第4話 シリウス
「ここは『ウィンドリルの村』。私はマーサと言います。ここで小さな宿を営んでいるのよ。」
マーサさんはそう言いながら、私の隣に座る。
「マーサさん……この村には、どんな人たちが住んでいるんですか?」
私は少し、この村のことを知りたくなった。
「この村は、辺境にあるけど旅人や商人がよく立ち寄る場所なのよ。みんな、ここで休んで、また旅に出ていく。」
マーサはそう言いながら、窓の外を見る。
「でも、最近はあまり人が来なくなって……村も少し寂しくなってしまったわ。」
「そうなんですか……」
私はその言葉に、少し胸が痛む。
「でも、ここはとても素敵な場所だと思います。きっと、また人が集まるようになるはずです。」
マーサは私の言葉に、少し驚いたような表情を見せる。
「……あなたは、優しい子ね。」
そう言いながら、マーサは私の頭を優しく撫でる。
「もしよかったら、ここにしばらく滞在してみない? 村のことを教えてあげるわ。」
「……本当に、いいんですか?」
私はその言葉に、胸が熱くなる。
「ありがとうございます……ぜひ、お願いします。」
「よかったわ。」
マーサさんは続く。
「そういえば、あなたの名前を聞いてなかったわね」
「私の名前は……、えっと……」
ふと、自分に名前があるのかどうかわからなくなる。
「……覚えていません。」
私は少し戸惑いながら、そう答える。
「……記憶が曖昧で、自分が誰なのか、どこから来たのか、ほとんど思い出せないんです。」
マーサさんは少し驚いたような表情を見せるが、すぐに優しく微笑む。
「そう……まあ、いいわ。名前がなくても、ここでは大丈夫よ。」
彼女は少し考え込むようにして、続ける。
「でも、呼びやすい名前があった方が便利かもしれないわね。もしよかったら、私が一つ考えてあげてもいいかしら?」
「……え?」
私はその提案に少し驚く。
「でも、そんなことまでお願いしてもいいんですか?」
「もちろんよ。」
マーサさんはにっこりと笑う。
「あなたは、この辺境の村に新しい光をもたらしてくれるような気がするわ。だから、特別な名前を考えてあげたいの。」
私はその言葉に、少し照れくさくなる。
「……ありがとうございます。ぜひ、お願いします。」
マーサさんは少し目を細め、私の顔をじっと見つめる。
「そうね……あなたの瞳は青くて、まるで夜空のようだわ。」
彼女は少し考えてから、ゆっくりと言う。
「『シリウス』……どうかしら? 夜空で一番明るく輝く星の名前よ。」
「……シリウス。」
私はその名前を口にしてみる。
「……素敵な名前です。」
その名前が自分にぴったりだと感じた。
「これからは、シリウスと呼んでください。」
「よかったわ、シリウスちゃん。」
マーサは微笑みながら、立ち上がる。
「さあ、今日はもう遅いから、ゆっくり休みなさい。二階に客室があるのよ、少し狭いけど、快適に過ごせるはずよ。」
「はい、ありがとうございます。」
私はマーサさんについて、階段を上る。
足元の木の床は古びているが、しっかりとしていて、歩くたびに少しきしむ音がする。
「この宿は、昔からあるんですか?」
そんな質問が口をついて出る。
「ええ、もう何十年も前からね。」
マーサさんは懐かしそうに微笑む。
「昔はかなり繁盛してたけどねぇ。」
そう言いながら、彼女は二階の廊下を進み、一つのドアの前で止まる。
「ここがあなたの部屋よ。どうぞ、ゆっくり休んで。」
ドアを開けると、そこには小さなベッドと机、そして窓からは村の夜景が見える部屋があった。
「……素敵な部屋です。」
私はその部屋を見渡し、心からそう思う。
「本当に、ありがとうございます。」
「何でも必要なものがあったら、言ってね。」
マーサさんは優しく微笑みながら、ドアの前に立つ。
「明日の朝は、一緒に朝食を食べましょう。村のことを少しずつ教えてあげるわ。」
「はい、楽しみにしています。」
私はその言葉に、心から安堵する。
「おやすみなさい、マーサさん。」
「おやすみなさい、シリウスちゃん。ゆっくり休んでね。」
マーサさんはそう言いながら、ドアを静かに閉めた。
部屋に一人残され、私はベッドに腰かける。
「……ここが、私の部屋か。」
窓の外を見ると、闇の中に点々と灯った村の明かりが、まるで夜空に散らばった星々のように静かに輝いていた。
「……きっと、ここで何かが見つかる。」
そう思いながら、私はベッドに横になる。
「明日から、新しい一歩を踏み出そう。」
第4話を読んでくださりありがとうございます<(_ _)>
主人公の名前の由来……
いや、適当に考えた()
次回は、マーサさんが村を案内してくれるようです。
誤字脱字&誤った表現があれば優しく教えていただければ幸いです。
感想&レビューお待ちしております。