第3話 灯火の集う場所を求めて
草原を進むこと、どれくらい経っただろうか。
太陽はゆっくりと西に傾き、空はオレンジ色に染まり始めていた。
風は少し冷たくなり、草の匂いがより濃く感じられる。足元の草は、夕日の光を浴びて黄金色に輝いている。
「……夜になる前になんとか見つけないと。」
私は少し焦りながらも、歩みを止めずに進む。
「どこかに、人里はあるはずだ。灯りが見えれば……」
そう思いながら、遠くを見渡すが、まだ何も見えない。
ただ、草原がどこまでも続いているだけだ。
自分の体の変化にも気づいていた。
前世はどうだったのかはっきり覚えてないが、少なくとも、こんなに長く歩き続けた覚えはない。
「……この体、意外と丈夫かもしれない。」
太陽はさらに沈み、空は深い茜色に変わっていく。
「……もうすぐ夜だ。」
私は少し早足になる。
「夜の草原は、どんな感じなんだろう?」
想像すると、少し怖くなる。
「でも、きっと大丈夫。何とかなる。」
ふと、遠くに何かが見える。
「……あれは?」
目を凝らして見ると、小さな光がちらちらと揺れている。
「……灯り?」
私は足を止め、じっと見つめる。
「もしかして……集落か?」
その光を見て、胸が高鳴る。
「よし、あそこに向かおう。」
私は急ぎ足で進み始める。
「早く、早く……」
心の中でそう呟きながら、光の方へと歩を進める。
「きっと、そこには人がいる。そして、助けてくれるかもしれない。」
しかし、光は思ったよりも遠い。
「……まだ着かない。」
私は少し疲れを感じながらも、歩みを止めない。
「あともう少し、もう少しだ。」
太陽は完全に沈み、空は深い藍色に変わった。
星がちらほらと見え始め、月が顔を出した。
私は少し不安になるが、光はまだ見える。
「あそこまで行けば、きっと何かがある。」
そして、ついに光の源に近づく。
「……これは、灯りだ。」
私は安堵の息をつく。
「やっと、たどり着いた。」
その灯りは、小さな村のものだった。
家々の窓から漏れる光が、闇の中に優しく輝いている。
「……人がいる。」
私は少し緊張しながらも、村へと歩み入る。
村の入り口に立つと、そこには小さな看板が立てられていた。
「『ウィンドリルの村』……か。」
なぜか文字は読める、でも今はそれを考える暇はない。
私は村の中へと足を踏み入れる。
一軒の家の前で足が止まる。
「……ここで、声をかけてみようか。」
私は深呼吸をして、ドアを軽くノックする。
「ごめんください……誰かいらっしゃいますか?」
しばらくすると、ドアがゆっくりと開き、中から年配の女性が顔を出す。
「……どちら様ですか?」
女性は少し警戒したような目で私を見る。
「あの、すみません……私は道に迷ってしまって、この村にたどり着きました。助けていただけませんか?」
私は必死にそう言う。
「夜になってしまって、どこに行けばいいのかわからなくて……」
女性は私をじっと見つめ、しばらく考え込む。
「……まあ、そんなところで立ち尽くしていても仕方ないわね。中に入りなさい。」
そう言って、女性はドアを大きく開ける。
「ありがとうございます!」
私は安堵の息をつきながら、家の中へと入った。
家の中は、外の寒さとは対照的に暖かく、心地よい匂いが漂っている。
「さあ、座りなさい。少し温かいスープをあげるわ。」
女性はそう言いながら、台所に向かう。
私は椅子に腰かけ、周りを見渡す。
ここは、どんな村なんだろう?
しばらくすると、女性が温かいスープを持って戻ってくる。
「ほら、これを飲みなさい。きっとお腹が空いているでしょう。」
私はそのスープを受け取り、一口飲む。
「……美味しい。」
その温かさが、体中に染み渡る。
「ありがとうございます……本当に助かります。」
私は心からそう言う。
「ここまで来るのに、ずっと一人で……。こんな温かいものをもらえるなんて、思ってもみませんでした。」
女性は優しい目で私を見つめ、少しうなずく。
「大変だったのね。でも、もう安心していいわ。ここは安全な場所よ。」
その言葉に、胸が熱くなる。
「……はい。」
【あとがき】
第3話を読んでくださりありがとうございます<(_ _)>
あれ、文字が読めるぞ!
ただ、深掘りはしない(悲)
次回は主人公に名前が与えられます。
誤字脱字&誤った表現があれば優しく教えていただければ幸いです。
感想&レビューお待ちしております。