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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: カジタニ ユウ


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出陣2

ご都合主義の転生ものじゃなくって、なるべく納得できる範囲で格好のいいヒロイン・ヒーローを描きたいと思います。

チョット歌舞伎じみたセリフ回しの格好つけの多い物語です。

「シルディ様、カチアです。エルフリーデ様、フロンティーナ様、ハイデマリー、カタリーナをお連れ申し上げました」

執務室のドアをカチアが開けると名乗りの順にエリー、フローラ、ハイデ、カタリナ、カチアの順で入室する。


「あの、シルディ様?」

カチアが、窓の外を向いたまま、こちらを振り向かない私に声を掛ける。



「正午に全校生徒の講堂への召集をヒルダに命じました。シルディア・フォン・クロスロードとして」

いつもなら席を勧める所だけど、私は執務室の窓から学生寮から講堂に集まりつつある生徒達を見ながら独り言の様に窓にむかってそう呟く様に囁く。


私の言葉に息を飲むの4人。


私の発言の意味を理解した事を呼吸で感じ、改めて振り返り5人を見る。

「ですので、これはクロスロード大公国の摂政や学園理事長としての命令ではありません。シルディア・フォン・クロスロードとしてのお願いです。従って貴方達には拒否をする権利があります。」


「いえ、シルディア殿下、お心のままに。どの様な命であっても、このフロレンティーナ・フォン・ウノシルデスはシルディア殿下に従います。」

フローラが騎士の最敬礼で即座に答える。


「フローラ、貴方、シルディ様がまだ何も言われていないのに、焦り過ぎよ」

エリーが実直な友に微笑みながら言う。


「エリー、夜明け前に赤白赤の伝令旗を掲げて学園まで一気に駆け抜けられた。公都から帰られたシルディ様はヒルダ様に全校生徒の召集を命じられた。シルディア・フォン・クロスロードとして。それが意味する所は一つしかないでしょう」

フローラがまだ立ったままのエリーを見上げて早口で反論する。


「シルディア殿下、全校生徒に召集を掛けて何をご命じられるおつもりですか?私達にも心の準備が必要です。皆よりも先にお教え頂けますか」

エリーの言葉に対する返答を8割の期待と2割の不安を感じさせる5人の目が私に向けられる。


「私ことシルディア・フォン・クロスロードはクロスロード家の第一公女として、ウノシルディスに侵攻したウノ族の討伐の兵を上げます。皆の参加を熱望する」

全校生徒の前で行う予行演習と思い、ちょっと歌舞いた口調で一気に言い切った。


「「「「はい、シルディア殿下、お心のままに」」」

既に礼を取っているフローラ以外の4人も騎士の最敬礼の姿勢で返答をする。


「故郷を守りましょう」

私は、ウノシルディスが故郷であるフローラとカチアの肩に手置き囁いた。


「シルディ様、領民を代表してお礼を申し上げます」

ウノシルディスの領主の長女でもあるフローラが、私と同じ光輝く長い黒髪が床に着くのも構わずに頭を下げる。


「はい、シルディ殿下、私の全身全霊をもってお仕え致します」

沈黙のフローラが一言一言に言葉に魂を込める様に答える。

で二人が答え、あとの3人がそれを暖かく見守る。


「さて、少し状況を説明したいし、相談したい事もあるから、席について貰えるかしら。カチア、お茶の用意を頼める?」

普段使うソファーではなく、大人数の会議の時に使う丸机を指し示す


「はい、シルディ様」

カチアが立ち上がり厨房に向かうのをきっかけ席に移動する。


正面の壁にしつらえられたクロスロード大公国の地図は、私が公都に向かう前に備え付けたもので、シルディ機関の成果の賜物である。これ以上正確な地図は今の所この世には存在しない。

その地図にヒルダがシルディ機関の情報を基にした侵攻状況がピンで示されている。


「ピン一つはおおよそ千人の集団だと考えて。赤は主力、緑は攻城軍、黄色は、補給部隊ね。敵の総数は凡そ10万。ウノ族の2割ってところね、今ウノシルディスまで・・」

地図の右横に立ち、私が説明する。


「それだけの兵を動員したとすると、ほぼウノ族の全軍になりますが、ウノ族の西の守りはどうなっているのでしょうか。やはりフン族と同盟しましたか?」

この執務室で会議を行う時には、誰もが自由に発言していい事となっている。

なので、私の説明を中断させたエリーを咎める者はいない。


「さすがはエリー、いい所に気が付いたわね」

「ウノ族とその西のフン族の間で昨年、攻守同盟が成立したらしいわ。その為にウノ族は東進、フン族は西進を国の方針に決めたらしい」

カチアが入れてくれた紅茶を私は立ったまま飲む。

淑女にあるまじき・・・・そこの後世の歴史学者!馬に蹴られて飛んで行け!


「先の大戦での敗戦がバレましたか。あと5年程隠せれば良かったのですが」

エリーがカチアが配った紅茶に口を付けて渋い顔で言う。


「ごめんなさい、カチア。貴方のお茶が悪い訳じゃないのよ。あれだけの敗戦ですものむしろ1年も良く隠せた方よ」

渋い顔をした事を律儀に謝るエリー


「それで、フローラ、この配置から読める敵の動きの予想は?」

さっきから黙って地図を見ていたフローラに話をふる。

戦略についてはエリー、戦術についてはフローラ任せ(もう一回馬に蹴られたいか?)

もとい、戦略についてはエリー、戦術についてはフローラの意見を聞くと言うのが私の基本スタイルである。(ふふふ、命拾いしたな・・・)


「見事に単純な侵攻作戦ですね。単純ですが手堅い。主力は、そのまま前進、攻城軍がウノシルディスに取り付いたら遊兵として街道の閉鎖と補給線の確保でしょうか」

評価としては60点。答案用紙に60と数字を書く黒髪に白髪が混じったフローラ教員の姿が見えた

(後世の歴史家が未来から私たちの未来を勝手にしゃべるな)


「そうね、我が騎兵に対処出来るのは、主力軍だけでしょうから、妥当なところね」

私の言葉に皆が頷く。


「それでフローラ、これに対する我が軍の対応は?」


「シルディ様、その前にご確認した事が2点あります」


「帝国と大公本軍からの増援は無し。義勇兵も含めてね。それとあれを使います。これで良いかしら」

あっさりと厳しい現実を聞かせれたはずだけど、流石にこの5人に動揺はない。


「ありがとうございます。それでしたら、補給部隊に波状攻撃を行い、援軍に向かって来た主力部隊を各個撃破するのが上策と愚考致します」

フローラもサラリと私の情報を流して現実的な策を述べる。


「エリーはフローラの策をどう思う?」

私は期待を込めてた眼差しでエリーの発言を促す


エリーは紅茶に手を延ばしながら少し間を取る

「常識的に考えて被害も少なく、妥当な策だと思います。ですがシルディ様には別案がお有りですね」

作戦の是非を問うた時点で私の考えを読んでいた様だが、正直に自分の考えを述べるエリーに私の信頼度が増す。


「通常ならばフローラの策を採用します。ですが今回はその策は取れません」

一気に作戦の伝えても良かったのだけど、皆の意思を統一を図りたい。

私は皆の考え時間を取る為に紅茶を飲む。


「ウノシルディスの街が落ちる。ですね」

街が陥落するまでのプロセスを正確に理解出来たフローラが苦々しく言う。


「その通り。公国や帝国からの増援が無いことは最早隠しようがない。増援が無い籠城なんて集団自殺と同義語、おまけにウノシルディスの住民の2割はウノ族の人間、ウノシルディスは3日持たないでしょう。これは、私たちが防衛戦に参加したとしても同じね」

五人は深く頷く。


「なので、私たちは全軍で派手に入城、援軍の到来を喧伝します。私たちの入城は敵にも察知されるでしょうから、敵は主力を分散させる事なく、集結させたまま進軍して来るでしょう、これを一気に叩き潰す。更に後続しているであろう攻城部隊を殲滅、補給部隊を可能な限り追撃する。つまり、早い話が敵軍団を正面から迎え撃ち、叩き潰す」

五人は私の大雑把過ぎる策に唖然とする。


「十万の敵を私達の千騎のみで殲滅すると言う事ですね」

望むところとフローラが答える。


「あれの威力と私達の機動弓兵戦法が鍵ですね」

あくまでも冷静な戦略家であるエリーが冷静に呟く。


「その通り、因みにエリー、あれの整備状況は?」


「5万本使えます。更にロングも30両、千発用意出来ています」

この事を問われる事を知っていたかの様に淀みなくエリーが答える。


「皆も、私が公都に行く前に1度は使ったから、あれの威力は承知しているわね」

5人が静かに頷く。


「あれを5万本、集団戦法しか知らない敵に打ち込んだらどうなるでしょう?」

悪の総帥に相応しい微笑みを浮かべながら皆を見る。


「1本で10人、密集隊形なら50人、ロングなら100人は戦闘不能でしょうね」

フローラがもはや戦場での勝利を確信したかの様に言う。


「侵略者は、文字通り壊滅ですね。シルディ様、お顔が淑女のする微笑みではありません」

侵略者など人間扱いする価値無しと断言するエリーが冷静に言う。


「まっ、失礼な。僅か1000人のうら若き乙女の軍に10万の軍勢が壊滅。こんな情報、帝国も公国もフン族も信じる無いでしょう。信じるのは、身をもって体験したウノ族だけでしょうが神の奇跡か悪魔の魔法の方がまだ説得力があるかもね」

5人がニヤリと笑って頷く。ここは悪の総本部なのかしら、貴方達も淑女の微笑みじゃないわよ。


「この勝利の後に私はウノ族と攻守同盟を結ぶつもりです」

私のこの発言は5人に冷や水をぶっかけたようだ。


「侵略者と同盟を結ぶのですか」

やっぱりフローラが不満を漏らす。


「いえ、良い考えだと思います」

エリーは私と同じ結論に至たようだ。


「攻守同盟を結ぶ代償にウノ族本拠地への駐屯、領土の割譲、賠償金を獲得するのですね」

これまで黙って私たち上層間幹部のやり取りを聞いていたハイデが初めて発言する。


「ハイデ、それは違う。それでは帝国と同じになってしまう」

帝国の方針に従い、先の大戦の敗北により大陸随一を誇った精強な騎馬軍団を失い、結果、異民族の侵略を招き、この窮地に援軍を寄こさない帝国の統治は、クロスロード大公国のとって最早禁句である。

発言をしたハイデが下を向いてしまった。


「ハイデ、別に貴方を責めません。今まで帝国の方法が最良と信じていたのだもの仕方ないわ」


私は5人が冷静になるのを待つ為にちゃんと席に座り、紅茶を飲む。

(私だって淑女の振る舞い位できます。何も言わないのですね、ナレーターさん『・・・沈黙・・・』)


「神の奇跡あるいは悪魔の魔法、これを示し代償を求めず攻守同盟を結ぶ。誠意の証に個人が特定出来る遺品であれば返してあげてもかまわない。ウノ族と攻守同盟がなれば、その東のフン族とも同盟も夢では無くなる。そうすれば公国の東は安泰となり、帝国と対峙する事も不可能ではなくなります」

私は初めて今後の戦略目標をみんなに披露した。


「シルディ様は、帝国と対峙するのですか」

真っ直ぐな疑問を発するフローラ


「今回の、シルディ様らしからぬ力押しな策の採用はその布石なのですね。流石はシルディ様」

戦略家らしい理解をしめすエリー


「ちょっと、エリー貴方は帝国と戦をするつもりなの?一応同じゲール民族なのだけど」

フローラがエリーに向かって真っすぐな疑問をぶつけるが、エリー以外の者も同じ様な考えの様に見える。


「フローラ、そんなつもりは毛頭ないわ、ただ間違った命令を拒む事位は出来る様にする事は必要よ。シルディ様のお父様やお兄上さま、貴方のお父様もどうして騎士らしく死ねなかったのかしら」

エリーの発言に顔を赤くするカチア。

対してフローラの顔意に変化はない。


「うっ、確かにエリー、貴方のの言う通りね。でも父達の無念を軽く言わないで」

フローラの発言にカチアの表情は冷静さを取り戻す。


「ごめんなさいフローラ、でも突き放して軽く言わないと私自身が怒りに冷静さを保てないの、貴方達の無念を軽くみたわけじゃないのカチアにもごめんなさい」

普通侯爵令嬢であるエリーが男爵令嬢であるカチアに謝罪する必要は無い。

だが敢えてそれをしてしまう所が日頃から貴族の建前やシキタリを心底毛嫌いしているエリーの本性なのであろう。


「・・・それで、シルディ様のお考えも同じでしょうか」

エリーの問い掛けに私は頷くと共に、先程のエリーの怒りや正直な謝罪にエリーも割と私と同じ人種なのかと親近感が増した。


「ま~今日のディナーより今日の朝食よ、次の戦いに勝たない事には、私たちは女だてらに戦を行った愚か者と歴史書に書かれる事になるのだから」

少し未来過ぎる話をし過ぎたようなので、私は敢えて軽い口調で言う。


「判りました、私は故郷を守る次の戦に専念する事に致します」

エリーの持つ戦略眼が自分には全く無い事を戒めるようにか感情を抑え込む様にローラは言う。


「戦場での指揮はフローラが要よ。私もエリーも考えすぎる所があるから、戦場での咄嗟の判断に遅れる時があるの、そんな時には躊躇なく進言してね。これからも頼りにさせて頂戴」

少し後ろ向きになりかけていたフローラを私は励ます。

消極的なフローラなんて、フローラじゃないから。


「考え無しの私如きに勿体ないお言葉です。今後とも精進いたします」

何処までもまじめなフローラは騎士の礼に乗って答えるが、もう眼に迷いは無かった。


「さてハイデ、カタリナ、カチア貴方達に講堂まで持って行ってもらいたい物があるの」

私のお願いに3人が疑問の眼を向ける。


「まずハイデ、貴方にはこの公国旗をお願い」

何を預けられるのか分かったハイデは、驚きに眼を見開く。


「カタリナには学園旗をお願いします」

ハイデの動きをみていたカタリナに驚きはない。

落ち着いて学園旗を両手で受け取る。


「そしてカチア」

「はいシルディ様」

「貴方にはこの旗をお願い。効果的な演出に使うから広げないでね」

私はまだ梱包もほどいていない旗を手渡した。

私はよく考えたら、この旗を運ぶから赤白赤の緊急伝令が使えた事に気ずく。


「シルディ様、宜しければ何の旗かお教え頂く事はできますか?」

カチアは他の4人を代弁するかの様に質問する。


私は背筋を伸ばし凛とした声で宣言する

「それは、私の戦を私と共に戦う戦友が掲げる、私の戦旗です。」

戦慄と高揚が5人の体を駆け巡る。

読みずらいとの指摘があったので、文字の並びを整理してみました。

ついでに各人の気持ちとか、ナレーターとかちょっと遊んでみました。

話の大筋は変わっておりません。

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