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(閑話)エルとヴィー1

 エルは妖精の国でも変わった妖精だった。

 普通妖精の羽は、単色で淡い7色のどれかに染まるのだが、エルのそれは虹色だった。

 妖精の国と外の世界を繋ぐトンネルの、出入り口のある花園によく似た羽だった。

 羽の色が普通でないからといって、別に虐められるわけでもないが、いつも花園まで一人で行き、ぼんやりしてる、ちょっと変わった妖精だった。

 ある日、春の麗らかな陽の花園で昼寝をしていると、急に辺りが暗くなり、驚いて見上げると、グリフィンが鋭い嘴で咥えていた白い包みをそっと花園に置いて、なごりを惜しむように何度か嘴をその包みに擦り付けると、たたたと助走をして空に舞い上がった。

 花園の周りを何度か旋回した後、グリフィンは東の峰へと去って行った。

 恐る恐るグリフィンの置き土産を覗いてみると、それは人種と思われる赤子だった。

 グリフィンの突然の来襲と赤子の事を、エルは急いで村へ妖精女王へと伝えるためにトンネルに飛び込んだ。

 エルの知らせを聞いた何人かの妖精は、確認のために花園へ行き、赤子を確認すると、女王にありのまま詳細に報告した。

 エルはそんな村の騒動はさっぱり無視し、再び花園へ赴くと赤子をじっと見ていた。

 やがて赤子が目を覚ますと、目の前に居たエルを見てにこっと笑った。

 


 妖精種に男は居ない。妖精の村の最奥にある"生命の花"から妖精は生まれる。

 遠い昔、まだ妖精種に男がいた時には、男女間の行為で生まれてくる者も半数はいたという。

 だが長い年月の間、男子の出生率が落ち、とうとう妖精種は女だけの種族となってしまった。

 男女間の営みからのみ王や女王となる妖精が生まれ、人種と同じ大きさまで成長する。

 王や女王でない者、生命の花から生まれた者は、大きくなっても森を渡ってくる鳥ほどにしかならない。

 だが羽を使って飛ぶことが出来る。

 王や女王となる者は、子供の頃は飛ぶ事も出来るが、成長するにしたがってその重量を妖精の薄い羽根で支えることが出来なくなり、やがて人種と同じく地上でのみ生活するようになる。

 だが飛べなくなる代わりに強い妖力を持ち、村を支える結界を張る事が出来るようになり、妖精の国をその字面通り支えることになる。

 妖精の国は湖面から深い所にあるが、結界で水面を支えるいるので、太陽の恵みも受けることが出来、なお且つ侵入者を拒むことが出来ているのである。



 紆余曲折あったが、人種の赤子は妖精の国で育てることになった。

 赤子は1歳程度だろう。乳飲み子でなかったので、妖精の国で作られている麦をどろどろになるまで煮込み、ほんの少しの塩で味付けした麦粥や、果物をしぼった果汁などを与え育てた。

 村に連れ帰った時からくっついて離れなかったエルが、ゔぃ~ゔぃ~と言いながらあやしたため、やがてそれが口癖となり、ヴィーと名付けられた。

 女王以下全ての妖精達は、ヴィーに名づけの由来を聞かれたときは『エルに聞いて。』と誤魔化す。

 ちょっとヴィーが不憫だ。泣いても良いと思う。

 女王は交流のある人種オーゼンの国の王に、赤子を拾った事を伝え、もしも親がいるようなら教えてほしいと依頼したが(女王は返すつもりなど無く、いても正式に養子にする気満々で、後々揉めないようにという配慮?してなのだが)、王国内でグリフィンに連れ去られた赤子は居なかった。

 結局、女王の願い通り養子となったヴィーは、正式に妖精の国の同胞として迎えられた。

 

 女王とエルが狂喜乱舞したのは言うまでもない。

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