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大会まであと半年

のめりこんで、半年余り。

まだ大会までは数か月ある。デッサンがメインの教室に毎日通い詰めている。


自分自身の疑問や不満を芸術にぶつけることで彼女自身は安定している。

しかし、自分の感情をすべて作品にしているから、作品の数が膨大になる。日に30は当たり前。週末になると50作品ほどになる。一応彼女なりにペース配分というか遠慮はしているらしい。

(困ったな。これではあの大会までのスペースが足りなくなる)

「典子さん。作品のことで話があるんですが」

「はい。何のことでしょうか?」

顔をあげずに返事だけ。

没頭すると他のことは何も手につかなくなるものらしい。

「あー。作品の保管場所がもうないんだ。家に持って帰るか、レンタルスペースでも借りるかしてくれ」

「習作ですので処分してくださってかまいません」

習作にしても、一般的な生徒の倍はゆうに超えている。

自分の心の内を書きなぐっている状態だから彼女の過去の作品は鬼才というにふさわしい。

☆☆☆

「先生、典子のことなんですが」

(やはりきたか)

「どうした?典子は自分のペースで書いているだけだ。君に何か嫌がらせでもしたか?」

「そうではないんです。彼女の才能はすごくあると思うし、友人としては応援しているんです」

「でも? モヤモヤするんだろ?」

「はい。彼女は優しいし、色々とこの教室のことも教えてくれます。すごいなって思うんですが」

「才能があまりにあるからどうしても比べてしまうんだろ」

「……はい。そうみたいです」

典子の友人は一様に顔を暗くする。

応援はしている。でもあまりにはっきりとわかる自分との違いに嫉妬してしまう。

目標を見失うこともあるだろう。

「典子は好きに書いているだけだ。ちょっと才能が有りすぎるかもしれない。彼女は多分自覚していないんだ」

「先生でもそう思うんですか?」

「まぁ。10代であそこまで書けていればどれだけの人の心を動かせるのか。うらやましいよ」

「ええ」

「実際、彼女が頭角を現した後もそれほど変わらないだろう」

「ええ。まったく」

友人はすんなりとうなずく。典子のことを認めてもいる。理解もできている。

しかしそれでも嫉妬はしてしまう。それが才能の世界だ。

「嫉妬することもあるだろうが、典子の基準はどうやったってあの世界にいるんだ。自分のレベルを見失うな。君には君の表現をしたいものがあるはずだ」

ちょっと横にいるのが才能の塊みたいなやつだから、じぶんのペースは狂いがちになるだろうが、意識して嫌がらせしているわけではないのだ」

「そうですね」

「だから今までと同じように友人をやってくれないか?」

「……はい」

彼女の戸惑いは当然のことだ。ライバルにすらなれない。圧倒的な才能の前に嫉妬するなも敵視するなも無理な話。

(典子のことを理解できる友人が現れるといいのだが)

大会まで先生の悩みは尽きない。

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