疾風の如く3
魔法とか転生とか全くない物語です。
メインテーマは、格好のいい男前なお嬢様の物語。
火曜日と金曜日に更新を行います。
「バルタザール殿、ウノシルディスには動かせる騎兵は何人位いますか」
私はバルタザールに向き合って尋ねた。
「およそ2000騎と言う所です。
当家の直参が500騎、これは精兵です。
残りの1500騎は各貴族の手勢で男爵家に付き、10騎から50騎という所です。
問題は、指揮官である男爵に実戦経験のある者が殆ど居ないと事ですかな」
騎兵2000騎と言えば相当な戦力であるが、全盛期のウノシルディスの2万騎からすれば壊滅状態に近い。
敗戦から2年を経てもそこまでしか回復しなかった事に私は改めて愕然とした。
「残る敵の数はおおよそ6万、ですが数程の戦力は有りません。
私達が追撃を掛けて数を減らし、残敵の掃討を行うのであれば行けると考えます。
ただこの作戦だとブルマイスター要塞まで最短でも十日、おそらく二十日は要すると考えます」
フローラは残された兵での作戦を計算する。
「それに、その掃討作戦を実行した場合、敵の撤退速度が速まり、その影響でブルマイスター要塞が数の力で押し潰される可能性もあるのではないでしょうか」
ヒルダはより大きく戦局全体を見て意見を述べる。
「ヒルダの予想は正しいと思う。
その上で可能な作戦だが、こういう作戦はどうだろうか」
初めてブルックが作戦内容について意見を述べる。
初めてブルックに名前を呼び捨てにされたヒルダは少し顔を赤らめる。
ヒルダの事を呼び捨てにした事はヒルダと私以外は気が付いていない様だがこれはブルックがヒルダを認め始めた証なのだろう。
(ブルックは素敵な男性だから判るけどコレばかりはヒルダにも譲れないわよ)
「援軍として送る軍を二手に分ける。本軍は計画通りに6万の残敵を掃討しつつブルマイスター要塞を目指す。
別働隊は残敵を迂回して一気にブルマイスター要塞の救援に行う」
「ブルック、急ぐと言ってもそれなりの兵数じゃないとブルマイスター要塞の救援は出来ないわよ」
私は一同を代表してブルックに疑問をぶつける。
「ブルマイスターを取り囲んでいる敵の数は6000ほど。
この数ならば、弓騎兵200騎に直衛の騎士をベルン隊の150騎にバルタザール殿の500騎を合わせれば粉砕出来る」
ブルックは一同を見回す。
「可能ね」
ヒルダは大切な戦友の命が掛かった戦であっても冷静な判断が出来る姉を凄いと思う。
「であるならば、ブルマイスター要塞に直接向かうのはカチア隊、ベルン隊、バルタザール隊だけでいい」
エリーは、打てば響く兄とシルディ様の関係が羨ましいと思った。
「ウノシルディスから一旦西に向かい、リール川添いに南下する。
このルートなら、敵の撤退を避て・・・3日でいけるかしら?」
ヒルダはブルックにだけは素直に質問をする姉の表情が可愛いと思った。
「馬車が通る事は出来ないが、騎兵だけなら3日で十分。糧食も用意してある」
エリーはシルディ様に頼もしい言葉で答える兄様が誇らしい。
「ブルックの作戦を採用します。
ブルマイスター要塞には私とフローラ、カチアとベルンハルトが向かいます」
私はこの時いつもなら行う一同への確認をせずに決めてしまった。
やはり、救援を急ぐばかりに余裕が無くなっていたらしい。
「かしこまりました」
フローラは即座に返答する。
「フローラ」
バルタザールがフローラに語り掛ける。
「はい、御爺様」
フローラがバルタザールの方を向いて姿勢を正す。
「クルト・フォン・ブルマイスターは我が家にとっても大切な武人だ。
我が家の直属の騎兵500騎を任せる」
「ありがとうございます。お爺様」
「バルタザール殿、フローラは全体の指揮を執りますので、騎士団の直接の指揮はベルハルトが行ないますが、問題ありませんか」
指揮系統の問題を明らかにする為に私はバルタザールに確認を取る。
「ベルンハルトとは、ブルマイスター伯爵家の騎士団長のベルンハルト男爵の事ですか」
「ええそうです。ちなみに私が、アーダルベルト・フォン・ブルマイスター伯爵殿下の証人の上で男爵から子爵に陞爵させました」
「それは良い事をされました。彼ならば、当家の騎士とも親しく指揮官としても確かな男だ、問題は無い」
「分かりました。ウノシルデス騎士団をお借り致します」
「お姉様、ちょっとお待ち下さい」
ここでヒルダが意見を挟んで来た。
「何、ヒルダ?」
私は緊張した声に横に座るヒルダを見る。
ブルマイスター要塞健在なり
この情報によりウノシルディス解放の余韻に浸る間もなく援軍を組織する事となります。
6万の残敵が健在な中、戦術的には不味い作戦が開始されます。




