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創作論エッセイ

本格ファンタジーなんてジャンルは存在しない

作者: はまさん
掲載日:2026/02/11

 よく本格ファンタジーの何たるかが議論される。

 けど「本格ファンタジーとは何なのか」なんてね、誰にも定義できるわけがないのよね。

 だって、そんなジャンル世界のどこにもないから。


 あなたが本格ファンタジーと思っている古典的名作があったとする。だけどそれも、当時は下らない流行作品扱いされていたかもしれない。

 実際、幻想文学自体が黎明期から下らないジャンル扱いされていたし。


 だけど、ある作品に心打たれた人がいたとしよう。

 大勢の熱心なファンが生まれた。影響で自分も書こうと志す人も大勢現れた。

 その作品は何度も読み返され、後進の手本となった。

 すると、その作品は数十年後に名作として「本格ファンタジー」と呼ばれるようになる。


 本格ファンタジーとは、そうした人々から呼ばれる「称号」みたいなものなのだろうね。


 いや違う。本格ファンタジーとはシリアスで世界設定があって……という意見もあるだろう。

 だけど、そうした条件を満たしても、駄作で誰も読んでくれなければ「本格」になれるわけがない。


 あと発想の源流となったのが本格ファンタジーだという意見ね。これも違う。

 例えば、よく言われる『指輪物語』こそがファンタジーの源流だという説。あれ、そうでもない。

 当たり前だが、当時にいくらでも似た作品があった。例えば人工言語を使うというアイデアも、もっと昔からあった。

 じゃあ『指輪物語』の何が偉大だったか。そうしたアイデアをまとめ、洗練させ、面白い作品に仕上げたことだ。

 だから「源流=本格」ではない。大勢のファンが語り継いだから、本格になれた。


 また世界設定が重厚ならば本格だという意見に関しても違う。もともと幻想文学に「世界考証」という概念はなかった。

 まず世界の文学にリアリズム文学というジャンルがあった。これは社会を描き出すのが主眼。社会背景を詳細に描き出すことで、自分たちと違う文化圏でも読める文学が生まれた。

 それまでは同じ社会に属した、つまり身内でないと小説に何を書いているのか、あまり分からなかった。

 この時に生まれたのが、社会背景を描き出す「考証」という技法。今では皆もよく知っているアレだ。


 その一方で、現実にありそうなことを書くのが全てではない、と幻想文学が生まれた。

 けど幻想文学はリアリズム文学から「あんな嘘八百」と卑下された。社会的にも一段劣ったジャンルと見なされていた。


 そんな幻想文学だったが、実在しないものにリアリティを与えるために「考証」の技法を導入する。

 なので幻想文学で「考証」つまり、世界設定の技法を取り入れたのは途中からの話。世界設定の有無は全てではないわけだ。

 なんなら理不尽を理不尽のままに描き出した方が幻想である、という作品もあるだろうし。

 なので「本格ファンタジー=世界設定」は間違い。


 だけど、源流とか設定なんて関係なく面白いファンタジー作品があったとする。

 面白い作品に対して、読者の解像度は高くなる。行間を読み、背景の世界を想像する。

 ファンタジーの「世界設定」って、つまりはこうした面白さから来る、想像力の飛躍によるものじゃないだろうか。

 駄作の世界設定とか、どうでもいいでしょ?


 だから、時代により、人により、各々の本格ファンタジーがあるはず。

 過去は過去の、今は今の本格ファンタジー。

 本格ファンタジーとはそうした、感動の原点となった作品に与えられる「称号」だよ。他人が勝手に定義するもんじゃない。


 だから「これが私の本格ファンタジー!」と語るのは良いよね。自分の感動の歴史を語るようなものだから。

 自分の感動を、他人に否定されたり、決めつけられたりしたくない。一人一人の本格ファンタジーがあって、それが本当よ。

 思想・情報統制されたディストピアじゃないんだから。


 今は下らないとされる流行作も、十年後には古典的名作、本格ファンタジー。

 だから各々が自由に「マイ本格ファンタジー」を語れば良い。

 きっとその中から次代の本格ファンタジー作が選ばれるだろうから。

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― 新着の感想 ―
 噓八百で塗り固めるファンタジーに本格も何もないと思うのですが……。  面白ければ正義です。
源流ってなるのは神話や伝説でしょうね ギリシア神話とかアーサー王伝説とか
「本格」とか「高尚」とか言ってる人って作家の中では見たことない。ミステリで「本格を」と言っている作家さんは知ってるけど、それはミステリ界隈での了解があるんだろう。 ファンタジー分野で言われる「本格」…
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