将来の夢
将来の夢は画家。
自分で臨んだわけではないけれど、デッサンの先生はたくさんのアドバイスをしてくれた。
(こんなことで自分の進路を決めてしまっていいのかしら)
先生が進めてくれたのは、先生の母校。
「君が自分の意志で技術を磨いていくのならば、私の簡単にはいることができるだろう。どうするかは君の人生だし、強制はしないよ」
などとあからさまに期待させれおいて、最終的に責任をとるのは自分自身だという。
困った先生だ。
(私は画を書いている時間は嫌いじゃない)
見たままにデザインしていく方法も好きだし、
すべての常識を反転させて自分しか理解できない画を描いていくことにも楽しいと思える。
しかしである。
(私の技術が才能あふれる美大生の中で通用するのか)
楽しいことと認められることは違うものだ。
どんな分野においても。
(先生はどうだったのだろう)
次の時間に聞いてみよう。
「先生。進路に関してご相談があるのですが」
「なにか?」
「私は全国から集う才能ある人たちの中で輝けるでしょうか?」
「やる気があればできるさ」
「なにか、順位をつける発表会はありませんか?」
芸術に関してはあまり順位はつけない。
分かっているが、自分のレベルは今どれぐらいなのか。
本気を出したのならば、どこまでいけるのか。
先生はできるというが、そんなにも先生を妄信に信じることもできないし、自分の技術に自信もない。
「あー。っとなぁ」
先生は珍しく困っている。
自分の知っている知識を総動員して疑問の答えを探している。
「あるにはある。終わったばかりだから来年になるが。
――興味あるか?」
「はい」
先生の様子はおかしい。できればこの大会には関わらせたくはなかったことが如実に伝わってくる。
先生の言うことをただただ従うことは私にはできなかった。
それなりに実感を得たいし、皆の世界を知りたいとおもっているから。
「あまり、順位にこだわるんじゃないぞ」
きっとこれが大会に関わる条件なのだろう。
「ええ。大丈夫です」
自分の価値を知りたいだけ。順位だけを競いたいのではない。
私の能力は誇れるものなのか知りたい。
先生に私のキモチは伝わったのか、よくわからない。
だが、先生は来年の日程を教えてくれた。
「ありがとうございます」
先生はずっと複雑そうな顔をしていた。