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お父様とお兄様の悪巧み

「あのマザコン。こんなことをしでかした後だというのに婚前旅行とかいって国の王を空位にしましたよ」


「やはりどうしようもない愚王なのだな」


 お父様とルークスお兄様はそう言うと大きなため息を吐いた。確かにジョージならばやりそうなことだと私も思ってしまう。錠前の作りといい、ジョージはあまり頭がよろしいとは言えない。


「もう今回の離婚劇は他国でもお笑い種になっているというのに、とんでもない愚行を今回もしました。しかも私に対して相談もなしに。さすがに我慢の限界です父上」


「うむマリアのみならずルークス、お前もこけにされているのだな」


 お父様の言葉にルークス兄様はこくりと首を縦に振った。そしてお父様とルークス兄様はやはり王がいない間に例の計画を進めるしかないかと言い始めた。


 不思議に思った私はお父様に聞いた。


「例の計画とは」


「ああ、実はマリア、私達家族は全員この国から出ようと考えている」


「ええ! そんな計画を進めてらっしゃったのお父様」


 そんな私の言葉にルークスお兄様は私をじっと見ると一つ咳払いをした。


「マリア」


「どうかなさいましたかお兄様」


「実はこの脱出劇にはマリアも大きく貢献している」


「え? どういうことですの?」


 思い当たるフシがあまりにもないので私はつい聞き返してしまう。


「以前から私のことを宰相にしたいと辺境国のカデリーナ国がアタックはかけてきていたんだが、その中にマリア、お前のことも是非に連れてきてほしいというカデリーナ国領主オルト・オクトラス様がおっしゃっていてな」


 そこで私は顎に手を当てて考える。カデリーナ国のオルト・オクトラス様であれば社交界で挨拶程度の会話はしたことはあるが深くは話したことはない。


「どういうことなんでしょう」


「どういうことかと言われれば私もわからないが、少なくともマリアのことを熱望していることも確かだ」


 辺境国カデリーナはこのトロイア国の上にある国だ。北側にあり、冬は寒く、かなりの雪が積もるらしい。更にトロイア国と友好関係を保っており、カデリーナ国の東にあるハルバート国の監視を行っている国だ。


 聞いたところによると魔物が出るとか出ないとか。このトロイア国とは違い、かなりの武闘派の国という印象がある。


(なかなかに凛々しい方なのよね。オクトラス様って。あんまりトロイア国では見ない感じの方だわ。特にしっかりとした体躯に見目麗しい銀糸のような長髪に美しい顔、思い出すと非常に格好の良い方だと今になって思いますわ。確か年齢は24で結婚をなさっていないとか)


 


「今ならば国を出る最高のチャンスだと思います。一応私も隣国へバカンスに行くと今日から少しお暇をもらいました」


「私の商会は国の垣根を超えて展開しているので、別にこのトロイアじゃなくてもいいわけだしな。それじゃ、王が空白の今こそ皆で国を出るか」



 なんだか話がすごい方向に進んでいるような気がして私もなんだかイタズラをする子供のようにワクワクしてきた。


 隣国に行くということは爵位がなくなるということだが、ルークスお兄様は宰相としてアタックされているし、お父様は数多くの国で商売を展開しているモーリス商会の会長だ。直ぐに爵位なりなんなりとなるだろう。


 そしてこの国からお父様とお兄様たちがいなくなるということは、この国に大損失を与えることになることは確かだ。


(愚かなことをしたものですわジョージ)


 全くジョージを気の毒とは思わないが、それでも私はこの国の王妃だった人間だ。民が気の毒だと思う気持ちは消えてはいない。


 ジョージだけが不幸になればいいのにとは思うけど、どうにもこの世界はうまくは行かないようになっているらしい。


 そんなことを考えている私をよそに、お父様とルークスお兄様はトントン拍子で話を進めていく。そしてお父様は私にもこう言った。


「電光石火の如く行動するからな、暫くは忙しくなるぞ」


 そんなお父様の言葉に私は微笑むと、わかりましたわと返事を返すのだった。


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