疾風の如く1
魔法とか転生とか全くない物語です。
メインテーマは、格好のいい男前なお嬢様の物語。
春休みなので、出来上がったら更新致します。
浴槽の縁に人魚の様に腰掛けるシルディ。
そのシルディの太腿を枕に寝るヒルダ。
そしてシルディの両膝に頭を擦り付けるフローラとエリー。
都合4万人程を虐殺した女神達の芸術、あるいは悪魔の美学のカオス。
「あのネ、貴方達いい加減にこっちに戻って来なさい。誰かに見られたらどうするの」
「問題ありません。目撃した瞬間、その者の心臓は止まっています」
物騒な事を言うエリー
「そして幸せな気持ちのまま、天に召されます」
より過激なフローラ。
「私達は勇者を天に誘うヴァルキューレの魔女です」
私の精神にトドメをさすヒルダ。
(ヴァルキューレの魔女って、今日ヴァルハラに行くのは私が殺した敵兵4万の魂じゃない。
自分で殺してヴァルハラ宮殿へご招待ってどんだけマッチポンプなの、絶対ダメ~~)
「貴方達、いい加減にしなさい!そこに正座」
私の妄想が引き起こされた八つ当たりの怒りに何故か素直に従う3人。
「これで、ようやく普通に話が出来るわね」
やけに素直ねと思う私を仰ぎ見る3人がニヤリと笑う。
湯船に正座する3人を見下ろす事になる私は3人の豊かな6つのEカップが作り出す光景に絶句する。
(私が頭を使って悩んでいる時にコイツラはそのエネルギーを無駄に溜め込んでいたに違いない)
「30分後にバルタザール殿と会議。貴方達も準備しなさい」
私は、戦略的撤退をする事にした。
「「「はい、シルディ様」」」
悪巧みの成功を喜ぶ三人。
「バルタザール殿、お待たせしました」
浴場での騒動の影響で遅れた私は、バルタザールより先に挨拶する。
「いえ、当家の温泉をお楽しみ頂けた様で良かったです」
やはり、バルタザールには情報が伝わったらしい。
(侍女だけではなく外には護衛も居たから当然よね)
「また、お願いします。それで、何か新しい情報はありますか」
「先刻、検討すべき新しい情報が参りました」
バルタザールではなくブルックが答えた事に私は違和感を覚える。
「新しい情報?」
私は領地を持つ子爵以上の貴族の館であれば必ずある会議用の広間を進みながら尋ねる。
「はい、良い情報と少し悪い情報があります」
大きなテーブルの奥にに私とヒルダ、右側にエリー、フローラが座り、反対側にはバルタザールとブルックハルト(ブルック)が座る。
「それでは良い情報から」
私は席の前に置かれた水差しからコップに水を注ぎぐ。
(あっ、ここは「どちらの情報から・・・」で始まる小ネタがいるんだっけ)
バルタザールはブルックに視線を送る。
「では良い情報から。「ブルマイスターの砦は健在。6000の攻城軍を防いでいる」三日前の情報だ」
「それは・・・・・・素晴らしい。いい情報ね」
単純に素晴らしいと言い切れない自分に私は自分の汚なさを痛感する。
「援軍が間に合うと良いが」
(フローラの中では援軍を送る事は確定らしい)
「後詰めの兵が足りません」
(やはりエリーの中でも援軍は確定で、戦術的な検討に入っている)
「3日で駆け抜ければ何とか。しかし、時間的にギリギリね。でもお姉様なら何とか成りますか」
(貴方達は簡単に援軍派遣を決めてかかっているけど、そう簡単には決めれないのよ)
と言うか、貴方達3人の中で私は突撃公女な訳ね。
「それで少し悪い情報とは?」
私はブルックを急かす。
私が援軍について論じなかった事に、フローラ、エリー、ヒルダの三人は意外そうな顔をする。
「クロスロード騎士団がコチラに向かっている」
「あと5日位で到着するそうだ」
ブルックは淡々と事実を述べ、バルタザールは「厄介な事に」と顔に書いてある。
「公都から5日で到着? 随分と早いじゃない。それは正規の騎士団?」
それは確かに必要な情報だけど、騎兵は湧いては来ない、ヒルダ、少し考えれば解る事よ。
そもそも出兵させるにしても騎兵は、国内に錬成途中の者を含めても2万もいない。
それに正規騎士団が中央の命令を無視するはずがない。
それ以外に公都にあるまとまった数の騎士団と言えば・・・
「いや、正規騎士団じゃない」
ブルックもヒルダに聞かれた事しか答えない。
時々、彼は相手の理解度を試す為に情報を出し惜しみする事がある。
(ブルックの中ではヒルダもフローラもエリーもまだテスト期間中なのね)
「ブルック、少し悪い情報を掴んでいるのね」
少しヒルダ達を助ける事にした。
私の言葉に「はっ」とするフローラ、エリー、ヒルダの三人。
ブルックは最初に「良い情報と少し悪い情報」と言ったのよ、貴方達は「良い」方だけを聞いて議論を始めてしまったけど、ブルックが「良い情報と少し悪い情報」と言ったからには、両方を聞いてからじゃないと議論は進められないわ。
「士官学校の生徒が「シルディア殿下だけを死なせるか」イキリ立ったのを押さえきれなかったらしい。
なので、騎士団といっても新兵ばかり1000騎ほど昼夜を問わず気力に任せて全力で向かっているらしい。補給所から報告があった」
ブルックは「情報も何も種を蒔いたのはお前だろう」と言う感じで私を見る。
「何それ、素人の暴走じゃない」
お怒りのヒルダ。
「私達が敗走するに違いないと考えて、撤退の援護するつもりなんでしょうが、要らざるお世話ですね」
フローラは、要らざる世話と切り捨る。
「シルディ様が勝算も無しに兵を挙げる訳が無いでしょうに」
エリーは私を最大限評価してくれるが、事実は、若干違う。
「心意気は買うが、公都からその速度で行軍したとすると、替え馬があったとしても、乗り手の体がもたん。まして新兵だとすると、着いた所でボロボロじゃろうな。軍事作戦としてはゼロ点じゃ」
と教官モードでバルタザール。
ウノシルディス領の奪還作戦の始まりです。
余裕を持って侵攻する予定がブルマイスターの砦が抵抗を続けている事を知った彼女らは、危険な賭けに近い作戦を行う事となります。




