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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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16/30

初陣7

魔法とか転生とか全くない物語です。

メインテーマは、格好のいい騎士物語。

自己保身の為に民を見放した最低貴族の代わりに立ち上がる格好のいいお姉様の物語です。

火曜日と金曜日に更新を行います。


先頭に立つベルンハルトが第一防衛線の林を抜けウノシルディスを望む幅2キロ程の草原に出ると、赤い乗馬服に黒の乗馬ズボンに黒の乗馬靴で統一された騎馬隊が横隊から縦隊に配置変更を行なっている真っ最中であった。


「500騎程ですか?」

と副官のライナー。


「ライナーにはあれが500騎に見えるか」


「はい、騎士団にも勝るとも劣らない見事な配置転換の動きです」


「200騎だよ。ライナー」


「まさか・・・・たった200騎ですか?一匹の魔物としか思えない連携ですね」


「ああ、まるで一匹の赤い大蛇の様な見事な動きだな。私にも500騎に見える。知らなければ」



「止まれ。何処の者か!!」

10騎程がこちらに向かってきたが、3騎を残し後は警戒態勢を取っている。

接近してきた3騎の騎兵が誰何してきた。


「ベルンハルト騎士団。シルディア殿下の軍に参加させて頂く」

俺は部隊の前進を止めて答える。


「ベルンハルト殿ですね。お話は伺っております。ヒルダ様の所にご案内致します。ですが、念のためベルンハルト殿と数騎の護衛のみでお越し願えるでしょうか?」

単騎では無く護衛を許す辺り、中々に訓練の行き届いた士官の様だが、服装等に違いはない、つまり普通の兵だ。


「了解した。ライナー部隊を任せる。フィッシャー、ヴェルナー、ロンゲンついてこい」

俺は念のため、騎士団の中で実力、人格共に一番信頼できる者を選んだ。


「了解しました。しかし、あれが兵卒の対応と判断ですか。素晴らしい、まるで古参の士官ですね」

ライナーも彼女らの判断力に関心したらしい。

ま~騎兵は歩兵の育成の30倍位の金がかかるし、彼女らは一応全員貴族らしいから当然かもしれないが。


「そうだろう。全員クロスロード学園の生徒達だ。俺の不在中に醜態を見せるなよ。ブルマイスター家の名誉にかかわる」

全員貴族でそれなりに美しい。

まして今は戦場に赴く緊張感が彼女らの魅力を最大限に引き出している。

この10日程、生きるか死ぬかの戦いを強いられた俺達にとっては、全員女神様の様だ。

(この場合は女神じゃなくってヴァルキューレなのかな、でもそれだと俺達は死んでいる事になるか)


「了解致しました。お気をつけて」

まあ、ライナーに任せておけば問題ないだろう。


「ああ」

俺は3騎を引き連れて誰何した騎兵の後に続く。




「フィッシャー、お前の妹、確かクロスロード学園に居なかったか?」

誰何した騎兵には届かない程の声でロンゲンは問いかける。


「ああ、居る。さっきすれ違った時に敬礼してきやがった」

久しぶりの再会だろうにフィッシャーの表情は渋い。


「そうか、それは絶対に守ってやらんとな」

この部隊にいると言う事は100倍の敵と戦うと言う事で、それは今日中に戦死する可能性が非常に高い事を意味する。

妹の学園入学を喜んでいたフィシャーにはやり切れないであろう。


「妹だけじゃない、みんな同じ歳位の女ばかりだ。せっかく安全な学園にいたのに、こんな絶望的な戦いに加わりやがって」

フィシャーの声は腹の底から湧き出る口惜しさを噛みしめる様に苦そうだった


「フィッシャー。今はそれ以上言うなよ」

ロンゲンは念のため素早く回りを見回す。


「ああ分かっている。ロンゲン」

フィッシャーとて時と場所をわきまえない愚か者ではない。

先導する騎馬以外は周りには誰もいないのは確認している。


「全員志願したそうだからな」

慰めようとしているのか、諦めさせようとしているのか、ヴェルナーが仕入れて来た情報を吐き出す。


「ヴェルナー、ロンゲン。公女殿下が戦旗を掲げ(かかげ)「民を助けに行く。命を預けて欲しい」と言われたらお前達ならどうする?」

フィッシャーも同じ情報を掴んでいた様だ。


「ブルマイスターの騎士で志願しない奴はいないんじゃないか?騎士として、いや漢として悔いなしだ」

とヴェルナー。


「騎士の本懐だな」

とロンゲン。


「そうだ漢ならな。だからだ、もしこの軍が撤退する時には、俺は殿(しんがり)を務める。誰が何と言おうともな」

妹は絶対に守ると言う意志を込めてフィッシャーは言う。


「フィッシャー。その時は俺達も付き合うぜ。な~ロンゲン」


「当たり前だ、フィッシャー、ヴェルナー、そしておれでブルマイスター家の3本槍だからな」

互いに今日、戦死する覚悟を決めた3人に迷いはない。爽やかな笑いで強く頷く。


「ああ、100人は道ずれにしてやるぜ」

「フィッシャーが100人なら俺は101人だ」

「ロンゲンそこは101じゃなくって200だろう。俺はお前たちを倒した敵を倒してから逝く。これでも2年お前らの先輩だからな」


「お前たち、3本槍の話がまとまった所で、お喋りは終了だ。ま~そんな事があった時には殿(しんがり)は俺とお前たち3人だ。付き合って貰うぞ」


「「「喜んで、ベルンハルト様」」」

大公殿下の直属部隊に加わり、好きな(カチア)や守りたい(いもうと)の為に戦って死ぬ。

騎士の本懐じゃないか。

こいつらも根っからの騎士だな。

安全地帯から戦場に飛び込む妹の事をとやかく言う資格なんて無いとベルンハルトは思った。





「ヒルダ殿」

赤いロングヘヤーが赤い乗馬服(軍服でいいのかな)をより一層豪華に見せるヒルダ様が馬を寄せてくる。


「ベルンハルト殿か。早かったな。報告は馬上で良い」

ヒルダ様の口調は姉のシルディア様の口調を真似ている感じがする。


「全部で152騎。シルディア殿下の軍に加わる」

俺は(不敬罪には問わない)と言うシルディ様の言葉を思い出し馬上で応える。


「152騎。了解した。何故一緒に連れて来なかった、時間の余裕は余り無いぞ」

ヒルダ様は最初から全員を連れて来なかったと言いたそうだが、それは無理だ。

誰何した兵の判断は戦場では正しい。


人を信じるのは美点だが戦場では致命傷になりかねない。

ここは、俺がここまで案内してくれた兵を守るしかないか。


「はっ、我が部隊には先の戦闘で鎧が壊れた者も多数おります。

ハイデ殿の部隊の兵が偽装兵を警戒するのは当然と考えます」


「そうか・・・そうだな。警戒して当然だ。アデリナ、すまなかった。私の警戒心が足りなかった様だ」

ハイデ様の言葉にアデリナと言うらしいここまで案内してくれた兵も安堵した様に見える。


「部隊の呼びます。アデリナ殿、済まないが、こいつらをもう一度部隊まで案内してもらえるだろうか」

俺はアデリナと言うらしい騎士にお願いした。


「かしこまりました」

ここまで案内をしたアデリナは笑顔で了承する。

(2万の敵、味方は千騎。絶対絶命のこの状況で笑えるのか、恐ろしい平常心だ)


「フィッシャー、ロンゲン。彼女に案内してもらい、ここまで部隊を連れてこい」


「はっ!宜しくお願いします」

案内してくれた騎兵と2人が急ぎ駆けてゆく。


「ベルンハルト殿」

ヒルダは風に舞った赤い髪を落ち着かせる。


「なんでしょうか、ヒルダ様」

風に乗って来た彼女の甘い香りにクラッとしてしまった。


「貴殿の部隊の配置だが、恐らくカチア隊の隙間を固めてもらう事になると思う」


「り、了解です」

ヒルダ殿の口から出た「カチア」の言葉にさっきの甘い香りにクラッとしてしまった俺は、動揺する。

(カチア殿これは浮気ではないぞ。ヒルダ殿ほどの美少女と会話が出来たら、男なら誰でもこうなる)


ヒルダ殿は、俺を不思議そうに小首を傾げる。

「・・貴殿の出番は、私達の攻撃が終了してからになる。掃討戦は辛い仕事になるだろうが宜しくお願いする」


「承知致しております」


「貴方は、歴史が書き変わるのを目撃出来るであろう。それと、音には注意し馬が暴れ無いように。それでは、私は補給の手配をしてくる」

ヒルダ殿が自信たっぷりの言葉を残し補給部隊に手配に向かわれる。



新しく部隊に加わったベルンハルト達はアーレイやロングの威力を知りません。

単なる軽装弓騎兵として彼女達を見ています。

絶対的に数で劣勢な彼女達の撤退を支援する為に彼らは迷わず殿(しんがり)を務め

戦場に散るつもりです。


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