表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: カジタニ ユウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/8

出陣8

ご都合主義の転生ものじゃなくって、なるべく納得できる範囲で格好のいいヒロイン・ヒーローを描きたいと思います。

チョット歌舞伎じみたセリフ回しの格好つけの多い物語です。

私はお姉様の寮室の扉を2回の後に2回のノックする。

「お姉様、ヒルダです。おはようございます」


「いいわよ。開けてあげて」

侍女にお姉様が命じる。


「おはよう、今、朝食中なの。ヒルダはもう終わった?」

今から出撃なのに何時もと変わらないお姉様。


「はい、済ませて来ました。ミル、お茶だけ頂けますか」

侍女にお願いしてお姉様の対面にすわる。


「集合まであまり時間が無いから食事をしながらで失礼するわね。・・・昨日の内に来るかと思ってたんだけど、エリーは何の用だったの?」

一瞬お茶を飲むのが止まった私に小首をかしげてクラッカーに手を伸ばす。


「ウノシルディスの食糧は、2か月が限界だそうですので、その手当の方法についてです」

昨日の話を全部する訳に行かない私は、事前に考えていたセリフを言う。


「そこに気づくとは流石、エリーね。それともブッルック様の報告かしら。私の方にはまだ来ていないけど。・・・それで2名で随分長い間密談していた様だけど、何か良い知恵は出たの?」

クラッカーにたっぷりとクリームを載せながら言う。


「大公国から援助するしか無いかと」

(お姉様がさっきから私を見てない。気配だけで私を探っている気がする)


「そう。・・・そうね、とにかくこの戦いに勝たない事には先の事を考えても仕方ないわ。何しろ100倍の敵に挑むのだから、勝たない事には、投資を呼び込もうにもリスクが多すぎて誰も乗ってこないわね」


「領民の命を救う私達の決死の戦いが投資の呼び込みの宣伝ですか!・・・申し訳ございません。声を荒げてしまいました」

思わず大声を上げてしまい恐縮する。


「そうね、今は許します。ですが今後、部下の前では慎むように。特に失敗を誰かに押し付ける様な事はダメよ」

初めて姉が私を見て微笑む。


「申し訳ございません。今後、注意致します」

背筋からたら〜りと冷や汗が流れる。

(昨日の事、何処までバレてる?それともハッタリ?)


この後は、特に話をする事も無く、ひたすら食事を進めるお姉様。

(本当にいつもと同じ、昨日「命を預けて」とみんなを熱狂させた人と思えない。みんな決死の覚悟でお姉様について行く決心をしたのですよ。遺書や遺品を万一の時には届けて欲しいと事務局に来た子も何人もいますのに)


「さて時間ね、行きましょうか。戦友を待たせる訳にはいかないわ」

私の疑問など歯牙にもかけず、お姉様は立ち上がる。

(お姉様、いま戦友と、、、まだ出陣もしていないのに、お姉様にはもうあの子達は、互いの命を預けあった戦友なのですね)


「はい、お姉様」

私も立ち上がる。


「ミル、エマありがとう。、、、ひょっとしたらウノシルディスに来てもらう事に成るかもしれないけど、その時はお願い出来るかしら?」

愛用のサーベルの装着を侍女のミルとエマに手伝って貰い言う。


「「もちろん、喜んで。シルディ様」」

今の一言に侍女の二人が薄っすらと涙を浮かべて答える。

(勝算について何も知らないこの子達には、絶望的な戦いに覚悟を決めた、お姉様の最後のお言葉に聞こえたのでしょうね)


「ありがとう。それまで元気でいてね」


部屋を出て行こうとするお姉様


「ウノシルディスを、クロスロードをお守り下さい」

「ご武運をお祈り致します」

侍女二人が直角に腰を曲げて礼をして見送る。


お姉様は振り返る事なく廊下を進む。


「最後に、お声掛けしなくても宜しかったのですか?」


「又、再会するから良いのよ」

廊下にカツカツと響く力強い足音。


「そうですね」

やるべき事をしたら迷いなく進む、これでこそお姉様。



寮棟の玄関に着く。

玄関から門まで左右に分かれ整然と並ぶ学園を支える者達。


「シルディア殿下、万歳」


「シルディア殿下、万歳」


「シルディア殿下、万歳」

お姉様がポーチの端まで進まれたタイミングに合わせて行われる万歳三唱。


「お姉様、お姉様の大公国旗を掲げますか?」


「そうねヒルダ、門を出るまでそうしてくれる」


お姉様は堂々と右手を上げ、左右を見渡しその声に応える。

そして、右手を下すと今度は、真っ直ぐに前だけを見て進みだす。

私はお姉様の横をお姉様の横顔だけを見て続く。


「ご武運を」

「ウノシルディスをお守り下さい」

そういう歓声に混じって


「捧げ剣」

揃った動きで学園の警備隊が剣を捧げる。

「お留守の間は、我々が学園を守ります」


「庭の事は我らにお任せください」

庭師達が頭を下げる。


それぞれの役割の誓いを述べる者もいる。


周りから様々な声が掛けられるが、お姉様は前だけを見て進まれる。




「ヒルダ、コレが民の声、民の期待よ」

「はい、お姉様」


「私達貴族は、民の期待に応える義務がある。例えそれが死を賭したものであっても」

「はい、お姉様」


「もしそれが重荷に感じたなら、貴族を辞めて平民に成りなさい。平民であれば、他人の為に戦う事も、人を殺す必要も無い。人としては平和に暮らせるわ」

(お姉様は本来戦う必要の無いあの子達を戦場に駆り出す事になった事をやはり後悔されているのかしら、それなら、その後悔からお助けするのは私の役目)


「お姉様、私を含めてあの子達は、民の平和を守る役目を自分達が果たせる事を誇りに思っております」

お姉様は、一瞬天を仰ぎ、私を見て微笑まれた。


「流石、わが妹。私たちの義務を全力で果たしましょう」

一陣の風が私の持つ公国旗をいっそう大きくはためかせた。


「はい、お姉様」

(はためく旗を見て私は思う。

旗と言うのは布に絵が描いてあるだけなのに、どうして皆の心を捉えるのでしょう。

風は風、ただの自然現象。

なのに、何かの意志をそこに感じてしまうのは見ている者の勝手な思いこみなのでしょう。

ですが、戦いに赴く私達には、意志の力を感じられるだけで十分)


お姉様は寮の門で振り返り、歓声が鳴り止むのを待つ。


「クロスロードは我らが守る。

皆がこれ迄尽くしてくれた恩義に感謝する。

見送り大義であった」


お姉様は公然と胸を張って礼を述べられる。

私はお姉様の気持ちを代弁して頭を下げる。


「クロスロード大公国、万歳!」


「クロスロード女学園、万歳!」


「シルディア殿下、万歳」


再び湧き起こる万歳三唱。


お姉様は歓声には一切応えず、再び前を向いて歩き出された。


私も旗を巻き収め、再びお姉の後に続く。


規則正しいタイミングでピンと背筋を伸ばし、アゴを少し引いて進むお姉様。

お姉様の黒髪が風に流される。

その流される髪に私は、先ほど巻収めた風にたなびく公国旗以上の強い意思を感じた。


国語のテストで「この時主人公は何を考えているのか」という問題が大嫌いでした。

大事な事ならチャント書いておけよとか、書いていないのなら十人十色の解釈で良いじゃんと思っていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ