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涙の流星群  作者: 最上優矢
第二章 卑怯者と嘘つきの共通点

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作戦会議

 満腹になったぼくらはデザートを食べることもなく、すぐさま作戦会議に移った。


 進行を務めるのは遙香さんだ。


「夏奈についたウソの中にはね、わたしたちの交際はみんなに隠している、というのもあるの。

 徹くんたちがわたしたちの交際を知らないのも、無理はないわね。

 だって、わたしたちの交際は誰にも知られていないんだもん」

「自分がついたウソを平然と言いますのね、あなた……」


 詩織さんは心底あきれたように天を仰いだ。


「おまけにそれが真実だと言わんばかりの口調だしね」


 そう言う環奈は遙香さんを一瞥すると、グラスに入ったオレンジジュースを一口飲んだ。


「お前、人から『性格が悪い』とよく言われるだろう? いや、絶対にそう言われているはずだ」


 そう徹は自分で言って、自分で大きくうなずいた。


 当の遙香さんはというと、彼女はどこ吹く風といった様子で、グラスの中のアイスティーを、スプーンでぐるぐると円を描いていた。


「きみたち、作戦会議に関係のない話はしないようにな」


 ぼくは咳払いをすると、三人をたしなめた。


 するとそのとき、茜が「え!」と大声を上げた。

 何事かと、ぼくらが茜に目を向けた瞬間、彼女は言ってはいけないことを言ってしまう。


「前々から思っていたけど、遙香ちゃんって性格ブスなの?」


 場が凍る。


 まるでぼくらのいる場所だけが、気まずさの宇宙に放り込まれてしまったかのようだった。


「……きみたち、遙香さんを傷つける言葉は言わないようにな」


 ぼくは苦し紛れにそれだけ言った。


 遙香さんは必要以上に咳払いをすると、先ほどの話に戻った。


「なので、徹くんたちの役割は簡単。わたしたちの交際を夏奈に訊かれても、『知らなかった』と答えるだけよ」


 そのとき、詩織さんが「ちょっと待ってください」と発言した。


「あなたはひょっとして、わたくしにもその役割を押し付けるつもりですか?

 わたくしはですね、あなた方の監視という役割があるのです。それを放棄するなど、わたくしには考えられません」

「だったら、今すぐここから消えてくれ。

 この作戦会議の発言権は、一致団結した者たちにしか許されない。よって、きみには発言する権利がない。とっとと消えろ」


 怒りのあまり、ぼくは詩織さんに声を荒らげていた。


 たちまち詩織さんはしゅんとなってしまい、さすがのぼくも良心が痛んだ。


 さすがに言い過ぎたか、とぼくは反省し、それからすぐに「とは言うものの、きみはぼくらの監視役だ。というわけで、きみの場合は中立で頼むよ」と言葉を付け加えた。


 詩織さんはこくんとうなずき、それから「少々でしゃばりすぎましたね。申し訳ありません」とぼくらに頭を下げた。

 うっすらとだが、詩織さんの目には涙が浮かんでいて、ぼくは心の中で詩織さんに土下座をして謝った。


 先ほどとは違う気まずさに陥ったぼくらだが、遙香さんは咳払いをすることもなく、落ち着き払った様子で話の続きに戻った。


「けれどこの作戦だけでは、いずれ夏奈にウソがばれてしまうことでしょう。

 なので、わたしは第二の作戦を立てることに決めました。それはこうです。

 ――わたしの恋人の翔くんは、重要な記憶をすぐに忘れてしまう病気を患っている。……なるほど、我ながら立派な作戦ですね」


 遙香さんはうんうんとうなずくと、ぼくの同意を得るためか、こちらの顔を見ながらうなずいてきた。


 冗談じゃない。


 ぼくは必死に抗議をしたが、こちらの抗議はすべて無視され、ぼくはしょんぼりとした。

 ぼくがしょんぼりとしているあいだにも、彼女たちの話は進んでいた。


「おれたちの役割は、翔の病気を肯定すればいいのだな」

「申し訳ありませんが、わたくしは中立の立場を取らせていただきますわね」


 徹と詩織さんの言葉を聞いた遙香さんは、満足した様子でうなずいた。


「ちなみにわたしと翔くんだけのプライベートな写真はないから、そこはうまい具合にとぼけましょう」

「それで、次は何かしら。次こそ、恋愛反対運動にふさわしい作戦を立てましょうよ」


 環奈は眠いのか、それともこの作戦会議に飽きてきたのか、大きなあくびをしてから、そう冗談交じりに言った。


 遙香さんは苦笑すると、首を左右に振った。


「環奈には悪いけど、この作戦会議は低レベルの作戦会議なの。

 だから次の作戦を聞いても、環奈の眠気は覚めないと思う」

「むしろ低レベルすぎて、逆に目が覚めるかもな」


 徹の冗談を聞いて、すかさず茜が「えっと、結局わたしたちがしている作戦会議には、カフェインって入っているの?」とぼくらに本気で訊いてくる。


 当然、ぼくらは茜の言葉をスルーした。


「とんでもなく話が脱線しちゃったけど、次に行きます」


 遙香さんの言葉で、ぼくらは気を引き締めるように神妙な面持ちで黙り込んだ。

 それに釣られたのか、遙香さんも神妙な顔付きになる。

 そんな彼女は眠気も覚めるようなことを言い出した。


「四年前の二〇一七年三月三十日、わたしと翔くんは近所の公園、星空公園で運命的な出会いをした……これは夏奈についたウソのひとつなんだけど、半ば本当の出来事なの。

 といっても、本当なのは出来事のことで、運命的な出会いをしたというのはウソだから、そこはよろしくね」

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