛みと共に怒りに震える少女の顔があった。次第に頭がハッキリしてきて、俺は思わずこう叫んでいたんだ。
『何すんの! 顔はホストの命だよ? お詫びにご飯つくりなさい!』
本当はホストなんかに誇りも無かったけど、まだなんとなく、紫唖の隣にいたくて。隣のホストさんになろうって思ったのはこの時なんだ。また、あのバイオリンの演奏が聞けそうな気がしたんだよ。
でもいくら俺が待っても、ホストクラブでバイトさせてまで紫唖と仲良くなっても、聞かせてくれないんだ。だから、思い切って聞いたんだ。日に日にやつれていく紫唖が見ていられなかった、とも言う。
気づいたら抱き締めてた。何かハズくて、すぐに話したけど、そん時にあぁ、俺は紫唖が好きなんだなぁって」
「ふぅん」
パリのカフェで、金髪のお兄さんと可愛いバイオリニストが話している。どうやら恋人同士のようだ。
少女は機嫌良く頷くと男と共に手を繋いでカフェを去っていき、その姿は人混みに紛れて分からなくなった。
番外編が読みたいとの声に答え、ショートショートと言うかなり短い形で復活いたしました! 前より描写はうまくなったかな……?
本当は改名したので、前の名前で書こうか物凄く迷いましたが、今の文章力は今の名前の力なので。
では、かなり短い形でしたが、満足いただけましたか? またちょっとずつ番外編も増やします! また会うときまで。