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謁見 オルト・オクトラス視点

私は謁見をしにきたモーリスたちを見やる。


「よくぞ、このカテリーナ国へいらっしゃった。ゆっくりとされてください」


「はっ、ありがたきお言葉にございます」


 私の言葉にモーリス殿は紳士らしき胸に手をやって恭しく礼のポーズを取った。そんなモーリス殿に私は言った。


「モーリス商会が政商としてこの国にくれば国が潤うのでその点でも歓迎いたします」


「はっ、がっかりさせないように邁進してまいりますので、商会のことでもよろしくお願いいたします」


「うむ」


 モーリス殿の印象はなかなかな人物だと顔つきを見て私は思った。百戦錬磨の商人を想像させるに相応しい雰囲気さえある。そんなことを思いつつ私はルークス殿へ言葉を振った。


「ルークス殿」


「はっ」


「この国の宰相は既に相当な年齢なので、暫くは宰相補佐をしながらこの国を学び、宰相になって頂きたい。あのトロイア国を一人で動かしていた手腕を買っています」


「恐悦至極の言葉でございます。そして誠心誠意お仕えしたいと思っています」


「うむ、実に頼もしい言葉、心強く思う」


「はっ!」


 ルークス殿はモーリス殿の血を引いているのがわかるほどに理知的な顔つきだ。ただトロイア国での疲れがあるせいか少し痩せて見える。いや、私は武人ばかりを見ているのでそう思うのかもしれないと思うと、視線を別に向ける。 


 後この席に来ているのはモーリス殿の夫人のエクトールとマリア様の妹のフラールとマリア様だ。


「エクトール夫人、爵位のことも含めて、モーリス殿のことを悪いようにはしないのでそこはご安心ください」


「大変心地よいお言葉感謝いたしますわ」


 その私の言葉にエクトール夫人は流麗な動作でカーテシーをする。さすがあのマリア殿の母君だけあってこういう場に相当慣れていることがわかる。


「それにフラールお嬢さん、冬になればこの国は厳しくなるが、それもまた一興と思いこの国を楽しんで頂きたい」


「はい! 楽しみにしておりますわ」


「学校などもこちらで手配するのでご安心なさるように」


「ありがたいことばでございますわ」



 そう言うとフラールお嬢さんは流麗な動作でカーテシーをする。とても美しいと私は思った。顔立ちといいブロンドの艶やかな髪といい、やはりマリア様の妹君なのだなと感心する。


 そして私はマリア様に視線を向ける。やはり夜会で会った人を魅了させる人物だと思った。


「この度のトロイア国のジョージ殿との離縁は非常に心を痛めております」


「とんでもないことでございます。私の力が至らなかったせいでございます」


 そう言った後にカーテシーをしたマリア様に私は心に引き込まれるなにかがあった。その気持ちはなんなのかわからない。


「いや、私の耳に入っている情報ではほぼあなたがジョージ王に代わりに公務に携わっていたことを知っています。非常にご苦労なさいましたな」


「そう言って頂けると心の中が少し救われた感じがいたします。大変ありがたいことばでございますわ」


 そこで私は気になっていることを聞いた。


「夜会の折にご婦人に発明品を披露なされていたが、あの知識はどこから得た物なのですか?」


「それは、公務がない空き時間に色々と研究をして編み出したものでございます。お恥ずかしいものをお見せいたしましたわね」


 そう言うとマリア様はバツが悪そうな表情をする。聞いてはいけないことだったか? しかし私の思いと反してマリア様は微笑みながら私に言った。


「この国で私の発明が必要であれば、恥ずかしながらの発明ではございますがお役に立てさせていただければと思います」


「それは心強いお言葉。期待しております」


 あの発明を見たときから思っていたが、私はマリア様もなぜか気に掛かるし、発明も気に掛かるようだ。


 それにしてもこのように出来た女性を捨て、新たな訳のわからない女を自分の妻にしたジョージを私は本当に愚か者だと思う。少なくと国としての体面がある故に言えないが。


「こうして皆と知り合えたのもなにかの縁。これからも末永くこの国をよろしくお願いしたい」


 私はそう言うと立ち上がり胸に手を置いてカテリーナ風のお辞儀をする。そんな私を見ながらモーリス一家も各人お辞儀をする。


「お茶の席をご用意しておりますので、ご案内いたします」


 そういうと執事長はモーリス一家を茶会の場所へ招待し始めた。各人が扉の外に出るのを見て私はふうーと大きな息を吐いた。戦闘慣れはしているが、こうした場は慣れていない。隣に居る宰相のソラスに視線を向ける。子供の頃から私を可愛がってくれている宰相だが、そろそろ引退させないと年齢的に負担になる。ソラスは笑顔を浮かべて私をみやる。


「陛下、お疲れ様でございました」


「うむ。ソラスもこれで少しは肩の荷が下りるでしょう」


「そうですね。それでもまずはルークス殿の手腕を見ないといけませんが」


 まあそれも当たり前の話かと思う。ただあのジョージの馬、おっとジョージ王をサポートし、ほぼ一人で商業国トロイアを動かしていたのだ、心配する必要はあるまい。


 それにしてもやはり再会したマリア様は美しく、聡明な方であったと思うと、私は椅子から立ち上がり茶会の会場へと向かうのだった。



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