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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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入城4

魔法とか転生とか全くない物語です。

メインテーマは、格好のいい男前なお嬢様の物語。

火曜日と金曜日に更新を行います。

話が長くなってしまったので、2つに分けました。

本日2話目の投稿です。

カチア隊が肉薄する敵に向かって攻撃を開始する。

ベルン隊はカチア隊の射線を塞がない様に前方30メートルに警戒線を構築する。


敵までの距離は400メートル、敵は陣形など作らずバラバラに走ってくる。

仲間の血を浴び真っ赤に染まった彼らは手負いの獣の様に迫る。

しかし、既に200メートル程を全力で走った敵は一部を除いて駆け足程度の速さでしかない。


私はアーレイの開発の時に散々駆け足で時間を図った時の事とを思い出した。

「人間が全力で走れるのは精々200メートル。それ以上走れる者も速さは馬の駆け足(20キロ)程度が精々。つまり、動く(まと)よ。カチア、上手くやりなさい」

「目標を捉えたら随時攻撃をして良し」

副隊長のクリスが馬を軽く駆けさせながら小隊長に命令を伝える。


カチアは戦場を見つめ、時々クリスや小隊長に命令を出す。


その落ち着いた姿が小隊長や兵達に安心を持たせる。


「各小隊長は目標を指示。射手はそれに従い射撃せよ。うち漏らした敵はベルン隊に任せろ」

クリスの指示にベルン隊の前衛が槍を突き上げて気合を入れる。


「的は鹿よりも遅く、ウサギよりも大きい、撃てば当たる、外した奴は今日は酒抜き」

射撃を待つ兵から苦笑いが起きる。


「ただし、賭け事にはするなよ。戦場での賭け事はご法度である」

既に掛けの約束をしていた者達から不満の声が上がる。




「ベルン様、本当にカチア様と結婚するのですか?初陣で兵を率いて全く動じない胆力。騎士団の指揮官でも中々いない女傑ですよ」

心底心配そうなライナー。


「ああ、俺の初陣は叫んで槍を振り回していただけだからな」

わりと冷静なベルンハルト。


「射撃が始まりました。

初陣なんて大抵そんなもんです。尻にしかれますよ」


「まだ400メートルはあるが、落ち着いた的確な射撃だな。

構わないさ、あのシルディ様の秘書で侍女頭候補だぞ。並みの男に太刀打ち出来るはずがない」


「射撃が終わった者は後ろに後退するのですね。これなら射撃間隔をカバーできます。

ベルン様は自信があるのですね」


「ああ、見事な騎馬運用だ。前衛部隊、カチア隊の後退に合わせてこちらも後退。

いやライナー、自信など無いよ」


「はっ、カチア隊との距離に注意させます。

そうなんですか」


「400メートルの距離で直撃させるか。大した腕だ。

俺はカチア殿に惚れている、カチア殿が俺を尻に敷くならそれで構わない」


「これは、我々の出番は無いかも知れませんね。

ハイハイ、嬉しそうですね。カチア殿に尻に敷かれた隊長を見てみたいです」


「攻撃が終わったら、止めを刺しに行くぞ。

おう、結婚式には呼んでやる」


「敵、200メートルを切ました。そろそろですよ」


「残り500人と言う所か。頑張ったな敵も。お前ら出番だ!」


「おーー」

50騎の予備隊に殺気がみなぎる。


カチアが俺を見て頷く。

「ベルン!!」

そう言ってくれたように見えた。


「行くぞ!突撃!」


「「「オーーーー」」」


50騎の騎馬隊が横一線で突撃を開始する。

僅か50騎とは言え騎馬隊の全力疾走が大地を揺るがす。


騎馬隊はカチア隊と直衛の部隊をたちまちに追い越す。

「「「ヤーーーーヤーーーーー」」」

そのタイミングで前衛は槍を突き上げて激を飛ばす。

この前衛100騎は突撃には加わらない。

何故なら奴等はカチアを守る最後の砦だから。


「散れ!1人10人倒せ!散会して各個に戦え!」

敵は500メートル位全力疾走して来た為に完全に息が上がっている。

鎧も着けず隊列も組んでいない歩兵など、騎兵にとっては訓練の時の丸太と同じだ。


たまに深く付き過ぎて槍を持って行かれる事があるが、その為に3本の槍を持って来ている。

もちろん深々と突き刺されて相手は即死している。


「俺の結婚の為だ、お前ら一人も逃すな!殲滅せよ!」


「「「殲滅せよ!」」」

部下たちが俺の掛け声に応える。




少年兵らしい兵がとうとう恐怖に駆られて逃げ出したが、後ろから突き殺す。


戦意を失ない槍を捨てて命乞いをする奴は上から突き刺差し、地面に縫い付ける。


脚を吹き飛ばされた奴、ハラワタを引きずり、のたうち回っている奴は放って置いても死ぬが、止め(とどめ)をさしてやるのが俺のせめてもの情けだ。


「倒れている者にも2、3回刺しておけよ。死んだふりをしてる奴がいる」

もうカチア隊と敵のあいだ位まで進んだが、この辺りには死体も少なくなって来た。


敵の本体には絶え間なくロングとか言うらしい大型のクロスボウが降り注ぎ地響きと共にバラバラになった体の一部が宙に舞い上がる。


「ベルン!」

カチアの声が聞こえた気がする。

(この距離で聞こえるはずがないが、戦場で研ぎ澄まされた感覚が敵の殺気を捉えたのだろう)

俺は飛んできた槍を自分の槍で弾き飛ばすと、槍を投げた敵兵に向かう。


「名を聞こうか」


「千人隊長 アキム・ロガチョフ」


「ブルマイスター騎士団長 ベルンハルト・フォン・クリスタラー。何か言い残す事はあるか?」

勿論、逃がすつもりも、捕虜にするつもりも毛頭ない。

ただ最後まで踏み止まり必殺の一撃に賭けた勇者の名前を俺が聞きたかっただけだ。


「何もない!死ね悪魔」

アキムという兵は指揮官らしく槍以外に剣も持っていたらしく抜刀し、(さや)を投げ捨て向かってくる。

俺の国でも奴らの国でも、鞘を投げ捨てる事は、戻すつもりは無いと言う決死の覚悟。


「そうか」

俺は決死の覚悟で向かってくるアキムという戦士に敬意を払って俺は一突きで終わらせず、2、3合槍を合わせる。


アキムはそれなりに剣の修行をした者だったのだろう。

1合、1合に修行で鍛えた技術と自信を感じる。


だが、騎兵と歩兵の一騎打ちで歩兵が勝つ事など、そうそう有り得ない。

「見事は剣技であった。アキム、終わりだ」

俺はアキムの剣を槍で巻き込んで跳ね飛ばし、心臓を一突きで吹き飛ばす。

仰向けに倒れたアキムの顔は苦痛に歪んだ見苦しい顔では無かった。



「隊長、引き上げ命令です。撤収しましょう」

ライナーが本陣を指さす。


「守りきれたな?」


「はい、突破した敵兵はおりません」


「そうか、取りあえず俺たちの仕事は完了だ。もっとも、突撃戦法の対策をあの女傑達が用意していないわけがない。これは予定通りと言う所だな」

いよいよ戦いが始まりました。

先ずはウノ族に占領されたウノシルディス領の奪還です。

機動力と圧倒的火力を武器に彼女らの快進撃が始まります。


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