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姫様、がんば!

 ヴィーの困惑をよそに、謁見の間に集まっていた王国の重鎮達も、いつの間にか国王と王女の親子喧…罵りあ…口論に加わっていた。

 

 それらは主に、国王への援護射撃に終始し、区長や言葉は丁寧ではある物の、一貫して王女の言動を非難する内容であった。


 まあ、一国の王女が護衛も付けずに(ヴィーの事はこの際置いておいて)他国へと侵入する…それも妖精狩り事件への介入などと言う危険な行動を、臣下が止めるのはごく当たり前のことではあるが。


 かくしてこの口論は、圧倒的多数の援護も加わり、当然ではあるが国王の勝利で幕を下ろした。

 

 最後には『ヴィー様と二人きりで旅行がしたいんです!』と、王女はも体面も何もかなぐり捨てて本音をさらけ出して駄々をこねて喚き散らしていたが、侍女たちによって謁見の間から引きずり出さ…退場していった。


 王女の扱いが酷い…。



 アメリア王女の退場で、あからさまにほっとした顔をしたマイラフ国王は、

「ではヴィーよ。妖精女王の要望通り、馬と馬車を準備してある。何時でも発つ事が出来る…が、本当にあんな馬車で良いのか?」

「無論です。できる限り目立たぬように目立ちたいので」

 ヴィーの言葉は、この場に居る大半の者には理解できなかった。

「う、うむ…そうか…」

 そして当然ながら、その言葉を引き出した国王自身にも。


「ああ、忘れるところじゃった。発つ前に出もアメリアに会ってやってくれんか?」

 ヴィーの言葉の意味を考えていた国王が、思い出したように告げた。

「それは構いませんが…」

「このままお主を行かせたとなると…王妃と王女が怖いからのぉ…」

 どうやら王家は女性が強いらしい。


 もし、ヴィーが諾といわなくば、どうなっていたのだろう?

 ついつい、そんな事を考えてしまうヴィーであった。



「はーなーしーてーーーーーー!」


 謁見の間から数名の侍女達によって引きずり出されたアメリア王女は、廊下でも盛大に喚いていた。

 それに対して侍女達は何も言わず、ひたすら無言で王女を引きずっていた。

 ただ、とある目的地へと一直線に。 

 王女自身も、この侍女達が自分を引きずって向かう先は分かっていた。

 なにせ、この侍女達は自分のお付きの侍女ではないからだ。

 全員がこの国の王妃、つまりは王女の母親付きの侍女なのだから。

 

「お母様の説教はイヤーーーーーーーーーーーー!」


 王女を引きずる侍女達が向かう先…そう、それは王妃が待っている部屋である。

 とはいえ、アメリア付きの侍女達がこの様な所業をただ黙って見過ごすのか?

 常時付き添っている侍女達が、この様な事態を見過ごすはずなどあるわけ無い。

 無いのだが…遠くの角から、

「「「姫様、がんば!」」」

 そっと様子を伺い、見守って応援しているだけであった。


 侍女にも格や地位的なものがあるため、王女付きの侍女では物申すことは出来ないようで、さりとて見過ごすことも出来ず、こうやって陰から応援しているらしい。



 王女が引きずられたうえ、放り込まれたた部屋は、王家のプライベートスペースにあるリビングルーム。


 庭園に面する大きな窓には、淡い色彩の高価な手吹きガラスが何枚もつなぎ合わされており、 それを通して室内へと柔らかな陽の光を届けていた。

 部屋に調度品の類は非常に少なく、部屋の中央にある渋い茶色の応接セットと、一方の壁際にある真っ白なチェスト。

 そしてチェストの上に飾られている花瓶には、見た目も香りもリビングの使用者の邪魔にならない様な、薄い紫の小輪の花を数多く付けた花が生けられている。

 他方の壁には、どちらかというと地味な額に飾られた王家一家の肖像画がかけられている。

 どれもこれも王家のプライベートルームとしては地味で質素みな見えるが、全ての素材も造りも一級品であると、見るものが見ればわかる事だろう。 

 

 そんな明るく照らし出された窓辺に座る、質素ながらもゆったりとしたドレスを身にまとい、優雅にティーカップを傾ける美しい女性の姿を見た王女は、


「お…お母様…」


 その顔に怯えを滲ませながらぽつりと漏らした。

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