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え~っと…

 王都に到着したヴィーは、妖精女王の事前連絡により、実にスムーズに入ることが出来た。


 元々、狩人としての身分証明書を所有しているヴィーであれば、王都へ入るのに煩雑な手続きは不要ではある。

 なのだが、何故か王都の門を護る衛兵達へは、マイラフ国王より妖精女王の騎士が来るため丁重に出迎えるようにとの伝達を受けていた。

 国王陛下よりそのような伝達があるとどうなるか? まかり間違っても不快に感じさせることなどあってはならぬと、ヴィーの顔を知る者達20名を駆り出し、いつ来るかもわからぬヴィーの到着を待つこととなった。


 先の大グモの氾濫時をたった一人(エルも居たが)で防ぎ切り、王都を護った英雄であるヴィー。

 戦場に出ていた多くの兵達は、王国の恩人であるヴィーの顔を忘れはしない。

 だが、もうあれから数年過ぎているのだから、幾分成長しているはずである。

 あの時の記憶にあるヴィーの容姿を元に、借り出された20名は王都へとやってくる者達へと視線を向け続けていた。

 絶対にヴィーを見落とさぬように。


 斯様にがっつりと見張られていれば、ズタ袋と弓を担いでのんびり徒歩でやってきたヴィーは、即座に衛兵に発見され取り囲まれた。

 そして衛兵達の詰め所の横に止めてあった豪華な馬車へと案内され、有無を言わさず詰め込まれ、馬車は一路王城へと突き進んだ。

 

 ヴィー…実は王都にきてまだ一言もしゃべってない。



 ヴィーが跪くのは、王城の一画にある謁見の間。

 この場に集まっているのは、王家一同と国家運営を担う一部の貴族や重鎮のみ。


「よく来たな、妖精女王の騎士、ヴィーよ」

 最奥にある三段高い壇上の、天蓋が設えられた玉座に座するマイラフ国王がそう言葉を掛けた。


「はっ。この度は…」

「ああ、堅苦しい挨拶など良い」

 ヴィーが挨拶をしようとすると、それにかぶせ気味に国王が言葉を続ける。

「それに話は妖精女王より聞いておる。越境の為の偽造書類は用意させておるぞ」

 話が早いとは正にこの様な事なのだろうが、

「ありがとうござ…」

「一刻を争うのじゃろう? まさか妖精狩りとはのぉ。まさか帝国は数百年ぶりの戦でも起こそうというのか?」

 ヴィー、全然喋らせてもらえない。

「さぁ、妖精女王の要望通りの馬車と馬も用意した! すぐにでも出発可能じゃ!」

「あ…」

「お待ちください、お父様!」

 ヴィーの言葉に被せてきたのは、今度は玉座の下でヴィーへと真っすぐにまなざしを向けていた少女、アメリア王女であった。


「アメリアよ。はしたないぞ。見ろ、ヴィーも驚いておる」

 ヴィー、別に驚いてなどない。

「そんな些末な事はどうでも良いのです! いえ、ヴィー様が私をはしたない女だと思われたのは大問題ですが…。いえ、そうではありません!」

 ヴィー、そんな事は全く考えてない。

「騒々しいぞ、アメリア。して、我の話を遮って、お前は何が言いたいのじゃ?」

 遮られたのは僕の言葉で、国王陛下の言葉は遮ってないと思います。

 もう、成り行きを黙ってみていることにしたヴィーであった。


 国王と王女の、よく言えば議論、悪く言えば親子喧嘩は、謁見の間に控える国の重鎮達も頭を抱えるほどに呆れた内容だった。

 要はアメリア王女は、何としてもヴィーに付いて行くと言い張り、国王は王女が他国へ行くなどとんでもないと、お転婆王女を引き留める内容。

 普通に考えて、国王の言い分は至極真っ当な物だ。

 そもそもヴィーは隠密行動の為、一切の護衛を付けず、身分も偽り他国へと侵入しようとしている。

 それに一国の王女が付いて行くなど、危険極まりない。

 アメリアは、なかなか会うことが叶わないヴィーと、ただただ一緒にいたいだけ。

 何なら、隣国への二人きりの(エルは除外)旅行がしたい! と言う我儘。

 王族の我儘を止めるような強者はこの場には存在しなかった。


 国王と王女の喧々囂々のやり取りは、若干国王が優勢か? 

 ヴィーがこの場の皆々へと視線を向けると、誰もが首を横に振った。


「え~っと……」

 

 どうしようかと思ったヴィーがぽつりと、そう、本当に小さな声で呟いた。


「僕…そろそろお暇させていただいてもいいかなぁ…」

「構わぬ!」「だめです!」


 今の今まで大声で罵り合って…もとい、口論となっていた国王と王女が、かッと目を見開いてヴィーへと向かい、そう叫んだ。


「え~っと……」


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