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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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初陣8

魔法とか転生とか全くない物語です。

メインテーマは、格好のいい騎士物語。

自己保身の為に民を見放した最低貴族の代わりに立ち上がる格好のいいお姉様の物語です。

火曜日と金曜日に更新を行います。


「了解致しました。楽しみにしております」

俺は敬礼でヒルダ殿を見送った。


「隊長、彼女達は皆初陣ですよね?

さっきのアデリナという一般兵といい、ヒルダ殿といい歴戦の勇者じゃないですか。

あの余裕と美貌、恐ろしい女性達です」

ヴェルナーの感想に俺も頷く。

(うん? 今お前ドサクサに美貌と言わなかったか?

確かにここで出会った彼女達は皆美しい。

これから100倍の敵と戦うのに俺まで勝てる気がして来た)


「音に注意して馬が暴れ無いようにか.....ヴェルナー! 全部隊に確実に伝えよ。

ブルマイスター家の・・・・いや男の騎士の名誉に関わる気がする」




カチア殿の部隊は2つに分かれ、カチア殿と妹のクリスティーネ(クリス)が率いている。

両者の距離は300メートル程。

俺はその間に部隊を3列横隊で布陣させる。


「隊長、布陣終了。敵ファランクスまで500」

ライナーが緊張した声で伝える。


「了解。音に注意、馬を暴れさせるな。部隊にもう一度徹底」


「はっ!小隊長「音に注意、馬を暴れさせるな」各人に徹底させよ」

それを小隊長が部下に伝えるが、俺の部隊の小隊長には余裕と言うものが全くない。


当たり前だ、2万の敵に対してこちらは千と少し。


絶対絶命。


戦死確定。


明日の朝日を見れる可能性は限りなく低い。


それでも部隊に乱れが無いのは、全員が覚悟を決めた死兵しかいないからである。


ウノシルディスの民を守る為に駆けつけてくれた彼女達を最後まで守る。


ブルマイスターの騎士の誇りにかけて、クロスロード大公国の未来の騎士を生み育てるであろう彼女らを最後まで守る。


その思いが部隊の兵を死兵に変えた。



「ライナー、味方をどう見る」

何か喋っていないと待ち時間がつらい。


「かなり大型のクロスボウです。水平撃ちで200でも有効でしょう」


「ファランクスの移動速度から考えて8射は撃てるか」

俺の予想にライナーも頷く。


「全部当たれば800人、実際には500人。壊走させるには足りませんね」

300メートルまで接近してきた敵を前にして空元気(からげんき)を振り絞ってそんな会話をしていた時であった。



「「「打ち方用意!!」」」

カチア隊の騎馬が一斉に頭を下げ、足を踏ん張る。


本陣の信号旗を見ていなかった俺たちは突然の号令に戸惑った。

振り返れば、さっきまで緑の信号旗であったのが、赤い旗3旗に変わっている。

と、言う事は本陣からの攻撃命令と言う事か。


カチアとクリス、それと遠くからカタリナの号令が聞こえた。

「「「撃て!」」」

クロスボウが一斉に発射される。



「遠い!まだ300はあるぞ」


「軌道も山なりです。あれでは盾で防がれます」


「クソ!経験不足か」

高い放物線を描いた矢が、頭上を盾で完璧に防御したファランクスに襲い掛かる。


矢が盾に当たる。

凄まじい閃光が走った。

轟音に馬が暴れる。

クソ!この事か!

「馬を抑えろ。醜態を晒すな」

「抑えろ」

「抑えろ」


俺達が馬を抑えるのに必死であった間に第二射が放たれた。


再び轟く大音響。

また馬が暴れだすが、最初よりは慣れて来た。

そして俺は目撃する。

ファランクスの前半分の兵が消え去っているのを


「ライナー、俺には敵の半分が消えているように見えるが事実か?」

俺は見えている物が信じられなかった。


「自分にも前半分が消えて見えます。事実です」

見つめ合う俺とライナー。


この俺とライナーのこのやり取りは、後に恰好の酒の肴になった。



「トンデモナイ物を持って来やがったがった」


「はい、たった2射、400発で4000人程消滅しました」


「消滅か・・・・・・まさに消滅だな。俺たちの常識も覚悟も騎士の誇りも敵も味方もまとめて全部消滅させたな」


「敵を倒したと言う事に関しては同じです」


「確かに、これは受け入れるしかない。歴史が変わったな」


「ええ、重装騎兵と重装歩兵の時代は終わりです。・・・・ですが信じてくれるでしょうか」

再び見つめ合う二人


「ああそうだな。・・・・ってそうじゃない、もう音に馬を暴れさせるな。

俺がカチアと妹に馬鹿にされる。

俺の結婚の為だ、お前ら死ぬ気で頑張れ、騎士の誇りを守れ」


「結婚!ベルン様はカチア様に求婚したのですか」

さっきまで冷静に戦況を論じていたライナーが別モードにギアアップする。


第3射が発射されたが、もうそんな事は俺の部下には、どうでも良い事らしい。

「結婚だ!」


「ベルンがカチア様を口説いた!」


「馬を鎮めろ!隊長の為だ」


「ベルンがカチア様を落とした!」


「馬を鎮めろ!騎士の意地だ」


「ベルンが大金星だ!」


俺の部隊が一つにまとまった。

あ〜知ってたよ、男の騎士なんてこんなもんだって事は。


だが決死の覚悟で殿(しんがり)で戦う覚悟より、俺の結婚の為に死ぬ気で頑張る覚悟の方が100倍もマシだ。


血飛沫を上げて粉微塵になってゆく敵を観ながら、俺達は笑っていた。





「野郎共、攻撃が収まったら俺たちの出番だ」

俺は部隊の主だった者を集める。


「取りあえず全部突き刺していけばいいのですね」

と、ブルマイスターの3本槍の一人フィッシャーが簡単に言う。

こいつらさっき迄の惨劇と地獄絵図に感性が麻痺してないか。


「うん。ま~その通りなんだが、お前たち本当に判っているのか。

敵とは言え重症の者や気絶している者もいるんだぞ」

いざとなってビビられても困る。


「捕虜は不要。敵は殲滅。それがシルディア殿下のご指示でしたよね」

とフィッシャーの同僚のリンケが言い切る。


「うむ、その通りだ」


「であれば情けは不要。奴らは侵略者です。殲滅あるのみ」

と3本槍の最後の一人ロンゲンが敵を切り捨てる。


「敵を殲滅せよ!」

ブルマイスターの3本槍が槍を突き上げ叫ぶ。


「「殲滅せよ!」」

他の奴等も乗ってきた。


「「「殲滅せよ!」」」

とうとう全部隊が唱和しだしやがった。


俺の騎士団がバーサーカーになってしまった。



その時、一度収まっていた攻撃がは再び開始された。


今度は1000メートル以上離れた敵本陣に向かって。


再び起こる大音響、さっきまでの攻撃が嵐だとすれば、今度の攻撃は雷だ



「馬を鎮めろ!隊長の為だ」


「馬を鎮めろ!騎士の意地だ」


「ベルンに恥をかかせるな!」


「ベルンがカチア様を落とした!」


「「「殲滅せよ!」」」

お前ら又それか。


「「「殲滅せよ!」」」

雷の様な攻撃は3回続く。


「「「殲滅せよ!」」」

その間、俺の部隊の殲滅コールは続く。


「「「殲滅せよ!」」」

これはこいつらなりの恐怖の克服方法なのかもしれない。


「「「殲滅せよ!」」」

五月蝿いだけで害は無いし。


「「「殲滅せよ!」」」

嬢ちゃん方にも俺達を笑う事で恐怖を忘れている様だし。


「ライナー、敵の本隊はどうなった?」

盛り上がるバーサーカー達は放置して状況を確認する。


「まだ煙が多くて確認出来ませんが、こっちに突撃して来る奴は居ません」

ライナーはバーサーカーには成らなかった様だ。


「そうか、しかし、2万人の軍勢が成すすべも無く壊滅か」

俺の言葉にライナーも頷く。


「先の敗戦の時の我の騎馬隊と同じなのでしょう。あの時は4万の騎兵でしたが生還した者がいないので、正確な所は判りませんが」

俺達は目の前の戦場と俺達が参加しなかった2年前の地獄を重ね合わせた。





「伝令、伝令」

シルディア様からの伝令が来たのは俺の部隊がバーサーカー集団にジョブチェンジした後であった。


「伝令ご苦労。命令は」

俺の部隊の盛り上がりに完全にドン引きの伝令が命令を伝える。


「ベルンハルト隊は敵残存兵の殲滅を行え。

その際、窪地に倒れた兵には特に注意せよ、気絶している可能性が高い。

又、原形を留めて居るアーレイ、ロングには絶対に触るな。不発弾の可能性がある」


「命令および注意事項について受領致しました」

俺は伝令をしてくれた兵に敬礼を返した。


この状況を余り見せたくない。

何故ならば、俺の騎士団は


「「「殲滅せよ!」」」


「アーレイ、ロングには絶対に触るな!」


「「「殲滅せよ!」」」


「窪地の兵は、二、三発突き刺せ!」


「「「殲滅せよ!」」」


「ベルンがカチア様を口説いた!」


「「「殲滅せよ!」」」


完全にバーサーカー状態であったからだ。

新しく部隊に加わったベルンハルト達はアーレイやロングの威力を知りません。

攻撃開始までは単なる軽装弓騎兵として彼女達を見ています。

なので、弓矢の攻撃だけでは敵を殲滅する事は出来ず、彼女たちが撤退する時には

ここを死処と定めて殿を務める覚悟です。

そんな彼らの前に突然現れた大量殺戮兵器をどの様に感じたのでしょうか。

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