表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウォントビーアヒーロー  作者: 紐育静
第五章『少年よ銀河を渡れ』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/176

5-33『能力に恵まれ、素質に恵まれなかった』


 

 十字会の拠点だった倉庫内に事務スペースのような空間があったため、穂高はパイプ椅子に座らされて渡瀬から座学を受けることになった。


 「さて、じゃあ本題に入ろうか」


 途端に渡瀬の右目が赤く光った。


 「今回の修行の最終的な目標はこの大阪にあるはずのプラントを攻略することだけど、そもそもの目的は穂高君の修行のためでもあるんだよ。昨日は穂高君がダウンしちゃったけど」

 「……昨日、僕の身に何が起きたんですか?」

 「穂高君の能力と対話しようとしたんだよ」


 何を言っているんだこの人はと穂高は思っていた。渡瀬はただ穂高に恐怖を植え付けて楽しんでいるだけなのではと、穂高はたまに考えるようになっている。


 「昨日の件はさておき、穂高君は自分の能力のどこが欠点だと思う?」

 「派手なところですかね」


 穂高の『闇』の能力は夜に使えばあまり目立たないが、『光』の能力は夜だろうが昼だろうがとにかく目立つ。能力者狩りだった頃は戦いに集中するあまり自分の能力の制御を忘れてしまい、穂高が放った光を不思議に思った一般人が超常現象としてSNSに投稿して話題になることさえあった。

 織衣のような静かで目立たない能力が羨ましいと穂高は思っていた。彼女はそもそもの見た目が目立っているが。

 穂高の答えを聞いた渡瀬はクスッと笑ってから口を開いた。


 「それは仕方ないことだよ。あれは見ていて面白いし。

  まず穂高君に必要なのは、能力の出力の調整だよ」

 「出力?」


 出力、つまり自分の能力をどれだけの強さで出すかということだろう。穂高は渡瀬が言う出力の意味についてあまりピンと来なかった、なぜなら今まで一度も気にしたことがなかったからだ。


 「じゃあ穂高君は、十パーセントぐらいの力で能力を使えるかい?」

 「こうですかね……ふんっ」


 穂高は能力を発動して、指先から閃光を放った。照明の点いていない薄暗い倉庫を真っ白に包むぐらいには眩しい光が放たれていた。


 「……百パーセントは?」

 「ふんっ!」


 穂高は全力で指先から閃光を放った。再びこの空間は真っ白な光に包まれた。光が消えていくと、段々と渡瀬のニコニコ顔が見えるようになった。

 おそらくだが、先程と閃光の威力は全く変わっていない。自分でもわかるその事実に穂高は気恥ずかしさを感じていた。


 「わかるかい? 穂高君はいつも無意識に全力で能力を使っているんだよ。どんな敵が相手でもね。多分それは、能力を発現したばかりの頃からの癖かもしれないね」


 確かに能力者になった四月頃の穂高は、いつもギリギリの状態で能力を制御しながら全力で戦っていた。全力で戦わなければ負ける、いや死ぬかもしれなかったからだ。特に茶々を入れに来るリーナを相手に力を抜くわけにはいかなかった。


 「……これってあまり良くないんですか?」

 「うん。例えば穂高君は、無理をしない範囲で全力で戦った時、何分ぐらい戦える?」

 「長くても三十分ぐらいですかね」

 「ふむ。じゃあ次の日も三十分、また次の日も三十分と能力を使って戦って、穂高君の体は持つ?」

 「いや……一日は寝込むぐらい疲れますね」


 リーナの能力があれば肉体的疲労は解消されるはずなのだが、能力者狩りだった頃の穂高は一晩戦っただけで一日安静にしなければまともに体が動かなくなっていた。ツクヨミに入ってから能力者狩りを控えさせられたことで多少の疲れは取れたが。


 「ほぼ毎日能力を使って戦い続けるってのも大変なことだけど、穂高君にとってはその三十分という短い時間でも限界を超えているかもしれないんだ。普通の能力者なら毎日一時間以上能力を使っていても疲れないからね」

 「え、そうなんですか?」

 「織姫ちゃん達は任務の度に休んでる?」

 「……普通に学校行ってますね」


 穂高も能力者狩りの頃はちゃんと高校生として学校にも行くようにしていたが授業中に寝ていることも多かった。リーナの能力では能力の使い過ぎによる疲労は取れないのだ。能力を使い過ぎていることは穂高も自覚していたことだったが、自分が戦い過ぎているだけでそれが当たり前なのだと勘違いしていたのだ。


 「大体能力者が戦える時間は平均で二時間から三時間ぐらいなんだ。織姫ちゃんとかは長い方で、八時間ぐらいは持つよ」


 確かに織衣は夜中の任務が終わって眠そうにしていたり貧血になっている時はあるが、特段疲れているように見えたことはない。だから穂高と共倒れの時でも織衣の方が回復が早いのだろう。緋彗や斬治郎達もそうだ、彼らはトレーニングで毎日能力を使っているがそれ程疲れはしない。


 「じゃあ僕はかなり短い方なんですか?」

 「うん。前にも話したことがあるけど、その発動時間、活動限界は能力者がそれぞれ持っている能力の容量によって変わってくるんだよ。穂高君の容量は多分他の能力者達と比べるととても小さい、その上常に全力で能力を使い続けているから、穂高君の活動限界が早くなっちゃうんだ」

 「そのために、出力を低めに制御するってことですか?」

 「それでジャンや僕達に勝てると思っているのかい?」


 渡瀬は笑っているが、自分達を舐めるんじゃないという風に穂高には聞こえていた。以前ジャンと戦った時、穂高は全力で戦ったつもりだ。しかしそれでも良くて互角という程度だ。ジャンがどれだけ本気だったかわからない以上、力を抜いたら結局命取りである。


 「相手の強さを見極めて出力を制御するのも勿論大切なこと。でも、能力者同士の戦いにおいて短時間で相手の力量を測るのがどれだけ難しいことか、能力者狩りだった穂高君はよく知っているでしょ?」

 「じゃあ容量を大きくするとか?」

 「ううん、それも難しいね。能力の容量ばかりは先天的なもので、どれだけ鍛えようとしても大きくならないんだよ。

  僕がしたいのは、穂高君が自分の能力の容量の範囲内で満足に戦える時間を知ること、そして穂高君の全力の出力を引き上げることだよ」


 肝心な能力の容量の大きさが先天的なものだというなら諦めるしかない。ならば自分の能力の活動限界を知ることは重要だ、しかし出力を引き上げるというのは矛盾しているように思えた。


 「出力を引き上げるって、結局それだと負担がかかるんじゃないんですか?」

 「いいや違うんだよ。穂高君にとっての全力っていうのは、まだ穂高君が引き出せる全力じゃないかもしれない。

  穂高君はまともに訓練が出来ない状態からずっと能力者狩りとして戦っていたんだ。自分で能力を制御するのが難しい時期にね。でも今の穂高君は能力の扱いに十分慣れてきている。今と昔じゃ、穂高君が制御できる最大出力は変わっているかもしれないよ?」

 「……でも最大出力だと、結局体が持たないんじゃないですか?」

 「うーん、例えば……穂高君が積んでいる能力のエンジンは直列六気筒だけど、燃焼しているのは三気筒だけって感じかな。伝わる?」

 「わかんないです」

 「じゃあ……例えば発電所から各家庭に電気を送る時に、送電線で送られる電気エネルギーが途中で熱エネルギーとして無駄に放出されている、みたいな感じかな。伝わる?」

 「えっと、じゃあエネルギーを引き出す効率を上げるってことですか?」

 「そういうこと。穂高君は全力を出しているつもりかもしれないけど、実際には本来は出せるはずのエネルギーから半分ぐらいの力を無駄に放出しているかもしれないんだ。その源から発動できる能力の変換効率を百パーセントにしたい。

  つまり穂高君に目指してほしいスタイルは、最大出力で戦って短時間で決着をつける、という戦い方だよ。それは今までと変わらないかもしれないけど、そのためには穂高君に方向性を決めてもらうひつようがあるんだ」

 「方向性……音楽の方向性みたいなことですか?」

 「うん、そうだよ」


 穂高はボケのつもりで言ったが渡瀬にすぐ肯定されてしまったため驚いていたしボケが潰された。


 「僕達が持っている能力っていう力は大分曖昧なんだ。どんな能力を持っていても、どういう条件で発動するのか、どういう風に使うのか、どういう時に使えるのか、試していくと何でも出来るようになっていくけど、何でも出来てしまうが故に負担が大きくなっていくんだ」

 「何でもって、能力が進化するってことですか?」

 「まぁそんな感じかな。例えば穂高君の光の能力の場合、元々は懐中電灯みたいにものを照らすことぐらいしか出来なかったのに、レーザーでものを焼き尽くせるようになることもあるからね。穂高君の能力は大分戦いに特化されているように思えるよ」


 能力の発現後、そもそもこんな不可思議な力についての知識に疎かった穂高は革新協会との戦いの中で自分が持っている力について研究したのだ。戦いに使えるよう光剣や光線を生み出したものの、まだまだ荒削りに近い。


 「どうやって能力の方向性を決めるんです?」

 「簡単なことだよ。自分の能力に名前をつけるのさ。千代の“本当の偽物(リアル・フェイク)”、エリーの“黒白(こくはく)”、副メイドさんの“幻影魔法少女(マジカル・ファントム)”みたいにね。

  言霊という言葉があるように、僕達が思っている以上に言葉は魔力を持っているんだよ。その名が体を表すように、一つの言葉で他人の運命を変えたり、魂を吹き込んだりと、色んな作用を持っているんだ」


 そういえばリーナも“素晴らしき哉我が人生ライフ・イズ・ビューティフル”だとか“引き寄せの法則(全ては私のために)”だとか自分の能力に変な名前をつけていた。あんな無理矢理なルビにも意味があったのかと穂高は今になって気づいた。


 「能力の名付けには能力の方向性を定めて使いやすくする意味もあれば、あえて能力の可能性を縛って出力を引き上げるっていう意味もあるんだ。あえて出来ることを出来ないように制限することで、その分のエネルギーを他の部分に使うっていう方法もあるし」


 穂高は『光』と『闇』の二つの能力を持っているが、おそらくこの二つを操るには穂高の容量が圧倒的に足りていない。それでいて穂高は能力者狩りとして試行錯誤している内に様々な技を生み出してきた。それも自分の容量を圧迫しているのだと思い、少しは技を減らそうと穂高は決めていた。


 「僕も何か名前をつけた方が良いんですかね。僕ってあまりセンスないと思うんですけど」

 「まぁそれは今すぐ決めることでもないよ。この修行中に何か思いつくかもしれないし、わざわざ名乗ることもないからね」

 「ちなみに渡瀬さんの能力って名前あるんですか?」

 「無いよ」


 じゃあ何を偉そうに喋ってるんだと穂高は思っていた。

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ