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涙の流星群  作者: 最上優矢
第一章 ウソ+キス=青春の始まり
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往復ビンタ

 それから十五分は経っただろうか、ぼくは奈蔵なくら市内にある一戸建ての自宅にたどり着いた。


 家に入るなり、ぼくは姉の大浦天音おおうら・あまねから往復ビンタを食らった。

 ぶたれた頬を手でさすりながら姉を見ると、姉はタンクトップにショートパンツというラフな格好だった。


 こうして見ると、なかなか姉はスマートだ。

 ラフな格好だろうとなんだろうと、姉が服を着れば、それは格好のいいものとなる。


 ちなみに大学二年生の姉は、ぼくよりも身長が数センチほど高い。

 哀れなことに、それを姉は鼻にかけているようで、こちらの低身長をバカにすることが一日に何度もある。

 それを見返すため、最近のぼくは牛乳をよく飲み、姉の身長を少しでも抜かそうとしているのだが……それを見た姉はいつもぼくをからかい、挙句の果てには笑い出してしまうのだ。


 そんな姉はぼくの前で、ニッコリと笑顔を浮かべていた。


 腹が立つとは、まさにこのこと。


 きょうの大学は三限で終わると聞いていたが、何か大学で嫌なことでもあったのだろうか?

 それにしたって、大学での怒りをぼくにぶつけるとは、なんとも許しがたい暴挙。

 成敗してくれる。


「ただいま、姉さん。どうしてぼくに往復ビンタをしたの?」

「おかえり、翔。それはあたしが翔に怒っているからよ」

「どうして姉さんが怒って……」


 ここまで言いかけて、ぼくは口をつぐんだ。

 そう、姉が怒っている理由をなんとなく察したからだ。


 姉もぼくが口を閉ざした理由を察したようで、姉は口をへの字にしたのち、「ご名答。さっき、あんたのクラスの担任教師、小暮先生から電話があったのよ。それであたしは知ったってわけ。――あんたたち恋愛反対運動が、また人様に迷惑をかけて、さらには教師に口答えをした、ってことをね。これ、どういうこと?」とぼくをにらみつける。


「ん……実を言うと、最近の小暮先生はみんなの前でよくウソをつくんだ。ずばり、虚言癖だね」


 とっさにぼくはバレバレのウソをついた。


 姉はあきれ返り、天を仰いだ。


「あんたっていう人は……心底あきれたし、本当に嘆かわしいわね。

 虚言癖はあんたのほうじゃない、この嘘つき!

 恥を知りなさい、クソガキ。さもないと、あんたを裸にさせて、この家から追い出すわよ」


 ぼくは姉の気迫に圧倒され、何も言い返せなくなってしまった。


 やがて姉はふっと笑い、「まあいいわよ。怒るのはこれくらいにしてあげる。どうせあんたのことだから、恋愛反対運動をやめる気もないでしょうし、時間のムダよね。あんたを怒るってことは、空気に怒っているようなものよ。というわけで、時間のムダムダ」と場を和ませた。


「そうそう、時間のムダだよ。

 なんてったって、ぼくは恋愛反対運動でお金を稼いでいくんだからね」


 安心したぼくは、穏やかそうな姉に軽口を叩く。


 安心しきったぼくの様子を見て、姉はうれしそうに破顔し、「それでこそ、あたしの弟だ」とぼくの頭をポンポン叩いた。

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