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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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入城6

魔法とか転生とか全くない物語です。

メインテーマは、格好のいい男前なお嬢様の物語。

火曜日と金曜日に更新を行います。

長くなったので2部に分けました。

「開門せよ。我らはシルディア・フォン・クロスロード大公国殿下麾下のクロスロード騎士団である」

フローラが戦旗を掲げて城兵に名乗りを上げる。


「開ーーー門。開ーーー門。クロスロード騎士団のご入城。王門を開けよ」

事前の打ち合わせの通りに城門が開かれる。


門が開かれた時、バルタザール・フォン・ウノシルデスつまりフローラの祖父が100人程のウノシルディス騎士団を引き連れて開かれた城門の前で出迎える。


バルタザールが、下馬したのに合わせて、麾下の騎士団も一斉に下馬。

「バルタザール・フォン・ウノシルデスで御座います。

ウノシルディスを代表して皆様のご入城を歓迎致します。」

バルタザールは孫であるフローラに臣下の礼を執り(とり)口上を述べる。

しかし、戦旗を掲げるフローラを見る目は、優しく潤んでいた。


「出迎えご苦労。シルディア・フォン・クロスロード大公国殿下が率いるクロスロード騎士団である。

ウノシルディス城に迫っていた敵軍は、我らが退けた。領主邸まで先導せよ」


「ありがたき幸せ。先導させて頂きます」

バルタザールは一人で馬に跨ると騎士団も一斉に騎乗し、4列の縦隊を組むと王道を露払いをする。


王道の沿道に詰めかけた群衆は、警備の城兵が整理をしている。

そして、群衆は味方の凱旋であるにも関わらず、水を打った様に静まりかえっている。

僅かな軍勢で10万の攻城軍を撤退に追い込んだ開放軍の入城である。

普通ならば開門と同時に歓呼の声が湧き起こり女達が花びらを舞い散らせる。

だが、群衆も城兵も異常な緊張に支配されている。



部隊から単騎で先を進むフローラの掲げる戦旗が城門を抜ける。


「「「紅の旗!」」」

この公国では「紅」の旗は特別な意味を持つ。


「「「戦旗!」」」

それを許されるのは、大公国公爵自身か軍を立てる事を許された者のみ。

そして、その武勇故に戦旗を掲げた軍であれば、必ず戦旗を任される家がある。


「「「フロレンティーナ様だ!」」」


王道の沿道に集まった群衆の一部から声が上がる。


フローラは城門を抜け暫く進むと立ち止まり、兜を取り素顔を露わにする。

戦旗を一度大きく振る。

輝やく長い黒髪が風に舞う。

勿論、フローラが将来絵画に描かれる事を意識して狙った構図である。


「ウノシルデスの武勇、紅旗の勇、フロレンティーナ・フォン・ウノシルデス。此処(ここ)に有り!」

フローラが良く通る声で名乗を上げる。


「「「っわわわわーーーーー」」」

敵から解放感が一気に爆発した。


「「「フロレンティーナ様、万ーーー歳!」」」

領主の娘で絶世の美女であるフローラの存在が、群衆の4万の敵兵を消滅させた恐るべき殺戮軍団に対する恐怖を打ち消した。




確かに脚本を描いたのは私だけど、あそこまで酷いセリフは書かなかったわよ。

よくもま~~あんなセリフ真顔で言えるわね。フローラ、恐るべし。

「フフフ、脚本の通り。私の秘密兵器が敵を消滅させたようね」

大公国旗を持って横に並んでいるヒルダとエリーに語る。


「お姉様・・・・おっしゃりたい事は分かりますが、この場合の敵とは何ですか、それに人生最高の日を喜んでいるフローラやウノシルディス住民達にもさすがに失礼かと。お遊びが過ぎます」

珍しくヒルダが反論して来た。


「シルディ様。敵とは言え、我らと戦って散った4万の敵兵の魂にもさすがに不敬かと」

ヒルダばかりかエリーまで何故か私を非難する。


「フローラはウノシルディスを救えて満足している。

私達を魔女や化け物と恐れていた民衆は、女神に救われたと感謝している。

4万の兵と言うならば兎も角、魂なんて私の知った事じゃない。

すべて私の狙い通り・・・・最高の結果じゃない」


「お姉様ならそう言うと思っておりました」

呆れた感じのヒルダ。


「お味方にはお優しいのに敵には一片の慈悲も無いのですね。さすがシルディ様」

全然褒めてないエリー。


「ヒルダそれにエリー、貴方達には4万人を消滅させる命令を下した傷心の私を労る気持ちは無いのですか」

私は腕を組んで二人をにらむ。


「とんでも有りません。お姉様」

「シルディ様の傷心を癒して差し上げたいと思っております。ですので」

エリーはヒルダにアイコンタクト


「「今日はお背中をお流し致します」」

見事にハモった。

ハイタッチで喜ぶ二人。


「誰が貴方達と・・・・馬鹿やってないで私達も行くわよ。二人とも笑顔で群衆に応えなさい」


「はい、お姉様」

ヒルダは右手の手の平を左胸にあて頭を下げる。

それは、侍女が女主人に絶対の忠誠を誓う時の礼。


「イエス、シルディ」

エリーは右手の拳で左胸を叩く。

それは騎士が上官に絶対の忠誠を誓う時の礼。


重すぎる、周りから見たら、私が絶対君主の様に見えるじゃないの!

二人とも~~~~覚えてらっしゃい。




王道を埋め尽くす民衆からようやく歓迎の歓声と花びらが舞う。


「アデリナ!!」

突然の呼びかけに手を振るのを止めて声の主を探す。

父上(ちちうえ)!」

2階の窓から大きく乗り出して両手を振る厳格だったはずの父が見えた。

「アデリナ! アデリナが凱旋したぞ!」

あの「厳格で、物静かで、威厳の塊の3点セット」だったはずの父が子供の様にはしゃいでいる。


父の叫びに呼ばれて窓から顔を出した、母と弟、妹も千切れんばかりに手を振る。


「アデリナ、列から離れて良し、ただし2分」

小隊長の許しがでたので、私は列を離れ家族の近くに寄る。



騎乗のまま家族のいる家に近づくと群衆が家族に通じる花道を開けてくれる。

「アデリナ!良くやった!」

「ケガはない?」

「「姉さん!格好いい!」」


「みんな無事で良かった!」

周りの群衆も家族の再会を見守ってくれる、そして・・・・


「「「アデリナ様!万~~歳」」」


「「「有難う!」」」


「「「アデリナ様、有難う!」」」

群衆から歓声が上がり、皆が握手を求めてくる。


(守れた!私は家族を守れた、みんなを守れた。

学問だけなく、乗馬や弓の訓練まであって大変だったけど、そのお陰で私は、みんなを守る事が出来た。

もう、守られるだけの人生じゃない。

私は、大切な人を守る事が出来る。

自分で道を切り開く事が出来る。)


「また後でゆっくり」

家族に手を振り列に戻る。

自然に涙が出て来た。

心から笑う事が出来た。

普通の兵士が家族を守って凱旋した時の素直な気持ちを書いてみました。

フローラは兵士では無く将軍ですが、今回の戦いを軍人らしく「単純に侵略者の討伐」と考えています。

ですので、単純に町が守れた事を喜んでいます。

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