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ウォントビーアヒーロー  作者: 紐育静
第四章『誰もが蜘蛛を愛してる』

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4-24『愉快な北海道旅行』



 古くから東北には北海道には能力者達の隠れ里が多く存在した。彼らは厳しい冬を乗り越えながら、ひっそりと能力者として能力の研究や継承に努めた。明治以降、北海道への入植が進むと能力者達は開拓者に混じって北海道に移住し、中には能力者による国家の建設を目論んだ者もいたが、結局彼らは一つの組織に吸収されていった。

 ツクヨミは北海道の札幌、旭川、函館、釧路、稚内にそれぞれ支部を置き、全体で数十名の支部員を要していた。その中心的存在である札幌支部から、札幌市内で不穏な動きがあるとの情報が入り、ツクヨミは事態の把握と収拾のため彼らを派遣していた。


 「クリスマスはどうしようか」


 札幌駅の近くにあるラーメン屋で、ブレザーの制服姿の男子四人組は札幌ラーメンに舌鼓を打ちながら四方山話をしていた。彼らの足元に置かれているリュックには、黒い装丁で赤い帯が巻かれた書籍が何冊も入っていた。午前中はそれらの回収に励んでいたため、少し遅めの昼食となっていた。


 「ファミレスでピザとケーキでも食えばそれっぽくなるんじゃね?」


 麺の硬さは普通派、高良(たから)正輝(まさき)、高校三年生で皆同級生だ。髪を茶髪に染め、額には大きな傷跡が残っている。彼の能力は操作系(オペレート)の『貫通』。彼は指定した人間や物体を壁等に貫いて通らせる事が出来る。勿論自分自身もだ。だが発動が不安定でよく失敗しがち。


 「大通公園をむさ苦しい男子四人で歩くのも悪くないんじゃないかなぁ?」


 麺の硬さは硬め派の大槍(おおやり)翔介(しょうすけ)。室内でも黒いサングラスをかけ、耳に複数のピアスをつけている。彼の能力は支配系(ドミネート)の『速度』。自分が触れた物体や、自分の半径数メートル圏内の物体の速度を操る事が出来る。


 「明日は札幌を練り歩いて女子でも引っかけてみるか?」


 麺の硬さはバリカタ派の執行(しっこう)貴行(たかゆき)。頭に赤いバンダナを巻き、既にラーメンを食べ終えてお気に入りの飴を舐めている。彼の能力は操作系(オペレート)の『衝撃』。自分が起こした衝撃力や衝撃波を操り、デコピンだけで大型トラックを吹き飛ばすほどの衝撃まで操作する事ができる。


 「なぁどうするよー渡瀬。明日は何すんだ?」


 そして彼らのまとめ役、麺の硬さは湯気通し派の鶴咲渡瀬。


 「良いね、タカの案を採用しようか。明日大通公園を歩いて誰が一番早くナンパに成功するか試してみよう」

 「あれあれ意外な答えが返ってきたなぁ。まさかわたちゃんがワンナイトラブをお望みとはねぇ」

 「おいちょっと待てよ渡瀬、お前とかタカは良いかもしれねぇけど俺がナンパ出来ると思ってんのか!?」


 一人異議を唱える正輝はまだ口の中に麺を含んだままワーワーと喚いていた。渡瀬と貴行は口が上手い男だったが、正輝は恋愛に関しては奥手の方だった。しかし翔介は正輝にさらに異議を唱える。


 「いやいや正輝。俺だってちゃんとやろうと思えば女の子を捕まえられるよ?」

 「おめぇみてーなロン毛でおっさん臭い奴に誰が近づくんだよ!」

 「マサ、お前がどんだけ喚いた所で最下位なのは確実だ」

 「良いなぁタカは昔からモテる奴だったから!」

 「じゃあビリの人は皆にジンギスカンを奢ってね。エリーの分も含めて」

 「早く食えよマサ、麺が伸びんぞ」


 渡瀬が連れてきたエリーも含めた五人は、札幌近郊で密かに流通している書籍、小泉悠遠という作家が書いた『キロク』を回収するために年末の北海道へ派遣された。ただの回収任務なら支部の人間に任せてもいいぐらいだったが、何らかの組織が関わっている可能性があったため、わざわざ本部に所属している渡瀬達が出向いて、気長に観光しながら回収任務にあたっていた。

 四人はラーメンを食べ終えると各々コートを羽織り、午前中に回収したキロクが入ったリュックを持って店を出た。四人は白い息を吐きながら札幌駅へと向かう。


 「それでどうするよ。一旦ホテルに荷物運ぶか?」

 「いや、これぐらいなら持ったまま移動しよう。今日はとにかく札幌市内で出来るだけ回収して、明日は苫小牧まで行こうかな。それで暇があったら大通公園でナンパ勝負しようか」

 「え? 渡瀬、それまじでやるの?」

 「良いね良いね、俄然やる気が出てきたよ」


 貴行と翔介はやる気を出したようだったが、正輝は一人気分が沈んでいるようだった。そんな彼らが談笑していると、渡瀬が耳につけていた通信機にオペレーターから連絡が入った。


 『こちら千歳オペレート。鶴咲さん聞こえますか?』

 「はいこちら鶴咲、どうぞ」

 『例の塾で火災が発生しているようですが』


 同じく通信機を通してオペレーターからの通信を聞いていた三人は渡瀬の顔を見て、彼の判断を待つ。


 「了解です、すぐに向かいます」


 明日のナンパ勝負は中止になりそうだなと渡瀬は残念に思っていた。


 「確か大通公園沿いなんだよな?」

 「そうだね。じゃあ翔介、頼むよ」

 「オーケー」


 すると翔介は三人の手を順に叩いていった。これで翔介は三人が移動する速度も能力で操れるようになった。しかし周辺を行き交う人々に不自然に思われないように速度を調整しなければならない。その気になれば翔介は飛行機と競り合うことも出来るが、その能力が干渉している状態であれば走るのに必要な体力も軽減される。幸運なことに渡瀬達の現在地から問題の塾までは近く、四人は歩道を往く通行人の間をスイスイと駆け抜けて、あっという間にさっぽろテレビ塔付近まで到着した。

 すると大通公園沿いに建っているビルの五階部分からモクモクと黒煙が上がっているのが見えた。そこは件のキロクという本が流通していたと思われる中心地だ。ここ最近は支部の人間が毎日張り込んで調査に当たっていた。そんな塾で火災が起きたのは証拠隠滅のためかと渡瀬は推察する。


 「ねぇタカ、あそこまで届く?」

 「いけると思うけど、こんな街中で良いのか? 警察とか消防も来てっけど」

 「それは支部に任せたら良いよ。思いっきりやって。正輝もね」

 「へいほーい任された。ドンッと行ってバンッだな!」

 「よし、じゃあドンッと行ってやるよ!」


 『衝撃』の能力者、貴行が地面をドンッと思いっきり踏んづけると、貴行はその衝撃を増幅させて、その勢いを利用して四人を宙へ飛ばした。その勢いのまま四人は空を飛んで火災が起きているビルへ突っ込もうとするが、ビルの窓は開いていない。

 そこで『貫通』の能力者、正輝の出番である。彼の能力を利用して四人で一斉に壁を通り抜ける。正輝が上手く能力を発動できないと、正輝だけが壁を通り抜けてしまい他三人が壁に勢いよく体を打ちつけるという悲惨な結果になる(今までに何度もあった)。


 「よっしゃあここだ!」


 先に正輝がビルの壁に手をつくと、彼の体がそのまま吸い込まれるように壁を通り抜けていく。今回は上手く能力を発動できたようで、渡瀬達も壁を通り抜けて火災が起きている塾の中に着地した。

 渡瀬達が着地したのは教室の一つのようで、使われていなかったのか誰もおらず荷物も置かれていなかった。廊下の方に出ると煙が充満しており、廊下の奥は見えづらくなっていた。


 「正輝は煙を外に逃がして。タカと翔介は僕と他の教室を探す」

 「おけおけ。俺達って一酸化炭素中毒になったりすんのかな?」

 「少しは耐えられるかもしれないけど、火が収まらないと話にならないねぇ。ひーちゃんでも連れてくればよかったなぁ」


 正輝が煙を天井や壁に貫通させて外へ逃がすと、ある程度視界が確保できるようになり、渡瀬達はハンカチやマフラーで口元を押さえながら他の教室を探した。側にあったいくつかの教室は授業中だったようで黒板に数式が書かれていたが皆避難したようで無人だった。しかし火災の中心地であろう激しく炎が上がっている一番奥の教室に、逃げ遅れた男子生徒が一人残っていた。まだ意識はあるようで、渡瀬達の姿を確認すると安心したと共に驚いているようだった。


 「正輝、その子を連れてってあげて。タカと翔介は残って本探しね」

 「死ぬんじゃねーぞ、渡瀬」

 「早く黙って行きなさいよ正輝」


 非常階段から正輝は男子生徒を連れて避難していった。渡瀬達の目的は、勿論逃げ遅れた人の救助もあるが、この塾に残っているかもしれない『キロク』の回収も必要だった。渡瀬達は炎が延焼していく塾の中を走り回った。


 「ワタちゃん、キロクは見つかったか?」

 「一冊もなかった。そっちはどうだった?」

 「無かったね。しかし鞄まで漁るには時間が足りないねぇ、それでタカはどこに──」


 するとその瞬間、轟音と共に一気に火の手が強まった。タカが向かった方向への通路が狭く感じる程、壁や天井まで炎に包まれてしまっていた。


 「ば、バックドラフトか!?」


 渡瀬と翔介は炎を避けながら貴行が向かった教室の前まで走った。するとドアが開いた教室の前で貴行が倒れていた。しかし怪我はなく元気そうだ。


 「あっぶねー死ぬかと思ったぜ」


 貴行は『衝撃』の能力者だ。バックドラフトの衝撃まで防ぐことが出来るらしい。渡瀬達が教室の中へ入ると、教室の中はまるで爆発が起きたかのように机や椅子が転がっていて、壁には大きな亀裂が入っていた。

 そんな教室の隅に、一人の女子生徒が倒れていた。三人が駆け寄ると、意識はあるようだが彼女の右足の先が爆発の影響か酷く損傷してしまっていて出血していた。


 「何か縛れるようなものないかな……あ」


 渡瀬と翔介は貴行の頭を見た。彼の頭には赤いバンダナが巻かれている。貴行は二人がそれを見ていることに気づいて慌てて口を開いた。


 「いや、傷口に巻くようなもんじゃねぇだろこれは!」

 「替えとかないの?」

 「あ、そういや持ってるわ」


 貴行はポケットから替えの赤いバンダナを取り出し、少女の右足をきつく縛っていた。


 「我慢してよ」


 応急処置を終えると、貴行が少女を背負い塾から脱出しようとした。が、既に火の手は出口へ繋がる通路を封鎖してしまっていた。


 「やっべ、なぁ翔介。お前の能力で燃えるスピードどうにか出来ないか?」

 「出来たら苦労しないよ、流石にそれは無理」


 能力者と言えど余程相性の良い能力を持っていなければ火災現場から脱出は不可能だ。大分息苦しくなっていたため一刻も早く脱出しなければならない。


 「おーいお前らー!」


 が、壁の中からヌッと正輝が現れた。先程の男子を地上まで送ってから帰ってきたのだろう。彼がいれば壁や床を貫通して安全な場所まで逃げることが出来るはずだ。


 「丁度良かった。一気に下まで突き抜けよう」

 「任された! じゃあせーので行くぞ! せーのっ!」


 正輝の合図に合わせて渡瀬達は身構えた。が、正輝の体は床をすり抜けて落ちていったが、渡瀬達は通り抜けることが出来なかった。


 「あの野郎やりやがった! こんな時にミスるかよ!」


 どうやら正輝の能力が上手く発動しなかったようで、正輝だけが床を貫通していってしまったらしい。下から正輝が天井をすり抜けて来ることも難しい、火の手が強まった建物もいつ崩れるかわからない。


 「じゃあタカ、通りに面してる窓を壊して。僕達が通れるぐらいに」

 「え? あぁそっから降りんの?」

 「俺が落ちるスピードを調整する、着地の時はタカが上手くやればいい」


 教室の窓際まで向かい、貴行が軽く窓を叩くと二メートル程の大きな穴が一瞬で開いた。後はここから飛び降りて翔介と貴行の能力に任せればいい。


 「あ、ちょっと待って」


 渡瀬は視界の片隅に入った物を見て、教室の後ろにあった棚へ向かった。そして、何とか火の手から逃れていた『キロク』を手に持って窓際に立った。


 「まだあったのかそれ……」


 渡瀬達は一斉に建物から飛び降りた。翔介が落下速度を調整したおかげで地面にフワリと降り立つことが出来た、貴行の能力も必要ない程に。

 地上には消防隊や救急隊が駆けつけてきていて、火災や要救助者への対応に当たっており、その周囲には野次馬が集まっていた。


 「あ、すまねぇお前ら!」


 地上では先に降りていた正輝が渡瀬達を出迎えていた。


 「お前俺達が都合いい能力持ってなかったら危なかったんだからな!」

 「まぁ助かったから良いじゃないか。タカ、その子を早く救急隊に引き渡してあげて」


 貴行は自分が着ていた革ジャンを女子生徒に着せ、救急隊の方へと向かっていった。渡瀬達は消防士や消防車の脇を歩いて現場を去ろうとする。


 「なぁ渡瀬ー、俺達目立ってねぇか? またスイッチさんにどやされね?」

 「大丈夫だよ、僕達のことは見えてない」


 渡瀬達は火が燃え盛っていたビルの六階から飛び降りて、しかも傷一つないという常人離れなことをやってのけたが、消防隊も救急隊も野次馬も、誰も渡瀬達に注目しないどころか、彼らの存在に気づいてすらもいなかった。


 「あぁ……お前も能力使ったのか。渡瀬の能力、聞いてもよくわかんねーから怖いぜ」

 「ワタちゃんなら火災も止められたんじゃないか?」

 「まぁ、それは必要な代償だよ」


 火災現場にいながら彼らの服や体に煤一つついていないのも、渡瀬の能力によるものだった。だが渡瀬の能力は彼とよくつるんでいる翔介達でさえ理解できていなかったのだ。ただ何かと便利な能力というぐらいにしか考えていない。

 

 渡瀬達は人混みの中に紛れて現場を去り、救急隊へ少女を運んだ貴行と大通公園の噴水前で合流していた。


 「は~さっむ。凍え死にそうなんだが」


 先程少女に上着を着せてしまった貴行は体を震わせながら言う。


 「おい正輝、そのコート俺にくれよ~寒くてしょうがねぇ」

 「いや、それだともれなく俺も凍え死ぬんだぞ?」

 「大丈夫だって、お前バカだからそんな簡単に死なねぇよ」


 貴行がバカにするように正輝にそう言うと、正輝は歩道脇に積もっていた雪に手を突っ込んで雪玉を作り、貴行に向けて思いっきり投げた。雪玉は貴行の顔にクリーンヒットした。


 「あ! てめぇやりやがったな! 雪ん子の俺に雪合戦を挑むとはいい度胸してるな!」

 「雪ん子って、お前の出身九州だろうが! 九州人が雪国出身ぶってんじゃねぇよ!」


 勝手に雪合戦を始める二人のバカを放って、渡瀬と翔介は近くのコンビニで買ったホットコーヒーを飲みながら火災現場を遠目で眺めていた。


 「ワタちゃん、どう思う?」


 今ははしご車による放水が行われていて、そう消火に時間はかからないと思われた。渡瀬はコーヒーを一口飲むと、口から白い息を吐きながら翔介に言う。


 「証拠隠滅というには雑過ぎると思うね。もしかしたら単純にガス設備とかの事故なのかもしれないし……本当に不都合なものがあったのかもしれない」

 「しかし、ただの塾がそんな舞台になるかねぇ?」

 「塾には色んな学校から人が集まるんだよ。あそこは良い進学塾みたいだし、通っていた人もそれなりに頭が良い人達だったんじゃないかな。その人達が情報を拡散すれば、多少は信頼できる情報だって信じられやすいんじゃないかな」


 札幌市周辺で流通しているキロクのブローカーは殆どが塾の関係者だった。勿論ツクヨミは塾に通っている生徒や塾の職員の身元も調査した。だが、何らかの怪しい組織と関係があるような人間は見つけられずにいた。


 「頭の良い連中が、そう簡単にあの本の内容を信じるか?」

 「あの本を読むことが出来る力を備えていれば、そういう人も踊らされるほどの内容が書いてあるってことだよ。これにはね」


 渡瀬は塾で回収したキロクを手に持っていた。それを開き、前書きを見ると──『能力の開花は連鎖する』という書き出しで始まっていた。どうやら能力の発現について書かれているようだ。渡瀬達のような人間、つまり能力者であればこの本に書いてあるものを理解することが出来る。しかし能力者ではない普通の人間が見ると、この本に書かれている文字は全て支離滅裂で何かの暗号のようにしか見えないらしい。

 このキロクを流通させているブローカーも、小泉悠遠が書いた本ということで興味本位で買っている人間も殆どが能力者ではない。しかしもしも能力者の手に渡ってしまった場合、隠されてきた情報が一気に拡散してしまう可能性があった。そのためツクヨミはこの本の回収を急いでいた。


 「わたせわたせー」


 渡瀬達とは別行動を取っていたエリーも合流した。彼女には円山公園付近で、キロクを持っているかもしれない人間の監視に当たってもらっていた。


 「よーエリーちゃん元気してるかー?」


 そう言ってついさっきまで雪合戦に励んでいた正輝がエリーの頭を撫でようとすると、エリーの『反転』の能力で撫でようとした手が激しく弾かれた。


 「いっでええええええ!」


 エリーは食べ物も人間も好き嫌いが激しい。正輝は右手を押さえながら地面の上を転がりまわっていた。


 「正輝みたいな下心丸出し人間がエリーちゃんのお眼鏡にかなうわけがないだろ。俺ぐらいじゃないと」


 そして今度は貴行がエリーを撫でようとすると、彼の手も激しく弾かれた。


 「いっだああああああああ!」


 貴行もダメだった。その光景を見て翔介が嘲笑うように言う。


 「さっきまで雪合戦をしていたおバカさんには無理だよ。俺ぐらい大人で紳士的じゃないとねぇ」


 翔介は手どころか体ごと吹き飛ばされていた。


 「ぬおおおおおおおおん!」


 地面に転がった三人を見ながら、渡瀬はエリーの頭を優しく撫でていた。


 「エリーは、翔介達が嫌い?」

 「嫌い」

 「それは困ったなぁ。僕の大事な友達なのに」


 結局塾の火災は、表向きはガス設備の事故という風に支部の人間が処理をしたようだ。渡瀬達は泊まっているホテルへと戻り、回収したキロクの解読に勤しんでいた。キロクは一冊ごとに内容が異なっていて、能力という力について詳しく書かれているものや、かつて存在していた能力者の伝記のような内容もあった。

 渡瀬達は、今回の任務をただのお使い、いやちょっとした北海道旅行ぐらいにしか考えていなかった。後はジンギスカンとカニとイクラとウニでも食べて帰るかとプランを練っていたぐらいだ。このキロクが組織的に流通されていたとしても、その組織はただのオカルトに傾倒した変な集団だと考えていた。

 しかし翌日、その事件が起きてから彼らは札幌市民を巻き込んだ壮大な計画を知ることになった。


 

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