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大樹のこころを聴かせて  作者: 梅谷理花
第二章 相談役という鎖
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21 黄の夕

 昼食が終わり、膳が下げられて、あたしたちは立ち上がって部屋を出る。宗主は右へ、あたしたちは左へ曲がる。


 晃麒が廊下を歩きながら頭の後ろで手を組んだ。


「あーあ、宗主サマってば怖いんだから」


「……さっきの?」


「そそ。続きは部屋でー」


 晃麒はやや道化がかった仕草で午前中話をしていた部屋のふすまを開ける。あたしはおとなしく中に入った。


 ふたりで座布団に座ると、晃麒は疲れたように首をぐるぐる回した。


「ウチの家は今、一族の中でも宙ぶらりんだからねー。会う大人たちみんなに探りを入れられるのマジ面倒」


「どういうこと?」


「うーん、なんて言ったらいいかな。あの言い方だと、蘇芳にいは宗主サマにあんまいい顔しなかったんでしょ?」


「そう、だね」


 孤立させるつもりですか、という突っかかるような言い方は、印象が強い。


「蘇芳にいは家の意思をそのまんま行動に移しちゃうタイプだもんねー。僕から見ると脳筋って感じ」


「家の意思?」


「そ。宗主サマには宗主サマの、五つの家にはそれぞれの――って言っても青道家は宗主サマと同意見か、まあいろいろ考え方があるわけ」


「はあ」


 なんだか政治家の権力争いみたいな話だ。ちょっと簡単には想像がつかない。


「特に今は、涼音おねーさんのことでいろいろごたついてたりするみたい。大人たちの間でね?」


「あたしのことで……?」


 うん、と晃麒は頷く。


「おおざっぱに言えば、賛成か反対か、って話だよね。赤道家は反対派だから、蘇芳にいは宗主サマに当たりがキツいわけ」


「待って。反対の余地が、あるの……?」


 宗主からしか話を聞いていないから、絶対にあたしがここにいないといけないものだと思い込んでいたけど、そうじゃないとしたら?


「僕はまだ詳しいこと聞いてないな。でもまあ、一代前の宗主サマには弟がいたはずだから、そのへんじゃない?」


「一代前っていうと、」


「涼音おねーさんのお母さんのお父さんだね」


「…………」


 ややこしい話になってきた。でも、聞いておきたい。


「その弟サンが白道家のひとと結婚してー、で、その子供が宗主サマと歳が近いくらいなんだよ、たしか。血の混ざり方がうんぬん……とかいって、結局今の宗主サマが宗主になったわけだけど」


「血の混ざり方?」


「や、僕に訊かないでよ、マジで聞きかじりだから。そんで、黄道家はどっちつかずの態度をとってるから、2対2で決着がつかないところに、宗主サマが宗主権力で無理やり涼音おねーさんを連れてきたってわけ」


「どうしてどっちつかずなの?」


「さあ? 父上の趣味じゃない?」


「はあ」


 わけがわからない。晃麒はそんで、といって話を自分に戻す。


「僕はあんま父上からそのへんの話を聞いてないって言ってるのに、誰も信用しないで僕に探り入れようとするんだよね。ちょー疲れる」


「まあ……それはちょっと、わかるかも」


 晃麒の性格なら、話を聞いていてもはぐらかすくらい簡単にできそうだ。さっきも詳しい説明を避けたような感じがあった。


「えー、涼音おねーさんまでそういうこと言うかなあ」


「晃麒は悪だくみとか、簡単にできそうだから」


「偏見だあ」


 そうやって、話はどんどん横道に逸れていく。


 あたしと宗主が結婚することに反対する余地。どうやって調べたらいいかわからないけど、調べてみる価値はありそうだ。

次話は9/30投稿予定です。

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