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ウォントビーアヒーロー  作者: 紐育静
第二章『彼は無慈悲な夜の太陽』

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2-17『エリー保護者会』


 赤王善治が美味しものを食べたいと思った時、選択肢は二つある。一つは、見かけた部下にテキトーに料理名を言ってもらってテキトーに店を検索して行ってみる。もう一つは、ああ見えて美食家のリーナを誘うことだ。


 「あこーさんお肉焼くの下手ですねぇ」


 網の上の肉をひっくり返しながら、呆れたようにリーナは言う。


 「すまんがあまり肉は食べないものでな」

 「とはいえ生焼け肉を食べようとするのはヤバいんじゃないですかね~よくここまで生きてきましたね」


 善治はリーナに何か食べたいかと聞き、この店まで連れてこられた。銀座の一等地に店を置く高級焼肉店の個室で、善治はせっかくの肉に手を付けずにビビンバを食べていた。善治が肉を食べるようになったのは革新協会に入ってからで、子供の頃は口にしたことがなかった。今も滅多に肉は食べていない。


 「大体あこーさんは普段カップラーメンばっかり食べてるじゃないですか~そんな食生活だと早死しちゃいますよー?」

 「インスタント食品こそが至高だと思っている」

 「もしも私があこーさんのことを好きだったら毎日手料理を振る舞ってあげるんですがねぇ残念ですねぇ」


 リーナはこう見えて、いやこう見えてというのもおかしいが料理が上手い。基本家でも一人のリーナは自炊の術を知っている。善治はリーナの手料理を食べさせてもらったことはないが、彼女の料理を食べた能力者狩り曰く、目玉が飛び出るほど美味いらしい。

 殆どの肉を注文しては自分で焼いて自分で食べていたリーナは、メニュー表を見ながら善治に言う。


 「ところでところで~私をご飯に誘ったのはどうしてです~?」


 リーナはメニュー表の上から目を覗かせている。何も今日善治がリーナを誘ったのは、機嫌が良かったからだとか、リーナに気があるだとかそういうわけではない。


 「能力者狩りの件について考えていてな」


 するとリーナはメニュー表をパタンと閉じた。能力者狩りの名前を出しただけで、一気に表情が変わる。


 「もしかして今日は快気祝いですかー?」

 「俺達がするのもおかしい話だろう。奴が死んでも残念に思ったかもしれないが、生きていても面倒だ」

 「むー」


 結果的に善治達の目論見は成功したとも失敗したとも言えた。善治も心のどこかで能力者狩りを殺すのは惜しいと思ってはいたが、仮に彼が死んだとしてもそれが運命だったのだと受け入れていただろう。

 ツクヨミは暴走した能力者狩りを抑え込むことに成功した。未だに彼をストーキングしているリーナによれば割と元気にやっているらしい。

 しかし革新協会側の被害も相当なものだった。あの一晩だけで今までに能力者狩りが殺してきた能力者とほぼ同数が死に、都内各地の多くの拠点を放棄せざるを得なくなった。フラワーがいれば数合わせは出来るものの、新しく拠点を探して構築するのは面倒なことだ。そこら辺をやり繰りするのも善治の仕事のため余計に忙しくなってしまった。


 「これで俺達はあまり奴を気にする必要がなくなった。次の計画に集中できる」


 善治達は、今後の能力者狩りの活動は収まるだろうと考えていた。勿論ツクヨミからすれば革新協会は敵かもしれないが、フラワー等も含めれば革新協会の規模は大きく、そう簡単に手は出せないはずだ。これまでもツクヨミから何度か襲撃は受けていたが、能力者狩りと比べれば被害は小さいものだった。

 それに今回の事態を引き起こしたのは、能力者としての器が小さい能力者狩りが体にムチを打ちながら戦い続けていたことが原因だ。そのためツクヨミは彼に無理をさせるようなことはしないだろう。少なくとも、毎晩のように革新協会や十字会を襲撃していた能力者狩りはいなくなる。


 「私は穂高君に会いにくくなるから嫌ですけどねー」


 リーナは不機嫌そうにゴクゴクとウーロン茶を飲んでいた。これからも能力者狩りが現れる度にリーナは出動することになるだろうが、これからはその数が減ってしまうかもしれない。今は彼の家に行ってももういないのだ。彼女はツクヨミの本部に押しかけようとしているらしいが、敵の本部は何らかの能力によって隠されている。おそらく許可された人間しか入れない、いや見えないようにされているのだ。



 「言わば、奴はまだ生焼けだ」


 善治は網の上に載っていた生焼けの肉をトングで掴む。


 「能力者としても、人間としてもな。他の能力者に比べれば成長は早いが、若い分危なっかしくもある。

  それが良い頃合いまで焼けるのを待つのも手だろう。そうすればお前も強い能力者狩りと戦えて満足するんじゃないか?」


 もしも能力者狩りの能力の容量が大きければ、少なくとも能力者として平均的な容量を持っていたら今よりも強かったはずだ。そのため限界値は他の能力者に比べれば劣るかもしれないが、多くの敵を相手に戦ってきた分センスは磨かれてきている。おそらくツクヨミという組織でしっかり能力について基礎から教わることでさらに強くなるだろう。


 「……上手いこと言ったつもりですかー?」

 「そうだが?」

 「じゃあもっとお肉頼みますねー」


 どうやら善治の言葉はリーナのお気に召さなかったらしい。リーナは店員を呼び出して次々に高額なメニューを注文していた。

 能力者狩りは革新協会と戦ってきたことで強くなったかもしれないが、革新協会も能力者狩りのおかげで強くなっている。革新協会の構成員は能力者狩りの襲撃に備えて日頃から訓練を積んで様々な策を練るようになったし、並々ならぬやる気をみなぎらせている連中だっている。能力者狩りの襲撃に備えるために多くの経費もかかっているが、それはトレーニング費用として計算できる範囲だ。

 ただ問題は、ツクヨミが本気で革新協会を潰してきた時だ。現状どちらに軍配が上がるかわからないが、多くの被害が出るはずだ。その時に備えて、協会は着々と戦力を蓄えつつあった。


 ---

 --

 -


 先日の一件は、テロ組織が新型のレーザー兵器を使用したものだと政府は発表した。建物等に多少の損害は出たものの(殆どは暴走した能力者狩りと牡丹達の仕業だが)、幸いにも民間人に死者は出なかった。空を見上げればあんなに非現実的な光景が、終末のような世界が広がっていたのに犠牲者が出なかったことから警察や消防等の迅速な対応が称賛されて終わった。

 しかしあの一件を、空に降り注ぐ流星群が本当に新型のレーザー兵器という代物によるものなのかと疑問に思う声は少なくない。だからといってあれが何なのか説明できる人間もいない。実は自衛隊や米軍が極秘裏に開発していた新兵器が制御できなくなったからだとか、珍しい気象現象の一種だとか、あれこそがノストラダムスが予言した恐怖の大王だとか様々な説が巷で飛び交っている。残念だが一般人に正解者はいない。

 ただ、あれ程騒動を大きくしてしまったため、ツクヨミは(主に副メイドが)政府にひたすらペコペコと頭を下げて被害を受けた建物等へ補償金を回すしかない。今回ばかりは犠牲者も出ず政府も良いアピールが出来たためとやかく言われなかったそうだが、こんなことが何度も起きては余計に経済等様々な方面に多大な影響が出てしまう。


 「どう思う? アイツのこと」


 焼き上がったカルビ肉をタレに漬けながら千代は渡瀬に言う。


 「僕の思った通り、かな。優しそうな子だと思うよ」


 炭火の網の上ではジュージューと数枚の肉が焼かれていた。今日の支払いは全て渡瀬持ちで焼肉だ。銀座の一等地にある店だというのに千代は容赦なく高い肉を次々に注文して、渡瀬に焼かせているところだ。


 「でも、織姫ちゃんはぎこちなさそうだね」


 ツクヨミで一番初めに能力者狩りと出会ったのは織衣、ということになっているが先の暴走後も織衣は穂高と行動していることが多い。その姿は、傍目から見ればやはり無理をしているように見えた。


 「そりゃそうよ。花咲病であんな綺麗に分裂してた奴なんてそうそういないんだから。自分を助けた奴が本当のアイツなのかも謎なくらいなんだし」


 大盛のご飯が盛られた丼を持ち、千代は肉でご飯を巻いて口の中にかき込んだ。さぞかし織衣は今の状況に混乱していることだろう。花咲病とかいう変な病に罹患して綺麗に人格が分裂したおもしろ人間は滅多に出会えないものだ。


 「だとしたら離してやってもいいんじゃないかな。能力の相性は悪くないと思うんだけどね」

 「それはアタシも言ったわよ。だけど『助けてくれたから』ってさ。ホント、義理堅いんだか恩着せがましいのかわからないわ」


 おそらくそう自分に言い聞かせないと織衣自身が納得出来ないのだろう。織衣は自分の命を助けてくれた穂高に恩義を感じているだろうが、どうしても様々な噂で植え付けられた能力者狩りの恐ろしいイメージが離れない。それは織衣の態度を見ていれば明らかで、その背反する感情のバランスを取るために、自分に催眠術をかけているのかもしれない。


 「好きなんじゃないのかな、彼のこと」


 焼き上がった肩ロースを千代の皿に移しながら、渡瀬は笑顔で言った。その笑顔はいつにも増して悪そうなことを企んでいた。

 千代はバリバリとレタスを食べながら、ニヤニヤと笑っていた。


 「んなまさか。あんな男っ気のなかった織姫が、誰かを好きになるってことがある?」

 「でもほら、穂高君は織姫ちゃんをピンチから助けてるんだから」

 「あー、成程ね。織衣って普段はクールぶってるけど、案外白馬の王子様とか夢見てそうだし、その線もあり得なく無いわね」


 すると突然、渡瀬達のテーブルがバァンッと皿が揺れる程叩かれた。



 「そ、そんなことありえないから!」


 顔を真っ赤にしながら、千代の隣に座る織衣はテーブルを叩いて立ち上がっていた。彼女がこんなに恥ずかしそうにしている姿は珍しい。少しやり過ぎたか。


 「あの」


 そして渡瀬の左隣で一言付け加えようとする少年、それは鷹取穂高。体中包帯やガーゼだらけで見た目はまだ痛々しいものだが、動く分には問題ないらしい。


 「そういうのって、普通僕らがいない場で話すものじゃないんですか?」


 流石の彼もこの状況に困惑した様子だ。


 「だめだよほだかー。ここは私達がいない体だったんだからー」


 一番冷静に対応するのはエリー。穂高の左隣でモグモグと石焼ビビンバを食べていた。

 この個室でテーブルを囲んでいるのは、渡瀬、千代、織衣、エリー、そして穂高の五人。渡瀬による命名で『エリー保護者会』と名付けられたグループだ、復帰後の穂高が新しく加入した。渡瀬は千代に高い肉を奢るという約束をしていたため、慰労も兼ねて織衣達も呼んだ次第だ。


 「そうだよ穂高君、織姫ちゃん。これは大人の話なんだから子どもは入っちゃだめだよ」


 織衣は不満そうに座りながら渡瀬からプイッと顔を背ける。顔はまだ赤い。


 「いや、渡瀬さん達もまだ二十歳になってないじゃないですか。なんなら僕達と三つしか年変わらないですよね?」

 「何よ、アタシらはもう選挙権あんのよ。文句あんの?」


 無茶苦茶なことを言う。だが穂高もこの人らには敵わんと諦めた様子で、焼き上がったハラミ肉をおそるおそる頬張っていた。


 「穂高君も遠慮なく注文しなよ。まだ時間はあるし、せっかくの焼肉なんだから」

 「あの、メニューが見たことのない桁ばかりなんですけど。お肉の時価って何なんですか?」

 「そんなもん気にしないでいいのよ、渡瀬ならそんぐらい払えるから」


 事件から一週間程が経っても穂高の状態は安定しており、能力さえ使わなければ大丈夫だろうという具合だ。分裂していた彼の光と闇の能力は無事元通りになったが、彼の能力の容量が未だにいっぱいいっぱいであることに変わりはないため、彼の休養は今後も続く。本人も大人しくすることに抵抗はないらしい。

 渡瀬にとっては今の穂高の状態も不思議なものだった。光の能力者たる鷹取穂高が比較的大人しかったのは、彼を構成する『善』の部分だけが現れたものだと思っていたからだ。ならばそれと正反対にある闇、もとい『悪』たる彼が表に出れば本当の能力者狩りたる鷹取穂高になると思っていたのだが、あの一件以来暴れることなく普通の少年らしく生きている。

 織衣は怒って渡瀬達の方を未だに向こうとせずにサラダを食べている。この姫野織衣という少女が、暴走していた穂高に影響を与えたのは確実だ。もしかしたら彼は、十字会に殺されたという鷹取椛という妹、もしくは別の誰かに織衣を当てはめて見ているだけか。

 もしかしたら鷹取穂高には、彼女が姫野織衣に見えていないのかもしれない。


 「お肉、焦げますよ」


 穂高の声で渡瀬はハッとして、網の上の肉を慌ててひっくり返した。


 「ああごめん、考え事しててね」


 今はそんなことを考えている場合じゃない。今はこの日常を楽しもう、皆のために。


 「何考えてたの?」

 「いや、二次会はどこに行こうかなって」

 「二次会!? 二次会ってあるんですか!?」


 二次会という言葉に驚いたのは穂高だけだ。他の四人はさも当然のように受け止めている。


 「そうだよ。保護者会じゃいつものこと」

 「そもそも保護者会って何なんですか? PTA?」

 「いや、エリーの保護者会よ。ね、エリー」

 「ねー」

 「二次会はスイーツバイキングにでも行こうかな。ちょっと遠いけど、渋谷に美味しいお店が出来たらしいよ」


 自分の疑問に何も答えない渡瀬達を見て、穂高は諦めた様子で再び肉を口に運んでいた。残念ながらこの場では彼の常識は伝わらない。問題ない、半年もしない内に彼はこの状況に慣れてしまう。織衣も最初はこんな感じだったと渡瀬は懐かしんでいた。

 

 談笑していると、個室のドアが開いた。店員が何か用事でもあって来たのかと思ったが、そこに現れたのは意外過ぎる人物だった。


 「おっと~? 聞き覚えのある声と嗅ぎ覚えのある匂いと感じ覚えのある気配がするかと思えばやっぱりいらっしゃるじゃないですか~」


 そこにいたのは白いセーラー服姿のリーナだった。織衣と千代とエリーは口をあんぐりと開けて驚いていたが、穂高は溜息を吐いているだけだった。多分彼は今までに何度もこういうことがあったのだろう。


 「へぇ、これはこれは奇遇だねリーナちゃん。ここには誰かと?」

 「そーですね~今日はどこかで穂高君と出会える気がしてたんですけどまさかここで出会えるとは~」

 「どうする渡瀬、とっちめる?」

 「千代、こんな人目につく場所で暴れちゃダメだよ。それに彼女、白コートを着てないから今はオフだ」

 「何その流儀」


 アハハ~とリーナは呑気に笑いながら敵だらけの個室に堂々と入ってきた。


 「何か用事? 余興に面白い話でも聞かせてくれるのかい?」

 「うーんそうですねぇ穂高君のことならお話出来ますよー色んな秘密も~」

 「穂高君の、秘密……」


 穂高以外の一同はお互いの顔を見てうん、と頷いた。確かにリーナは革新協会の幹部で非常に危険な人物だが、向こうに戦闘の意思が無いのなら今ここで戦う意味もない。それならば穂高の秘密の方が気になったのだ。仮にリーナが事を起こそうとしたとしてもここには戦える面子も揃っている。この場は穏便に済ませて好奇心に身を任せるのも悪くない。


 「わかった、じゃあ僕が席を外すから穂高君の隣に座りなよ」

 「いや僕も出るので」


 だが穂高が出る前にリーナが彼の隣に座り、穂高は封じ込められてしまった。おそらくこういった事の繰り返しが穂高を能力者狩りにしていったのだろうと渡瀬は思っていた。


 「さてさて~何からお話しましょうかねーまずは穂高君の初恋の人との馴れ初めだとか恋愛遍歴でもお話しましょうか~」


 最初からかなり飛ばした内容を話し出そうとするリーナに対し、穂高は立ち上がった。


 「リーナ、ちょっと表出ようか。満足するまで相手するよ」

 「まぁまぁ穂高君、君はまだ休んでないと」


 渡瀬は個室のドアの前に立って退路を塞いだ。穂高だけ帰らせるわけにはいかない。


 「そうよ、無理はいけないわ。まだ肉は余ってるんだから食いな」


 千代は自分の皿に載っていた肉を穂高の皿に移していく。まだ千代の腹は満たされていない。


 「私も夏休みだし、まだ時間は大丈夫」


 織衣は夏休みの学生の余裕を見せる。穂高の恋愛遍歴が気にならないことはない。


 「ほだかの初恋っていつ頃なのー?」


 エリーはリーナを警戒しながらも質問を投げかける。今や穂高はすっかりお気に入りの人間だ。


 「そうですねぇあれは穂高君がまだ幼かった頃……」

 「その頃から知り合いだった風に話すんじゃないよ」


 リーナの話が始まったところで、渡瀬はひっそりと個室の外に出ていた。リーナの話が気にならないことはないが、内容は後から誰かに聞けばいい。


 「こんにちは、赤王さん」


 渡瀬は個室の外に立っていた革新協会副統帥、赤王善治に声をかけた。先程リーナが個室のドアを開けた時に、その後ろに彼の姿が見えたのだ。リーナは彼とこの店に足を運んでいたのだろう、そして偶然穂高を見つけた……果たしてそれは偶然なのだろうか。


 「いいのか、追い出さなくて」

 「今は実害がないので」

 「そうか。損得勘定が粗くて助かる」


 赤王善治もこの場所で事を荒立てようという気は無いらしく、諦めた様子でリーナの帰りを待っているようだった。店員に人払いを頼んでいるためここら辺には他の客も近づかない。


 「ここまで、全部協会の計画通りですか?」


 渡瀬はニコニコと微笑んだまま善治に聞く。善治は店内に置かれていた熱帯魚が泳ぐ水槽を見ながら言う。


 「ああ、結果的に言えばな。八割方死ぬと思っていたが」

 「そんなに彼が重要ですか?」

 「お前達もわかるだろう、強力な敵がいなければ自分も育たない。それだけのことだ」


 革新協会にとって都合が良い相手に収まっている、ということらしい。これまでの能力者狩りの行いによる損害をその程度で許せるということは、やはりツクヨミが考えている以上に協会は巨大な組織のようだ。


 「じゃあ、僕達が穂高君に休養を取らせるというのも協会の計画通りですか?」

 「そうだな。お前達ならそうするだろうと考えていた」

 「フフ、僕達は協会の掌の上で踊っているということですね」


 先日の一件での被害も考えると、すぐに革新協会が新たに事を起こすとは思えない。きっとツクヨミの様子を伺いながら戦力を蓄えるはずだ。ならばツクヨミは協会の戦力が充実する前に彼らを叩かねばならないが、彼らの統帥への対策を練らなければならないのだ。

 革新協会は渡瀬達よりも鷹取穂高のことを知っている。そしてツクヨミの手も読んで計画を進めている。どこかで彼らの計画を狂わさなければならない。


 「ならば、僕達がまだ貴方達を潰そうとしていないということもご存知というわけですね?」

 「そこまで無謀なことをするようには見えないが」

 「まあそうですね。大体協会が大人しければ僕達も大して興味はありません。僕達も慈善団体ではないので、どれだけの人が死のうとも慎重に考えます」


 革新協会がまだ単純なテロ組織である内は警察や治安部隊に任せていてもいい。一つ一つをツクヨミで対処するのは困難だ。そもそも革新協会との戦いにそこまでやる気を出す人間もツクヨミにはいない。

 一部を除いて。


 「でも、彼は違いますよ。穂高君は心の底から貴方達を潰したいと願っています」


 それは先日の件で明白になった。普通、能力の暴走状態に陥った能力者は目に見えたもの全てを破壊しようとするが、暴走した穂高は理性を失っているはずなのに的確に革新協会の能力者や拠点を狙い続けていた。牡丹達はあくまで自分達から手を出しただけだ、触れさえしなければ彼はただ革新協会を恨んでいた化物だっただろう。


 「そして、それは僕も同じです」


 善治の眉がピクリと動いたように見えた。


 「僕も能力者が嫌いなので」


 渡瀬は善治に笑顔を向けると、一瞥して個室へと戻った。中はまだリーナによる穂高の恋バナで盛り上がっているところだった。

 

 

 第二章終わりです。

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