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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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入城7

魔法とか転生とか全くない物語です。

メインテーマは、格好のいい男前なお嬢様の物語。

火曜日と金曜日に更新を行います。

今日はもう一話更新致します。


「「カチア様!」」


「「カチア様が来てくれた」」


「「カチア様、ブルマイスターを取り戻して下さい」」


「「奴等を皆殺しにして、父ちゃんの仇を取って下さい」」


「「父の仇を」」


「「母の仇を」」


「「子供の仇を」」


「「奴等を皆殺しに」」


私は、手を上げて行軍を停止させた。

皆ブルマイスターから逃げて来た避難民なのだろう。

怪我人がいるのは当然として、手足が無い者も大勢いる。

頭や手足に巻いた包帯に滲む(にじむ)血の色が私の目を引く。


シルディ様は、出兵の演説の時に「殲滅せよ」「叩き潰せ」とおっしゃった。

だけれど、私はシルディ様の秘書、シルディ様の描く未来を知っている。

前を行くシルディ様を見ると、黒くて腰近くまである髪を掻き揚げて笑ってらっしゃる。

長い髪が風に舞って美しい、ああ成程そういう事ね。


よし!


「ブルマイスターの民よ。ブルマイスターは奪還する、侵略者は殲滅する」


私は、剣を抜き頭の後ろにまわし、

一気に私の三つ編みにした銀色の「髪」を根本から切飛ばす。


「二度と故郷を荒らさせない。これは約束の証し、神よ受け取れ」


私は「髪」を空に高く投げ上げた。

三つ編みにまとめた「髪」がほどけ風に舞う。


それを受け取ろうとブルマイスターの民が手を伸ばす。


しかし、一陣の風吹き抜け「髪」を持ち去った。

一体何が起きたのか、「髪」は何処に消えたのか。

あっけに取られ、ポカンと空を見上げる群衆。


群衆が引き静まったその一瞬をついて、

「ブルマイスターに栄光あれ!」

副隊長のクリスティーネも私と同じ様に「髪」を切飛ばし、その「髪」高々と掲げて叫ぶ。


「「「カチア様に栄光あれ!」」」

私の部隊が拳を突き上げ叫ぶ。


「「「ブルマイスターに栄光あれ!」」」

ベルンの部隊が槍を突き上げ叫ぶ。


一瞬で恨みに満ちていた群衆の空気が変わる。


「「「カチア様に栄光あれ!」」」


「「「ブルマイスターに栄光あれ!」」」


負の感情の「仇討ち」が、栄光を求める正の感情に切り替わったブルマイスターの民が叫ぶ。


「行軍はじめ!」

私は部隊に再び前進を命じた。


「「カチア様と共に!」」

私の部隊とベルンの部隊が右手の拳を左胸を叩き唱和する。


ブルマイスター民の歓声の中、私は行軍を開始した。




「カチア様もクリスティーネ様も、神掛かって来ましたよ。隊長、大丈夫ですか」

魂が抜かれた様な顔の俺をライナーが気使う。


「ああ、大丈夫だ。戦場ではよくある事だ。それにしても凄いな俺の嫁も妹も」


「今更、怖気付いたんですか?」


「大丈夫だ。なぜなら・・・・」

俺の手の中には数本の銀色の「髪」の毛が握られていたから。


「それは、カチア殿の「髪」・・・・おめでとう御座います。

しかし、貢ぎ物を途中で抜き取ってしまって神様、怒りませんかね」

冗談とも真剣とも取れるライナー。


「大丈夫だろう。これは、カチアを守れという神の啓示だから」

こちらも冗談だか真剣だか良く分からないベルンハルト。


「成る程、神への貢ぎ物のお溢れ(こぼれ)ですな」

大人らしく適当な所で落とし所を見つけるライナー。


「ああ、俺の一生の宝物だ」

幸せモードのベルンハルト。




「お姉様、何やらカチアが神の奇跡を起こした様ですが」

姉以外の者が目立つのがちょっと不満げなヒルダ。


「大丈夫よ、あれくらいの奇跡なら、この出兵の最中(さいちゅう)に私も何回か経験しているし」

私の大した事では無いような言葉に、ヒルダとエリーが固まった。


「どうしたの二人とも? ここは何時もの「流石です」」の合いの手が入る所じゃないの」

今更何を驚くと、私は二人を見る。


「お姉様、あまりの事に言葉がありません」

ヒルダがボキャブラリー不足に陥るとは珍しい。


「とうとう、神様と取引出来る様になったのですね」

エリー、そこまでは言ってない。


「二人も頑張れば、その内、出来る様に成れるかもよ。もっとも貢ぎ物次第だけれど」

(これくらいなら、神様に不敬案件には成らないわよね)

私は、何となく空を見回した。


(貢ぎ物って敵兵4万人の魂かしら)

(その貢ぎ物じゃ魔王召喚です)

(お姉様ならば、魔王でも神様でもたらし込みそうですが)

(神様、こいつら二人の方が不敬案件です。私が告発致します、軽い罰を与えて下さい)


「そこの二人、聴こえている」

((やはり地獄耳ですわ))

(神様、やっぱり少し重い罰を与えて下さい)





「シルディア!」

ブルックが領主邸の前で私の名を呼び、両手を広げる。


「ブルック!」

私は2ヶ月ぶりにあう婚約者の元に走り寄り・・・・・


「ブルックハルト長官、今回の働き見事であった」

・・・・とっとっと抱き着く寸前で立ち止まった。


私を迎えるべく広げて、空を切った両手をどうしたものかと考えるブルック。

(かなり怒っているな、でも格好が付かないよシルディア・・・)


「勿体なきお言葉に御座います。

先代領主妻のアデーレ様、領主代行のアンゼルム様がお待ちです。

幹部の方は広間へ、それ以外の方は厩舎に馬を預けてご宿泊所にお進み下さい。

武器と馬の世話は、シルディ機関の者が行ないます」

あくまで長官としての仕事をする事にしたらしい。


「了解した。ヒルダ、フローラ、エリーは私と一緒に。

カチア、カタリナ、ハイデ、ベルンは部隊を率いて宿泊所に。

明日の集合は8時。今夜はゆっくり休む様に」

私は、ブルックを無視して命令を下す。

(少し拗ねた(すねた)シルディアも可愛い。でも振りの時は顎が少し上を向くんだよね)


「「「はい、シルディ様」」」

条件反射的に応える面々ではあるが、

(ちょっと拗ねたお姉様も可愛い)とヒルダ。

(一気に抱き付かれると思ったのだけど、攻めると見せかけて引く罠ですか)とフローラ。

(シルディ様、その演技はお兄様にバレてます)とエリー。

(あれがシルディア様の婚約者か、やはり実務能力が高い)とベルンハルト。

(婚約者の前ではああいうお顔をされるのですね)とカチア。

(シルディ様の婚約者は如何にも宰相って感じ、将軍って感じのベルンとは違った魅力)とカタリナ。

(シルディ様が婚約者に怒ってらっしゃる)と唯一シルディの演技に騙されたハイデ。

考えている事は見事にバラバラであった。


そこまで命令をして私は、ブルックに向き合う。

「2ヶ月も顔を見せないなんて、酷い婚約者ね。しかも一番大事な時に」

そして私はブルックを抱き締めた。


「「「キャー」」」

部隊から湧き上がるキャー


「さすがです。お姉様」

「罠にハマった所を一気に攻める。シルディ様、最高です」

「お兄様もまだまだ甘い。義姉様(おねえさま)、男前過ぎます」


そして当のブルックは

「すまなかった」

と私を抱き締め、4日もシャワーを浴びていない私の髪に顔を埋める。


「どう、4日もシャワーを浴びずに戦場を駆け抜けて来た。婚約者の香りは?」

ブルックの顔を両手ではさみ顔を正面に向けて言った。


「濃厚過ぎて頭がクラクラしてきた」


「淑女に向かって臭いとか最低の男、でもその声が聞きたかったのよ」


「キャーー」

再び上がるキャーの黄色い声

「お姉様、結婚前の淑女が・・・・公衆の面前で・・・・大胆過ぎです」

「圧勝です。シルディ様」

「お兄様も義姉様(おねえさま)も妹の前で・・・目の保養・・・いえ毒です」


私はブルックにキスをした。

ようやく入城出来ました。

後は、逃げた6万の敵を駆逐するだけです。

千人で。

やっぱり、まだまだ大変そうですね。

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