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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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進撃5

メインテーマは、格好のいい男前なお嬢様の物語。

火曜日と金曜日に更新を行います。


出発してから6時間、休息の時間になったので、全軍の停止と休息を命じる。

私はフローラを伴い、本軍から2番目に進軍するカチア隊まで少し馬を駆けさせる。

「カチア、部隊の体調はどんな様子」


「私も含めて、昨晩は皆良く休めたと思います」

カチアはまだ、昨日の夜に私とフローラが仕出かしたバカ騒ぎを知らないようだ。


「あと4時間で40キロ進んで、今日はブルマイスターまで40キロの所で宿営する予定ですが、どう思いますか」


「私達はあと40キロ位は馬も含めて問題ありません。ヒルダ様の懸念はブルマイスタからの距離の方ですね」

カチアは元気に敬礼をしながら通過してゆく自分の騎馬隊を見ながら言う。


「普通ならば20日も帯陣していれば、森の中とは言え40キロは哨戒範囲です。

しかし、明日の作戦の戦闘を考えるとこれ以上遠いのはちょっと難しい」

私は地図を広げてブルマイスター要塞と今日の宿営予定地を指し示す。


「ヒルダ様、私達の常識ではそうですが、敵は動員兵です。

勤勉では有りません。

ですので、敵の哨戒線はブルマイスターから見えるまで。

後は、ウノシルディスに向けての街道沿いでしょうか。

クリスはどう考える?」

カチアが示した哨戒ラインには森の中の私達の今日の宿営予定地は当然、含まれていない。


「そうですね、敵は略奪目的の農民です。

しかし、攻城軍に組み込まれ不満が溜まっているはず。

そして、ブルマイスターの周りに略奪を行える様な村は存在しません。

少しでも略奪を行うとすればウノシルディス方面の街道沿いしかありません。

騎馬での踏破が困難な森の方はさして警戒しないでしょう。

私もカチア隊長の哨戒ラインでアタリだと思います」

カチアもクリスもブルマイスター出身であるから、ブルマイスター近辺については明るい。


「ブルマイスターの周り20キロは牧草地帯でそれを抜けると、私達が今行軍している森と言う事で合っている?」

フローラが地図を見ながら自分の知識を整理する。


「はい、その通りです」

カチアとクリスが頷く。


「すると、敵のやる気の無さを考慮すると、森の境界が監視できる()()に哨戒の拠点を置き、森までを哨戒線としているのではないでしょうか」

フローラが地図を指さし敵の配置を想定する。


「フローラ様の想定に同意します・・・・」

相変わらず声は小さいが、以前よりも積極的に発言する様になったカチア。


「森の切れ目で迎撃する気が無ければ・・・、森の中にまで哨戒線を伸ばす事はないか・・・」

私の答えにフローラを除く()()が頷く。


「それでは、今日も昨日と同じ通常態勢で宿営しましょう。過度に警戒して兵の疲労を招きたくない」

私は3人を見回して、何か違和感を感じる。


「かしこまりました」

即答するクリス。

しかし、少し考えこみ出したカチア、そのカチアを見守る感じのフローラ。


「ヒルダ様、今までの話と矛盾するのですが、宿営地の前方2キロに警戒線を張るべきと思います」

漸く答えが出たカチア。


「確かに矛盾するわね。何か私達が見落としていた事に気づいたの」

今までの議論にちゃぶ台返しをする様な意見をカチアがするのは珍しい。


「はい。フローラ様がおっしゃった「()()」という言葉に引掛かかりました。

地図では良く分かりませんが、森からブルマイスター要塞までは緩やかな上りになっています。

夜であれば森の近くの監視所から、20キロしか離れていない森の中の明かりに当然気付きます。

気づいたからと言って直ぐに夜襲が出来る程に練度は高くないと考えますが、偵察隊位は出すでしょう。

多くても100人程度の部隊だとは思いますが、不意をつかれると厄介です」

ちゃぶ台返しでは無かった。

キチンと今までの議論を踏まえた上での推論であった。

カチアの意見に頷くフローラ。

(成程、フローラは最初から気付いていたから、私達を教育したわけね)


「・・・・成程、理解った。私達はちょっと敵を蛮族、戦意なしと(あなどって)っていたらしい。

考えて見れば、敵軍は六千の兵で千5百のブルマイスター軍を封じ込めてはいたのだから、それほど無能で無いのかもしれない。

カチアの提案通り、宿営地の前方2キロに警戒線を張る様にしよう。

正し警戒態勢は通常のままで。

過度な警戒はやはり兵の消耗を招く」

ここは、カチアの功績と言う事にする。

ちらりとフローラを見ると、お茶目な顔でウィンクされた。

(まだまだ敵わないな~~)


「「了解致しました」」

敬礼で応えるカチアとクリス。


「明日にはブルマイスターは解放される。

二人が興奮するのは解るが、今晩は少しでも休め」

フローラが肉親や知人がブルマイスター要塞に立てこもっている二人を(ねぎら)う。

フローラ自身がウノシルディス解放戦の前の晩がそうだったのだろう。

(解放戦の時はまだ、アーレイやロングの真価は不明だったし、私達も初陣でした。図太いお姉様はともかく、フローラ恐らく全く不安で眠れなかったに違いない)


「「はい、ありがとうございます。フローラ様」」

カチアとクリスもフローラの配慮に素直に感謝を述べる。


「我らの敵は時間だけだ。

間に合いさえ出来れば敵を蹴散らす事に問題ない。

われらは、どこの国の騎士団でも不可能な進軍速度でここまで来れた。

この幸運は明日も続く。

続かなければ『()()()が幸運の女神を縛り上げて』でも続けさせる。

安心していい」


「そうですね」

カチアの返事は短かったが、微笑むだけの余裕は取り戻せた様だった。


「ヒルダ様。今のヒルダ様のお言葉の『女神を縛り上げる』の所は、シルディ様にはご報告致しませんのでご安心下さい」

今度こそにっこり微笑むカチア、横を向くフローラとクリス。


「ありがとう、私の平和の為に是非そう願うわ。フローラとクリス、貴方達もよ!」

私は横を向いて笑いを抑えているフローラとクリスを『ジロリ』と睨む。


「「イエス! ヒルダ!」」

嘘くさい肯定の返事をするフローラとクリスであった。

ブルマイスター要塞健在なり この情報によりウノシルディス解放の余韻に浸る間もなく援軍を組織する事となります。 6万の残敵が健在な中、戦術的には不味い作戦が開始されます。

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